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GCカタパルトからデビューした「DeliSofter(デリソフター)」は、介護業界に「ケア家電」という新たなジャンルを生み出しました。起案者の水野は、当初新規事業に関わりのない立場でしたが、斬新なアイデアとあくなき情熱があり、それが呼び水となってチームは拡大。結束力も高まりを見せ、新規事業は進められていきます。
【Introduction】
DeliSofterを生み出したギフモ株式会社は2019年に設立されました。チームメンバーは、代表取締役の森實を中心に、製品アイデアの起案者である水野・小川という3名で構成されています。
2017年入社の原田が起案した「Swallowee(スワロウィー)」も見事に事業化検討継続が決定。
今回は、新規事業に携わる森實・水野・原田という熱い想いを持つメンバーに、新規事業立ち上げから現在に至るまでを語ってもらいました。
扉画像〈右上:(左)水野・(右)森實〉、〈左下:原田〉、〈左上〉向奥
スタートは同じ職場2人のアイデア。技術力不足という課題に直面
向奥・GCカタパルト事務局DeliSofterについて、どのようなキッカケで始まったのでしょうか?
水野DeliSofter起案者 ギフモ株式会社:初めてビジネスコンテストの募集を知ったのは4年前。所属部署に関係なく誰でも応募できるということで、胸が躍り、思わず隣に座っていた男性に声をかけたのを覚えています。しかし、彼からは「企画担当者や営業の人も出るなかで、応募しても足元にも及ばないと思うよ」と否定的な意見を言われました。そんな中でしたが、私は持ち前の負けん気の強さで「やってみなければわからない」と奮起して、後輩と一緒に応募することにしました。
向奥最初2名からのスタートだったわけですが、そこからどのような経緯でチームを形成していったのでしょうか?
水野私も後輩も介護業界が抱える多様な問題に関心があり「なんとか貢献できないか?」と色々アイデアを出し合いましたが、技術面のことになると2人の知識やスキルでは、当然追いつかず、壁にぶつかりました。そんな中「プレゼンを開き、パナソニック社員の中からメンバーを募ったらどうか」という意見をいただき、早速実行しました。ポータルサイトで呼びかけ、多くの人が集まりました。本社内にあるワンダーラボを呼ばれるキッチンで、この事業にかける思いやDeliSofterの性能についてプレゼン。結果、21人の賛同を得ることができ、新しいチームが完成しました。
「嚥下障がいの方の食事を楽しくするための夢の機器を作る!」アイデアへの共感を得るにはプッシュし続けること
向奥事業化・製品化にあたって大事にしていたことはどのようなものでしょうか?
水野「嚥下障がいを持っている方でも家族みんなと同じ食事を楽しめるような夢の機器をつくる」という私たちが持っていた情熱とアイデアを理解してもらうことに努めました。「一度やると決めたら、右も左も見ない。この商品を待ち望んでいる方に届ける」と自分に言い聞かせるよう言葉に出しながら、チームメンバーにも共感してもらうことが大切です。何事も一人では成し遂げられません。支えてもらうからには愛情と熱意をもって接する必要があるのだと考えています。
森實・ギフモ株式会社代表取締役私は他社メーカーでの勤務を経て、転職してきたのですが、入社からしばらくして先輩の誘いもありGCカタパルトのビジネスコンテストに参加。ケア家電を考案している「Team Ohana(チームオハナ)」に興味を持ちました。DeliSofterについて調べていくうちに、製品としてのすばらしさに感銘を受け、チームへの参加を決意。個人的にお話しを聞きながら、発起人である水野さんの人柄にも惹かれ、ファンになりました。
向奥まさに水野さんの思いが届き、共感を呼んだということですね。
では森實さんは、DeliSofterの魅力を伝えるうえで、工夫している点はありますか?
森實水野さんと同じく僕も共感を大切にしています。何かアイデアを発信する際も、「聞いてくれたらラッキー」という熱量では何も届きません。自分のアイデアやチームで作り上げてきた製品は素晴らしいという誇りを持って「共感してほしい」と猛アピールをするようにしています。
水野「Team Ohana」の由来は、ハワイの言葉「友達」からきています。メンバー全員が同じ志を持った同志が集まるようなチームをづくりを目指しています。
活発なディスカッションを取りまとめるのは、原点ともいえる共通のビジョン
向奥チームを稼働するうえでの方針や気を付けている点は何でしょうか?
