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スマート味噌作りサービスが生まれるまで
Ferment2.0 のはじまり
スマートに健康的な味噌ライフが楽しめるキットデリバリー サービス Ferment2.0 / Miso Ball Club。 業界第一位の味噌メーカーであるマルコメと、住空間・家電分野に取り組むパナソニック。異なる業界の両社が「味噌」をテーマにこのようなコラボレーションをはじめたきかっけは、2017年9月のスマートキッチンサミットに遡ります。
スマートキッチンサミットにて、Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)として未来の食をテーマに発表していました。後にパートナーとなるマルコメの其田さんはそのセッションを聞いた時に、とても新鮮に感じてくださったそうです。パナソニックの食に関わる取組みが斬新であったことに加えて、なによりもまだ、コンセプト段階のものを世に問う その動きや身軽さに 大変驚愕されていました。「マルコメ=味噌メーカーというイメージですが、米糀から作る甘酒やグルテンフリーの大豆など違う分野に注力している今、新規事業に取り組むPanasonicのGame Changer Catapultにどこか通じるところを感じました。味噌の世界にも、楽しみ方にも 何か革新的なものが生まれるかもしれないと、大きな興奮を覚えました。」というコメントをきくことができ、非常に嬉しかったことを記憶しています。
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発酵食をつくる文化を支援する
実は私は、2017年度もSXSWに参加していました。昨年は甘酒をつくるフードデリバリーキットのサービスの事業化を目指し、「The Ferment」 として、SXSWに出展しました。SXSWでは良い反応を得ることができたものの、事業としての検討は難航していました。発酵という腐敗にもつながる温度帯をどう安全に扱うのか、食品メーカーでないパナソニックが、発酵コントロールでどう付加価値をつくるのか、決定的な解決方法を見つけられないまま苦戦をしていたところに、マルコメの其田さんから パナソニックに連絡が入ったのです。
その当時のはじめての打合せのことをよく覚えています。
「当社は味噌をつくって売っている会社だけれど、実はなかなか 実際に食べてくれている顧客とつながれていないんです。」という其田さんの言葉を、とても不思議に感じました。日常的に食卓にのぼる 味噌というものをつくっているメーカーなので、個客とは強くつながっているイメージがあったからです。
其田さんの「味噌などの食品、それ自体は当然ながら家電製品のような顧客接点にはなり得ません。もし可能性があるとしたら、それはみそ手作りキットなのです。」という言葉がとても印象的でした。
マルコメは、味噌作りの理解が深まる商品として「みそ手作りキット」をすでに販売しています。ですが、購入者から「味噌がいつ完成するのか」「食べごろが分からない」という問い合わせが多いという課題を抱えていました。発酵は目に見えないプロセスだからこそ、はじめて取り組む人には、さまざまな不安があるということに気が付きました。その時、私が4年前に 最初に発酵を取り組み始めたときのスケッチを思い出しました。"IoTの仕組みが使えるかもしれない。"そう感じました。
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4年前に 最初に発酵を取り組み始めたときのスケッチ
味噌の出来具合を見極める スマート味噌作り
発酵は、千変万化なプロセスであり、刻一刻と味は変化していきます。
"味噌の出来具合は、その味噌がどんな温度体験をしたかで、推測できるかもしれない。味噌の色の変化が、温度で 予測できるかもしれない。「この仮説は検証する価値がある、手作り味噌をスマートに作りわけができるかもしれない!」と、サンプルの味噌を前にして、メンバー全員が興奮していました。
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マルコメ×パナソニック合同チームで検証している様子
今回つくりあげているプロトタイプのシステムは、とてもシンプルです。お客様の好みに合わせたみそづくりの材料のキットを届け、それにセンサースティックを挿入する。センサースティックを刺しているだけで、味噌の出来具合がシミュレーションされ、最適な食べごろを通知してくれるという仕組みになっています。
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センサースティックを挿入するだけ
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専用アプリのイメージ
味噌作りを通じて、丁寧なくらしを送りたいと考える人に対して、サポートすることができる。この仕組みを使えば、世界でたった一つのあなたに合った味噌を失敗せずにつくれる。さらに、顧客と繋がり続けることでフィードバックを受けながら材料の配合を変えることができ、その人の家庭の味を作っていくことをサポートすることができる。
マルコメメンバーとPanasonicのメンバーと両者で、新しい味噌作りの可能性を感じ始めた、そのような瞬間でした。
■味噌のこと
日本人には欠かせない調味料のひとつである「味噌」。1300年もの間、日本人の食生活を支えてきた伝統食品です。平安時代は庶民の口には入らなかったぜいたく品も、今ではおなじみの調味料。栄養豊富な発酵食品として、親しまれています。みそ汁だけでなく、活用法も様々。肉や野菜の漬け床にしたり炒め物にしたり、煮物の隠し味に加えるなど、時代と共に味噌のあり方は変化を続けています。
-日本の食文化での位置づけ
味噌の起源は古代中国の食品「醤(しょう/ひしお)」※1「豉(し/くき)」※2だと考えられています。日本に伝えられたのは、中国大陸や朝鮮を通って飛鳥時代の7世紀頃という説が有力です。「醤」という文字が日本で初めてみられるのは「大宝律令」(701年)で、 「未醤」という文字が書かれており、これが「みしょう」 ⇒ 「みしょ」 ⇒ 「みそ」と変化していったといわれています。
※1 「醤」は鳥獣の肉や魚を雑穀、麹、塩と漬け込んだ、「魚醤」に近い発酵食品。ソースや醤油と同じように使われていたと言われる。
※2 「豉」は大豆や雑穀と塩からつくられた発酵食品。
■マルコメ株式会社のこと
全国には米味噌、麦味噌、豆味噌の3種類があり、国内で生産されている約8割は米味噌です。マルコメは安政元年に創業。味噌生産量トップの長野県で米味噌を作り続けてきました。現在は当たり前のだし入り味噌もマルコメが先駆けて商品化、液状タイプでサッと溶ける「液みそ」の開発など、味噌業界NO.1企業として、時代に沿った商品を作り続けてきました。さらに、味噌づくりで培ってきた発酵の技術をいかして、糀甘酒や塩糀など、日本の発酵食文化を時代に合った形で守り、伝えていきたいと考えています。
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