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「13歳からのアート思考」のベストセラー作家・末永幸歩さんが語る「自分の答えの作り方」

「13歳からのアート思考」のベストセラー作家・末永幸歩さんが語る「自分の答えの作り方」 | くらしビジョナリーコラボスタートアップと、くらしでつながり新しい価値や事業を創出するオープンイノベーション活動

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    パナソニックで、イノベーションや新規事業に挑戦する為の風土醸成を推進しているGame Changer Catapult(以下、GCカタパルト)。そのGCカタパルト事務局では、社員が主役となってアイデアや想いをアピールするピッチイベント「Cat7」が10月後半に開かれるのを前に、新規事業創出活動のきっかけを持ってもらおうと「アートで学ぶ自分の答えの作り方」と題してオンライン講演会を開催しました。今回はイベントの内容とともに「アート思考」について紹介します。

    自分で納得できる答えを探すためにぴったりな「アート思考」

    近年は「アート思考」という考え方が注目されています。これは「自分の答えを創る」ための思考で、芸術活動に限らずビジネスや日常生活にも活用することができます。ただ、これまで日本では「受験勉強さえしていればいい」といった時代もあり、試験と同じように、すでに用意されている正解を探してしまうような思考が、一部で定着していました。

    しかし実際に社会に出ると、正解がある課題というものは少なく、自分で納得できる答えを見つけることが求められます。こうした部分にギャップを感じている方も多いと思いますが、そんな悩みに対して有効なのがアート思考です。これまでの自分の考え方とは違った視点で物事を捉えることができるので、新規事業のアイデア発見に生かすことも期待できます。
    それではイベントの様子をお伝えしていきます。

    アート思考で大切なのは「やってみたい」と思ったことを考え続けること

    ゲスト:末永 幸歩(美術教師/アーティスト)

    東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。美術教育の研究に取り組む一方で、中学・高校の美術教師として教壇に立つ。アートを通して「ものの見方を広げる」ことを伝える授業は、生徒たちから大きな反響を得ている。著書には「13歳からのアート思考」がある。

    美術教師としてアートを通して「ものの見方を広げる」ことを伝える授業が人気の末永さん。中学・高校などの教育現場から、社会人向けのセミナーなど、多方面で活躍するアーティストでもあります。著書の「13歳からのアート思考」は16万部を突破するベストセラー。今回はオンラインでの講演ということで、チャット機能を使ったアート鑑賞のワークショップが開催されました。

    末永さんの著書で16万部を突破した「13歳からのアート思考」

    末永さんはまずアート思考についてまとめると、アーティストたちのように

    1. 「自分なりのものの見方」で世界を見つめ
    2. 「自分だけの答え」を創り
    3. それによって「新たな問い」を生み出すこと

    であると語ります。例として20世紀のアーティストたちが新しい価値や意味を生み出していったことを挙げ、考え方としては「自分起点であること」「自分の興味や疑問、違和感に目を向けて探究すること」と紹介しました。

    続けて末永さんはアートを植物に例え、大切なのは「やってみたい」と思ったことはまず着手して考え続けること。すると自分の「興味のタネ」から「探究の根」があらゆる方向に枝分かれして伸びて「表現の花」を咲かせるのだといい、そのタネや根の部分こそがアート思考なのだと話します。

    アートを植物に例えたイラスト

    視点を変えて答えを創るには「見えているものを、一度否定してみる」

    そして実際にチャットを使ったワークショップがスタート。まずは「美術館で、1つの作品をどれくらいの時間をかけて見ていますか?」という質問が出されると、参加者からは「数秒」「1分」「10分」などさまざまな回答が。末永さんはアートには決まった答えがないので、自分なりの答えを見つけられるように鑑賞することが大切だといいます。

    次に1枚の絵画が表示され「知っている知識から離れて考えてみよう」というテーマで、以下の

    1. 「アウトプット」しながらみる
    2. 「視点」を変えてみる
    3. 「自分だけの答え」をつくる

    3つの手順に沿って鑑賞が始まります。

    アウトプットの内容としては

    • 気づいたことや感じたことを書き出す
    • 主観事実「どこからそう感じたのか?」 事実主観「そこからどう感じるのか?」
    • いま見えているものを一旦否定してみる

    というポイントが伝えられ、参加者たちの「暗い感じ」「寂しい」という感想が書き込まれました。ほかにも末永さんから「どんな音が聞こえるだろうか」「自分が登場人物のつもりで」といった「視点の変え方」をアドバイスされると「仕事を終えて帰るシーン」「太陽の暖かさを感じる」「太陽ではなく怪獣の目」など、より具体的な感想を述べる人も多く、自分なりの答えを考えるワークショップを体感することができていました。

    ワークショップで使用された絵画

    ワークショップの最後は「自分だけのタイトルをつける」というもので、これまでに感じたイメージを膨らませて「自分だけの答え」をアウトプット。一人ひとりが感じたそれぞれの印象がチャットで投稿されました。今回のワークショップに使われたのは、印象派の画家を代表するフランスのクロード・モネの作品で、代表作とされる「印象・日の出」。自分の感じた色を探究し続けたモネの生涯から、アート思考について触れることができるよい機会になりました。

    自分の答えに固執する必要はない、反対意見も別の答えと捉えて柔軟に

    ワークショップ後は想像力についてのトークや、過去の経験が通用しなくなった21世紀以降の世界を指す「VUCA(ブーカ)世界」についての講演が続き、末永さんはモノの生産や新しい価値に意味を与える「創造性」の重要さを語ります。つまり、自分の興味や違和感など強い感情から「問い」を立てて、自分なりに考えることが大事なのです。

    そして変化の大きい世界では既存の課題から答えを探すことよりも「自分の興味から答えを創ること」の方が大切だと話します。末永さんの話す通り、観察して疑問をアウトプットし、前提を疑うことで、答えを創るという流れを意識することがアート思考の鍵になります。

    こうした講演を聞いて、参加者からは多くの質問が寄せられました。末永さんは、アート思考のビジネスへの活用法や自分の出した答えに反対された場合の対処などを問われると「ビジネス的には課題を発見するためにも、こうした考え方を使ってほしい」「答えに固執する必要はないし、反対の事も考える。反対された場合も、別の答えを考えるきっかけになる」といった捉え方を語りました。

    このように、イベントを通じて積極的にチャットで質問や意思表示をする方も多く、アート思考への高い注目度を感じることができました。

    自分起点のアイデアを、もっとためらわずに発信してほしい

    お伝えした通り、さまざまな意見がシェアされる非常に熱量の高いワークショップになりました。終了後の満足度アンケートの結果では、5段階評価で平均4.6を記録。「もっと自分の答えを深掘りしていきたいと思った」というメッセージも寄せられ、GCカタパルトとしても期待に応えることができました。

    今後はワークショップで意見を出してもらったように、社員がアイデアなどを発信する機会を充実させていくことが重要です。意見を吸い上げる仕組みや環境を整えることで、より積極的なアイデア発信の場が生まれれば、GCカタパルトのビジネスコンテストやCat7なども活性化し、パナソニック全体のメリットにつながると感じています。

    みなさんも自分起点のアイデアをためらわず発信して、あらゆる可能性を創り出し、社会の課題を解決できる「ゲームチェンジャー」を目指してチャレンジしてみませんか。GCカタパルトはそうした一人ひとりの挑戦をサポートしています。

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