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パナソニック アプライアンス社の企業内アクセラレーター「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト、以下GCカタパルト)」。2019年にGCカタパルトが主催するビジネスコンテストに参加した金子は、コンテスト終了後も挑戦を続け、ビジネスインキュベーション課への異動も果たしました。経験を糧に新しい道を切り拓く金子が、GCカタパルトで得た経験と今後のビジョンを語ります。
「技術者×食」IHクッキングヒーターの開発からキャリアスタート
▲金子佳市 調理家電部門で新規事業開発を担当
金子がパナソニック入社を決めたきっかけは大学時代の研究室にあると話します。
研究室に配属されるまでは、アルバイトに明け暮れる大学生活を送っていたという金子。教授の一言で研究に身が入るようになったと語ります。
金子「当時は超急速充電可能な電動スクーターの開発に取り組んでいたのですが、研究室配属直後の『研究とはそもそも世界初のもので、金子くんが第一人者だ』という教授の言葉は衝撃でした。そういった考えをお持ちの教授だったので、学生ながらに発信の機会を多く頂きました。研究成果や取り組みを認めていただき、学会に参加したり、IEEEや日本電気学会から賞を頂くという成功体験を収めることもできました。これらの経験から世の中に役立つものを作る技術者という仕事はいいなという想いを抱くようになりました」
学生時代に注力した回路知識を活かせる電機メーカー、そして好きな『食』に関わるモノづくりをしていることが決め手になり、パナソニックへ入社を決意します。そして入社後、金子はIHクッキングヒーターの開発エンジニアとしてキャリアをスタートさせました。
金子「IHクッキングヒーターの開発をはじめて半年間は、いわゆる電安法など様々な法律に準拠するための開発を行いました。電気回路の構成を変更したり、パターン変更によるノイズを抑えたりといった改良が中心です。次の半年間は、価格を抑えるための合理化という仕事を行いました。部品の選定や回路を軽くすることで価格を抑えるといったものです。最終的に先行開発テーマにも携わりました。この1年でパナソニックが取り扱っているIHクッキングヒーターの全機種を担当し、知見を深めることができました」
GCカタパルトのビジネスコンテストへ参加も落選。半年かけて見つけた新規事業に必要な3本の柱
▲経営幹部へ向けた報告の様子
自部署での開発に精を出していた金子。入社1年目の終わりに参加した研修でのグループワークが、GCカタパルトのビジネスコンテストに参加するきっかけとなりました。
金子「入社前からGCカタパルトのことは知っていたのですが、そこまで興味を持っていたわけではありませんでした。そんな時に参加した研修で"未来の家電を考える"というグループワークを行ったのです。そこでVRで日本中を旅するというアイデアが出て、『GCカタパルトに出せばいいんじゃないか』という話になりました。その場にいた同期で『このまま終わるのは勿体ない』と強く興味を持った人がいたので、一緒に参加したという流れです」
きっかけはVRだったものの、最終的に提出したのは"マイボトル"をテーマにしたアイデアだったといいます。
金子「GCカタパルトに参加するには、お客さんの負のポイントやなぜ私達がやるのかなどを記載するアイデアシートの提出が必要です。当時、今のような自粛ムードでもなかったので、VRで旅行に行っても現地の匂いや雰囲気を表現しきれず、あまり価値のあるサービスにはならないだろうと思いました。そこで考え直したところ、私も常に持ち歩いているマイボトルに関するアイデアが浮かんできたのです。マイボトルを持ち歩いている人は環境意識が高い人が多いけれど、中身がなくなってしまうと結局ペットボトルを買い足すことになってしまっているなと。そこで、マイボトルの洗浄と補充を自動で行う装置が自宅や職場あらゆる場所にあればいいのではないかと考えたのです」
マイボトルのアイデアを熱心に推敲した金子でしたが、12月に行われた経営幹部審査会での評価は得られず、落選という結果になってしまいました。
活動を続けていると、GCカタパルトで実現できなかった理由が見えてきたといいます。
金子「様々な方からアドバイスを頂きながら仮説と検証を繰り返していくうちに、自分の意見と周囲の意見にギャップがあることに気が付きました。当時は自分のアイデアが可愛くなってしまっていて、どんな意見も褒められているように聞こえたり、気を遣って言ってくれたことを真に受けてしまったりと、本音を聞けていなかったです。同時に事業計画書も数字あそびになってしまっていましたね」
このような経験を通して、金子が学んだのは3本柱が重要だということでした。
GCカタパルトを経て部署異動、新規事業開拓を本業へ
▲GCカタパルトで共に高めあった仲間たちと共に
GCカタパルトの参加とその後の振り返り期間を経て、金子はビジネスインキュベーション課へ異動しました。
EATPICKの進行にあたり、GCカタパルトで得たノウハウやもらったアドバイスが活きていると金子は話します。
金子はビジネスインキュベーション課での仕事だけでなく、経済産業省とJETRO主催の次世代イノベーター育成プログラム「始動Next Innovator」への挑戦をしながら、CHANGE by ONE JAPAN や社内サークルなど複数のチームに所属しています。
その中の1つ、CHANGE by ONE JAPANというのは、大企業挑戦者支援プログラムのことで、私はその事務局に入ってサポートをしています。参加者は大企業に属する方ばかりです。 皆さん優秀である故に失敗しないための結論ありき、仮定ありきで進めてしまう場合が多いです。
そこで私のGCカタパルトの経験をもとに、やってみて失敗することが大切だという話をさせていただいています。また、社内インキュベーションサークルBOOSTでは、経営幹部と若手を繋ぐ取り組みをしています。
実は経営幹部の方って若手からの提言に対して誰も嫌だという方はいなくて、『いつやる?』と返事をくれるんですね。声をかけてみる前はまさかひとつ返事で来てくれるとは思っていなかったので、やってないからできないだけで、やってみたらできることって有志活動でも新規事業でも通ずるところがあるような気がしています」
恩返しを大切に。GCカタパルトの先輩から得た学びを後輩にも
▲メンバーで夜な夜な集まって議論しました(左から金子/太田/藤森)
GCカタパルトでの経験をもとに、新しい部署やチームでの挑戦を続ける金子は出会った方々への想いを語ります。
金子「カタパリスト(GCカタパルト経験者)の方は、私がこれから過ごしていく社会人経験の3歩先を歩かれる目指すべき成功体験の塊のような存在です。皆さんがやられてきたことは最低限やっていこうと、ひとつの目標としても捉えています。先輩方にたくさんのことを教えていただいているので、次に私の後ろを走る人には何を考え、どう行動した結果、どんな評価が得られたのかということを伝えていきたいですね」
次の挑戦は、部署内でアイデアを実現させることだと金子は前を見据えます。
金子「現在取り組んでいる新規事業を成功させるには、顧客にあたるだけでなく、協業先探しや社内調整などが必要です。まさに、学んでいるところですが、しっかり邁進していきます」
新しいことに挑み続ける金子が常に意識しているのは"恩返し"の気持ちです。
金子「大学時代に背中を押してくれた方や部署異動にお力添え頂いた方、カタパリストの方など、これまでお世話になった方には恩返しをしていきたいなと思っています。環境が変わって離れてしまっても、ちゃんと報告して、相手にも喜んでいただける関係は非常に大切だと思っています。一度関わった方とは最後までお付き合いしていきたいですね」
金子はGCカタパルトをはじめとする様々な場所での学びや仲間との出会いを大切にしながら、実現したい未来に向けての歩みを止めることはありません。金子の挑戦はまだ始まったばかりなのです。