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「UX」はデザイナーだけのもの?真の意味と、その重要性を語る

「UX」はデザイナーだけのもの?真の意味と、その重要性を語る | くらしビジョナリーコラボスタートアップと、くらしでつながり新しい価値や事業を創出するオープンイノベーション活動

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    UX(ユーザーエクスペリエンス)は、UI(ユーザーインターフェース)とともに、よく聞かれるようになりましたが、真に理解している人、実務において活用できている人は少ないのではないでしょうか。

    「UXはデザインのことと思われがちですが、そうではなくもっと大きな概念です」と話すのは、パナソニックで新規事業創出を目指すGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)のメンバーであり、新規事業のチームリーダー経験もあるUXデザインディレクターの横田雅美。今回は、横田がUXとの出会いや重要性について語ります。

    「このままでいいのか?」迷いながらも切り開いたキャリアでUXに出合う

    横田「私は、短大を卒業してバブル時代に一般事務としてパナソニックに入社しました。女性社員は、3年くらい在籍して寿退社というのが当たり前の時代でしたが、私は『本当にこのままでいいのか』と何かスキルを身に付けたいと考えていました。
    そんなとき、キオスク端末を開発する部署の存在を知り異動を希望、そこで画面設計業務に携わります。周囲のシステムエンジニア達にも助けられ、クライアントにも喜ばれるという体験を得ることができました。後にそれがユーザーインターフェースデザインであることを知り、デザインの楽しさを感じながら、当時はUIを専門とした社員もいなかったので、実務を通して自分のスキルにしようと考えました」 

    横田は2000年からデザイン部門へ異動、UIデザイナーとして新たなキャリアをスタート。テレビやビデオなどのUIデザインを担当します。

    横田「本格的にデザインの仕事をはじめたものの、当時はまだユーザビリティ...視認性や使いやすさを意識しつつも自分が作りたいものを作っていた印象です。UXの存在は知っており、ユーザー体験もデザインしていかないといけないことは感じながらも具体的に何をしたらいいのかが、分かっていませんでした」

    2015年頃から社内でもUXが注目されるようになり、UXを専門的に学ばなければ身に付かないと考え、外部から専門家を招いて研修を主催。デザイン部門だけではなく、技術や企画、営業など他の部署にもUXが浸透するよう働きかけを始めました。
    また、2016年にGCカタパルトが発足したことで、新規事業へ積極的に取り組もうとする動きが社内に広がります。2017年にGCカタパルトへ横田がジョインし、ビジネスコンテストへの参加やプロジェクトリーダーを務めた経験を生かし、現在ではメンターをしながら、UXデザインディレクターとして社内外で研修も行っています。

    UXの概念から具体的な実践法まで。津田塾大学で講演を実施

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    今年は津田塾大学の学生を対象に、UXについての講義とインタビュー設計のワークを実施。参加者は20人ほどで、そのほとんどがUXについて知らなかったといいます。

    横田「まず、UXを学ぶことは『ものごとの見方』を身に付けることにつながり、人生のあらゆる場面で必要な考え方であること、UXデザインやHCD(人間中心設計)の考え方はデザイナーや開発者だけのものではなく、すべての人々の基礎的な教養になるなど、UXの重要性について説明しました」

    続けて横田は、UXとは何かについて語りました。

    横田「UXは、ユーザーが製品やシステムのサービスを体験することによって起きる『楽しかった』や『気持ち良かった』といった感情のことであり、概念です。UXデザインというのは、UXという概念を実現する方法論です。
    高機能であれば商品が売れていた時代とは違い、近年は、サービス(コト)を体験することに価値を感じる時代になりました。より質の高いユーザー体験を提供するためにその価値を探し出し、創り出す工程(=UXデザイン)は必須です」
    「UXを実現する方法として、一番の近道が『HCD(Human Centered Design)=人間中心設計』。つまり、ユーザーをよく知るために調査と分析を行うことです。学生にもそれを体験してもらうために、ワークの時間ではインタビューなどの手法に関する調査目的を説明した後、実際にインタビューを実施してもらいました。
    ワークで実践したのは半構造化インタビューと呼ばれる手法です。所定のシートにインタビュー結果と、そこから発見された洞察や問題点を書いてくというもので、質問内容は大筋だけ決めておき、後は自由に発話してもらいながら、重要なキーワードを拾っていくやり方です」

    実際に体験してほしいという想いから実施した半構造化インタビューのワーク。インタビューのやり方について、陥りがちな注意点も伝えました。

    横田「学生たちには、自分が欲しい答えを引き出すような『証拠集めのインタビュー』を行ってはならないと伝えました。例えば、暮らしの中で何が必要と思うかを直接聞くのではなく、ライフスタイルなどの周辺環境から聞き出し、そこから問いを立てることがユーザーを知ることにつながります。また、インタビュー中のメモは、箇条書きにまとめてしまうと細かなディテールや感情を取りこぼしてしまうので、聞いたことは生の言葉のまますべて書き出すように指導しました」

    より良い新規事業創出に向け、UXデザインを社内に広める

    津田塾大学でのワークの様子

    社外でUXについて講演するきっかけとなったのは、すでに横田が同様の研修を社内に向けて行っていたからでした。横田は、社内でUX研修を行おうと思ったきっかけについても話します。

    横田「UXについては、それまで外部講師を招いて研修を主催していましたが、1回の講義だけではどうしても理解が及ばない部分があり、UXの重要性や面白さを知ることはできても実践することは難しいと感じていました。研修で得た学びを実践で生かせるようにしてもらいたい、体系的に伝えられるようにしたいという思いから、UXデザインディレクターとして自らも研修を行うことにしました」

    UXを教えるうえで気を付けている点はあるのでしょうか。

    横田「UXの定義は人によって異なり、UXはデザイナーが考えるもので自分には関係がないという誤解もあります。明確な答えもないため、私はインタビュー手法や考え方を含めて、特に技術者の方達に伝わりやすい表現を心がけています。
    研修後は『UXに対する理解が深まった』という感想もいただいたので、これからも取り組みを続けていければと思っています」

    「価値創出」の重要性

    価値創出のための一つの手法がUXデザイン。改めてその必要性について次のように話しました。

    横田「新規事業を考える際、ソリューションありきで考えてしまう傾向があります。しかしそれでは、ユーザーにとって本当に価値のあるものは作れず、GCカタパルトが掲げる未来のカデン創出にはつながりません。ユーザーが抱える課題への問いを立て、ヒアリングを重ねながら組み立てていかないと、求められる事業にはならないと考えています。ヒアリングの際には、対象ユーザーを深く観察し、声にならない声を拾うことが大切です。そしてインタビュー後は、結果を見ながら分析するのはもちろん『正しく情報が引き出せていたか』『誘導するような質問をしていなかったか』などを振り返ると良いでしょう」

    横田は、新規事業への挑戦を考えている人に向け、日頃から好奇心を持つことで社会課題も見つかりやすくなり、あらゆるものへ「なぜ?」と問い立てを続ける態度が大事であるといいます。
    横田自身も、UXについてはまだまだ学ぶべきことが多くある。自分も学びながら、もっと多くの人にそれを伝えていきたいと語りました。

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