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これから必要になるインクルーシブデザインとは?

これから必要になるインクルーシブデザインとは? | くらしビジョナリーコラボスタートアップと、くらしでつながり新しい価値や事業を創出するオープンイノベーション活動

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    近年、よく耳にする「インクルーシブデザイン」。健常者と制約のある人たちが対等な関係にある環境のなかで、イノベーションを生み出す手法です。実際にインクルーシブデザインを活用したプロダクトやサービスは注目されており、日本の企業でも活用が増えています。今回は「これから必要になるインクルーシブデザイン」をテーマとしたトークイベントに、「コデカケ」のプロジェクトリーダーである松田が登壇。今回はイベントの様子を中心に紹介します。

    インクルーシブデザインとは

    「Include」と「Design」をかけあわせた言葉。障がい者や高齢者など、これまでサービスや製品の対象者から排除されてきた人々をプロセスの初期から巻き込み、ともに活動していくデザイン手法。サービスやプロダクト、空間、街づくりなど、あらゆる分野において効果的なデザイン手法であり、SDGs・CSR・DEI に対するアクションが求められる現在において、先進的な企業を中心に導入が進んでいる。

    登壇者

    松田 淳一(パナソニック株式会社 コデカケプロジェクトリーダー)
    パナソニックのグループ会社へ入社後、スキャナ、ネットワークカメラ、電話、イヤホンなどの商品の開発・設計を担当。2021年にパナソニックの新規事業創出プログラム 「ゲームチェンジャー・カタパルト」の社内ビジネスコンテストに「コデカケ」を企画、エントリーし、選考にて事業化検証テーマとして選出され現在事業化に向けて活動中。

    タキザワケイタ(PLAYWORKS株式会社 代表取締役)
    インクルーシブデザイン、サービスデザイン、ワークショップの豊富な経験やノウハウ、コミュニティを活用し、障がい者を対象とした新規事業・サービス・製品開発などをサポートしながら支援する。

    池田 優里(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社)
    生まれつき耳が聞こえない。両耳に人工内耳を装用。障がいがあることで希望が見いだせなかったり、選択肢が狭まったりすることに違和感を覚えた自らの経験から「聴覚障がい者が生きやすい社会をつくりたい」と強く思い、100BANCHプロジェクト「Bridge Letter」を立ち上げたり、「YouTube「難聴トーーク!」にて情報発信を行う。

    障がいの有無に関わらず、悩みの本質は同じであることを実感

    100BANCHでのトークイベントの様子

    今回のトークイベントはオンラインで開催され、聴覚障がいがある参加者も内容が分かるように「UDトーク」というアプリを用いた字幕通訳で配信されました。ディスカッションの最初のテーマは「耳が聞こえづらいことで起こる過去や現在の悩み」。池田氏はコミュニケーションの部分で悩みがあると話し、特に駅のホームや居酒屋など騒がしい場所だと、相手の声が聞き取りにくくなり会話が楽しめないことがある点を挙げました。松田は聴覚障がい者の方から聞いた話として、外で友だちと一緒に歩く時や旅行へ出かけた時に、会話を楽しみたい気持ちがあることを挙げました。ただ現在は音声を視覚で情報を得られるプロダクトが発達していることもあり、コミュニケーションは昔よりもしやすくなっているそうです。

    コデカケ プロジェクトリーダー 松田
    コデカケ プロジェクトリーダー 松田

    次に登壇者が実際に使って良かったサービスやプロダクトを紹介。音声認識技術を使って会話やスピーチをリアルタイムに文字化する「UDトーク」や、映画や映像などの音声を端末を通して字幕や音声ガイドに再生する「UDキャスト」、iPhoneのサウンド認識機能や生活音をテキストで知らせる「Sound Watch」、補聴器だけでは聞き取りが難しい場所で話し手の声を大きくする「ロジャー」、音を振動で伝える「ボディソニック」が挙がりました。このような聴覚障がい者をサポートするサービスやプロダクトは年々増えており、その精度も進化しているといいます。
    タキザワ氏は「聴覚障がい者を支援するプロダクトは、音を文字や振動などの情報に変換するものが多いなかで、松田さんが開発した『コデカケ』はセンサーを通して距離を検知できるデバイスであり、こういうプロダクトは今までなかったので、とても可能性を感じている」と話しました。

