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12月5日、15万人超を動員した「国際ロボット展」の会期に合わせて、国際展示会場地下のセミナー会場では「工場長サミット(スタートアップAIセッション)」が開催。デロイトトーマツベンチャーズの木村氏がホストを務める、ベンチャークライアントモデルを中心にしたディスカッションに、CVC推進室から郷原が登壇しました。

BMW発の革新的共創モデル:ベンチャークライアントモデルとは?
ベンチャークライアントモデル(Venture Client Model)は、企業が"投資ではなく顧客として"スタートアップの技術を導入することでイノベーションを加速させる手法です。ドイツのBMWが体系化し世界に広まりました。一言でいうと、「スタートアップの製品・技術を実際の業務で使ってみることで、大企業の課題を早く解決し、スタートアップも顧客と実績を得られる仕組み」です。
木村氏は、BMW発のイノベーション創出を加速させる手法である「ベンチャークライアントモデル(VCM)」を日本で普及させてきた第一人者であり、以前にもパナソニックグループの社内向けに、著書「スタートアップ協業を成功させるBMW発の新手法 ベンチャークライアント」を解説頂くオンラインセミナーを開催して頂きました。今回は、ベンチャークライアントモデルの導入を考える企業の一つとして、当イベント登壇にお声がけいただきました。

製造業オープンイノベーションの未来~うまくいくスタートアップとの連携方法とは~
スタートアップ側(山本氏)と企業側(郷原)の双方の視点を交えながら、起業のベンチャークライアントモデル導入の進め方について、企業がデジタル技術や新たなビジネスモデルを持つスタートアップと、どのように連携しイノベーションを創出していくべきかについて、実践的な視点からディスカッションが行われました。

木村氏企業とスタートアップの協業には、「実証実験(PoC)で終わってしまう」という構造的な課題があります。初期段階から知的財産の交渉に時間をかけるのではなく、まずは実際に使って検証することが成功への近道です。効果を確認した上で本格的な協業を検討することで、意思決定のスピードと成功確率を高めることができます。
企業とスタートアップの協業において直面する構造的な課題や、成功事例について聞かせください。
郷原:パナソニック株式会社CTRO当社内でスタートアップ連携を進める中で、いちばん大きな壁だと感じているのが「本社と現場のズレ」です。「本社は未来志向で変革を求める一方、現場は日常オペレーションで手一杯」という状況のままでは、協業を進めても現場に受け入れられず、導入が停滞してしまいます。
そのためパナソニックでは、3〜6ヶ月かけて部門横断で課題をすり合わせる独自プロセスを設け、最初に相互理解を深める取り組みを行っています。
徐々にではありますが、草津工場での再生可能エネルギー分野×スタートアップのAI解析の取り組みなど、現場課題に技術をフィットさせることで成果を出したいくつかの事例もでてきました。
山本氏:イマクリエイト株式会社CEOトップが「VRに興味を持っているから何かやりたい」といった目的が曖昧な案件では、技術ありきで話が進みやすく、実際にはVRを使う必然性がないケースもあり、このような場合、実証実験で止まり事業化に至らないことが多いと感じています。トップが「VRに興味を持っているから何かやりたい」といった目的が曖昧な案件では、技術ありきで話が進みやすく、実際にはVRを使う必然性がないケースもあり、このような場合、実証実験で止まり事業化に至らないことが多いと感じています。
企業との協業では、課題・期日・予算が明確に定義されている案件ほど、意思決定が早く、成果につながりやすい。たとえば溶接分野では、現場課題が明確だったため、スタートアップと企業が一緒にプロダクトを作り上げ、神戸製鋼の販売網を通じて商流に乗せることができました。現場の深いノウハウ、スタートアップの技術力、企業の資金力・販売力が掛け合わさり、協業が一気にスケールした好例となっています。
工場長サミットのディスカッションを通じて浮かび上がったのは、"うまくいかない理由"が実はどの企業でも似通っているという事実でした。課題定義の曖昧さ、本社と現場のズレ、意思決定の遅さ、PoC止まりの構造---。
これらの課題を同時に解決し、スタートアップの技術を迅速に事業に結びつける方法として、ベンチャークライアントモデル(VCM)は非常に有効な選択肢となります。

企業にとっては、すでに完成度の高いスタートアップの技術を導入できるため、自社課題を短期間で解決しやすいという利点があります。PoCから本格導入までのスピードが速く、時間的ロスが少ない点も大きな魅力です。さらに、実際の業務で技術の「真の価値」を検証できるため、事業部の課題に直結した形で導入を進めやすくなります。
一方、スタートアップにとっても、企業を顧客として獲得できることは大きな成長機会となります。取引実績の積み重ねによる信頼性向上に加え、実際の利用環境で製品を改善できるため、より実用的で価値の高いサービスへと進化させることができます。
改めて、VCMは投資とは異なる形で、企業とスタートアップの両方に大きなメリットをもたらす協業モデルだと感じました。当社もCVC投資と並行して、引き続きこのような手法の活用にも注目していきたいと思っています!