森實もっとも意識していることは「チームで楽しみ活動する」ということです。社会貢献度が高く、やりがいがある分、通常業務と異なり、ハードワークになりがちな側面もありますが、チームで乗り切ればそれも楽しさに変わる。チームで協力することで妥協のない高い目標を設定でき、その実現に向かって一丸になれるような雰囲気づくりに取り組んでいます。
水野さらに、それぞれの個性を活かせるようにもしています。CSや品質管理など現在関わっている業務で培ってきた得意分野を担ってもらうことで自主自立を促し、自身が分からないことは、周りに聞きコミュニケーションも活発になると考えています。
向奥活発なディスカッションにおいて、意見が衝突する場面ではどのように対応していますか?
森實意見が衝突することは悪いことではありません。やりたいこと、思いをぶつけ合うことは双方の成長につながります。ただ、その中でも相手を尊敬する気持ちを忘れず、一人ひとりが持つ、豊かな人間性にも目を向けておくのがポイントだと思います。
原田彩乃・Swalloweeプロジェクト現在、Swalloweeの事業化に向けアイデアを進めていますが、メンバーの思いを掘り下げていく過程で、当然一人ひとり実現させたいことが異なります。そんなときは、私たちの原点ともいえる介護現場の「ごめんね」を「ありがとう」に変えたい、「介護現場に笑顔」をという共通のビジョンに立ち返ります。どんな社会を目指しているのか、具体的に何をやりたいのかを本音で話すことが大切なのだと考えています。全員が納得できるブレない芯ができ、チームの結束力も強固なものになったのではないかと思っています。私自身プロジェクトリーダーというチームをまとめる立場ですが、
絆が深まったことで、「一人で抱え込まず頼れるときは頼る」と素直に思えましたし、チームで良いものを生み出すことを改めて自覚もできました。
チームづくりの相乗効果で、さらに新しいアイデアが広がる
向奥事業化推進が決定されたSwalloweeのプロジェクトはどのようにして始まったのでしょうか?
原田もともと介護業界に関心があったところ、水野さんたちの有志サークル「Team Ohana」に参加し、「ケア家電」の存在と介護業界が抱える食の問題について知ったのがきっかけです。自分でもこの分野に貢献することができる、とワクワクしたのを覚えています。今はSwalloweeの起案者として、リーダーになり、事業化へ向け日々取り組んでいます。
向奥「Team Ohana」の活動が、原田さんの介護への問題意識や関心を高めてくれたんですね。このようにチームを形成することで他者に大きな影響を与え、相乗効果も生んでいることがわかります。「Team Ohana」で培われてきたノウハウだけでなく、その方針やイズムも受け継がれ、「ケア家電」のカテゴリーを広めることにも成功しています。
向奥最後に、今後の展望や抱負をお願いします。
水野雲外蒼天です。世界を変えたい、ケア家電を創出していきたいです。
原田事業化へ活動継続。製品を通じて、今の介護の在り方を変える一助になりたいです。
森實DeliSofterで、笑顔になれなかった人たちに笑顔を。成功事例を増やして、自分の目で確かめたいと思います。DeliSofterは2020年7月から提供が始まりました。品質・価格・仕様ともに妥協せず、作り上げた製品ですので、よろしくお願いいたします。
【DeliSofter(デリソフター)について】
今夏念願の発売開始! 高齢者が抱える食の課題、嚥下障がいを防ぐ
GCカタパルトの第1回ビジネスコンテストから生まれたギフモ株式会社は「高齢者の食の課題解決」を目指し、初の事業化を達成した。DeliSofterは料理の見た目と味はそのままに柔らかくすることができる本製品は、飲み込む力などが弱くなり、嚥下障がいに陥った方々でも「家族と一緒に同じ食事を楽しむ事ができるように」との思いを込めて開発された。従来は軟化が難しかった肉や魚など、タンパク質を多く含む料理も独自の技術により、簡単かつ短時間での調理が可能に。今夏にはついに最初の製品リリースが始まり、必要としているお客様のもとに届けられる予定だ。
【Swallowee(スワロウィー)について】
事業化に向け鋭意活動中! 介護の課題である飲料の誤嚥を防ぐ
Swalloweeも介護課題である「誤嚥」を防ぐための「ケア家電」。誤嚥防止のため飲料につける「とろみ」を、飲料の量や温度を測定し、自動で調整・攪拌して調理の負担を軽くすることができる。今年度も事業化へ向け、継続して活動中だ。
【インタビューメンバー紹介】
[水野時枝]
パナソニック時代は工場、CS部門と品質部門の3部門を経験。2016年にGCカタパルト1期生でDeliSofterの起案し、2019年ギフモ株式会社を設立し事業化実現。
[森實将]
ソニーグループ、コーニングジャパン、パナソニックの会社経験を経て、2019年ギフモ株式会社を設立し代表取締役に就任。
[原田彩乃]
2017年、パナソニックに入社。空調冷熱ソリューションズ事業部で業務用空調設備の生産、販売、管理を担当。2019年にSwalloweeを起案し、プロジェクトリーダーに就任。