    PLAYWORKS株式会社 タキザワ氏
    PLAYWORKS株式会社 タキザワ氏

    ここまでの話を聞いて、聴覚障がい者が抱えている悩みは決して特別なものではなく、健聴者も感じる悩みと通ずるものがあり、共感できることが印象的でした。ディスカッションのなかで松田が「聴覚障がいがある方が、健聴者の何十倍、何百倍の重みで悩みを抱えていることを考えると、この先も色々なサービスが生まれるのではないか」と話したように、私たちが普段困っていることを深堀りしたり、当事者に話を聞くことで、課題解決のための新たなサービスやプロダクトが生まれるヒントが出てくるのではないかと実感しました。

    障がい者の苦労や悩みを社会的な価値に転換できる環境を作りたい

    最後は「今後目指すべき社会」をテーマに、3人が感じていることや今回のイベントを通して気づいたことを話しました。松田は「これまでは聴覚障がい者の話を聞くとなると、福祉施設など特定の場所に行かないと機会がなかった。今回のように、健聴者と聴覚障がい者それぞれ困っていることは何かを気軽に話せる場を作ることが、今後必要になると感じました。そして、コミュニケーションのきっかけとしては楽しい雰囲気のなかでできることが大事だと思います」とコメントしました。

    タキザワ氏はインクルーシブデザインを事業として携わる立場から「インクルーシブデザインは、障がいのある方を巻き込みながら価値を作るものであり、障がいのある方はもちろん、健常者にとっても価値が生まれる可能性を秘めたものだと考えています。これからも積極的に実践していきたいですし、パナソニックさんの『コデカケ』のように、大企業がそういう取り組みにチャレンジしていること自体、とても価値があることであり、これからに期待が持てる部分だと感じています。あと、池田さんのように障がいがある当事者の方がプロジェクトに入って、今までの苦労や悩み、克服してきたことを社会的な価値に転換できる機会をもっと増やしたいと考えています。当事者の方は自分の体験が活きる場所があることを知ってほしいと思いますし、一緒に成長していけたらいいなと考えています」と話しました。

    パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 池田氏
    パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 池田氏

    池田氏は「自分の経験上、耳が聞こえないということで諦めてしまうことも多かったんですが、松田さんとタキザワさんが『自分たちが知らないことがあり、それをどうにかして変えていきたい』と話されているのを聞いて、知らないことを知ってもらうために、自分のことをどんどん発信していいんだと思いました。あと、今回のイベントの中で聞こえない人の悩みが、実は聞こえる人の悩みでもあるという発見がありました。悩みが解決したら、聞こえない人と聞こえる人、どちらにも幸せな未来が訪れることを信じて、私もこれから積極的に発信していきたいと思います」とコメントしました。

    ディスカッションの後に行われた質疑応答では、参加者からコデカケやインクルーシブデザイン、YouTubeの発信に取り組むきっかけや、聴覚障がい者が今の社会のなかで素晴らしいと感じていることなど、様々な視点からの質問が寄せられました。コデカケについての質問も多くあり、参加者の興味の高さが伺えました。イベント前にコデカケのプロトタイプを体験したタキザワ氏と池田氏は、実際に使ってみての感想や意見を伝えるなど、有意義な時間になりました。

    ディスカッションの後に行われた質疑応答

    あきらめない想いが、誰もが豊かに暮らせる社会を創る

    近年、聴覚障がいをテーマにしたドラマが放送されたり、聴覚障がいがあるパフォーマーがスポーツの国際的な試合で手話通訳を行うなど、昔と比べて、聴覚障がいのことを知る機会が増えている傾向にあります。今回のトークイベントを通して、聴覚障がい者が自分の思いをもっと発信できるプロダクトやサービスを増やすことができれば、健聴者と聴覚障がい者が、より深い部分でお互いを尊重し、理解しあえる社会に変わるのではないかと感じました。池田氏のように困難を抱えていてもあきらめず発信し続ける姿勢は、新規事業に挑戦する姿勢と通ずるものがあります。私たちも、誰もが前向きに生きていける社会の実現のために新たな取り組みにチャレンジする人たちを、これからもサポートし続けていきたいと思います。

    <関連情報>
    ・PLAYWORKS  https://playworks-inclusivedesign.com/
    ・Bridge Letterプロジェクト https://100banch.com/projects/bridge-letter/
    ・難聴トーーク! (YouTube)  https://www.youtube.com/@user-bu8ll9gb6f/

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