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Game Changer Catapultの2017年度のビジネスコンテストに応募し、サウスバイサウスウェスト(以下SXSW*1)にも出展したおにぎり店運営支援サービス「OniRobot(オニロボ)」プロジェクトは、事業化に向けて着々と歩みを進め、2019年9月から10月にかけて、新橋にて実営業としての実証店舗をオープンしました。その模様をレポートします。
OniRobotの実証店舗が新橋にて開店!待たずにテイクアウトできる新体験
こんにちは、OniRobot(オニロボ)(*2)プロジェクトリーダーの池野直也です。
OniRobotとは、「できたて」「好みにカスタマイズ」したおにぎりを、「待ち時間ゼロ」でお届けする顧客体験を、最小限の人数で無駄のない店舗運営で実現するソリューションビジネスです。独自技術搭載のおにぎりロボットや、アプリによる注文・決済システムを備えています。
今回場所を提供してくださったのは、夜は居酒屋を営んでいる焼酎楽味隠れ家 陽(しょうちゅうたのしみかくれがよう)さん。新橋駅からほど近い商店街にあり、ビジネスパーソンのランチ需要が見込める理想的な立地です。
新橋の実証店舗に立つ池野(左)
店の外では看板がお出迎えする中、QRコードを読み取ると専用サイトからメニューを選んでおにぎりを注文できます。 あとは、お店で受け取るだけ。
注文を受けたお店では、ごはんをロボットに入れ、握って具材を盛りつけ。出来上がったおにぎりは、受け取りスペースでお客様をお待ちします。来店前にアプリから注文、出来上がり時間に合わせて来店すると待たずにピックアップできる仕組みです。
ついに実証店舗にこぎつけたOniRobot、鍵を握るのはスピード感
実営業ベースの実証店舗にたどり着くまでには、山あり谷あり色々なことがありました。
我々がこのOniRobotで提供したいのは、おにぎり店を始めたい方が、1人でも省スペースで運営できるソリューションです。お客様はアプリを利用して事前に注文、決済までを完了させます。来店する頃には出来上がっているので、店では受け取るだけ。待ち時間ゼロ、店員との会話も不要(もちろん話かけていただけるのは大歓迎です!)というまったく新しい購入体験です。ただ、このコンセプトをお客様が本当に受け入れてくれるかは分かりません。ならば、実際に自分達で店舗を営業して実証しようというのが今回の取り組みです。
お店を開くために、数々のハードルを乗り越える必要がありました。というよりも、店舗をもつために必要な事柄全てにハードルがあったというのが実情ですね。例えば場所探し。当初はインターネットを利用し、スペースを貸してくれる飲食店を探したのですが、実際出向いてみると人通りが少なかったり、駅から遠かったりと、希望の条件に合うところがなかなか見つからず......。そんな時、プロジェクト発案者の加古さおりがお世話になっていた、一般社団法人おにぎり協会の中村祐介様にこちらのお店をご紹介いただいたのです。また、飲食店運営のために必要な食品衛生責任者の資格をメンバーが順番に取得しています。
実証店舗の前に置いた看板、集客も手探りで行った
他の色々な事の詳細は省きますが、スピードを重視して乗り越えてきました。それは、全てのシステムが出来上がってから検証をすると2~3年かかってしまい、その間にタイミングを逃してしまうかもしれないという危機感が強いからです。ですから、今回も決済システムの開発と並行しながら実証店舗に臨みました。世の中には同じ様なコンセプトを考えている人はいるでしょう。ビジネスは競争。常にスピード感を持つことが大切だと感じています。
実証店舗を通じて感じた、OniRobotが解決すべき3つの課題
今回新橋で実証店舗を開店したのは、「ひとりでも省スペースで運営できる小規模おにぎり店ソリューション」としてはずせない提供価値は何かを検証するためです。
一般的な、「店頭で商品を見て選び、対面で購入する」体験と違う、「店に行く前にアプリで選んで注文・決済、店頭で待たずに受け取る体験」を提供するために、3つの課題があると考えました。そして、それぞれの課題に仮説を立て検証していったのです。
<検証したい仮説① 店頭に注文端末は必要?お客様にいかにスムーズに注文していただくか>
最初に考えたのは、「店頭で注文サイトを表示するQRコードのみのご案内でお客様にスムーズに購入いただけるか」という点です。結果として、皆さま1分弱くらいで注文を完了されており、そこまで負担をかけずスムーズに注文して頂けることが確認できました。他にも、OniRobotは、事前注文~ピックアップのスタイルで行列がありませんので、店頭ではお客様それぞれがプレッシャーを感じず、自分のベースでアプリ注文されていたのが印象的でした。
また、店舗に来た順番と受け取りの順番が異なる、という体験も、お客様は自然と受け入れてくださっていたので、お客様の状況に合わせてご提供できるピックアップ店舗の可能性を感じています。
<検証したい仮説② お客様にとって一番自然な受け渡し方法とは? >
次に検討したのは、「どうやっておにぎりをお客様に渡すか」です。店舗での実証期間中、さまざまな方法を試してみました。その結果、カウンターの上におにぎりを載せ、お客様がピックアップする方式で問題なさそうだということがわかったんです。一方で、お客様が増えるにつれ、取り違えなどが発生する可能性もあるため、事業として店舗のあり方を固める際、最適な受け渡しの仕方を、引き続き検討していく必要があると考えています。
お客様にピックアップされるのを待つおにぎりたち
<検証したい仮説③ 予約時の「受け取り時間指定サービス」はうまくいく?>
店舗での実証後半にチャレンジしたのが、「受け取り時間指定サービスで、待ち時間ゼロを実現できるか」という課題。実際、このサービスは予想以上の効果を発揮しました。前半は受け取り時間指定を導入しておらず、事前に注文してから来店されるお客様の場合、おにぎりを握ってから受け取りまでの間にしばらく時間が経ってしまうケースもありました。
サービス導入後は、時間指定注文に対する私たちのオペレーションもスムーズに回すことができ、握ってから受け取りまでの待ち時間をほぼゼロにできたんです。その結果、「できたて、ほかほかのおにぎりをご提供できる」「お客様をお待たせすることなくおにぎりをお渡しできる」という体験価値が高められる点も、お客様の生の声から実感できました。次世代テイクアウト店の「できたて」「待ち時間ゼロ」という体験を実現するためには、受け取り時間指定サービスはマストだと確信しています。
2020年はOniRobotがついに新たな展開を迎える
実際に新橋で店舗を営業してみて意外だったことは、ほとんどのお客様が店頭に来てから注文されていた事です。想定していたユーザーエクスペリエンスは、来店前に事前にアプリで注文してから来店し受け取り、というものだったのですが、「事前に注文する」という行動がなかなか浸透していないという課題に気づくことができました。「お店に行ってから注文するもの」という固定観念を壊すためにはまだ工夫が必要のようです。店舗での実証期間後半にはちらほらとリピーターのお客様が事前注文するケースも増えてきたので、今後も浸透させるために工夫していきたい部分です。
改めて分かったことは他にも色々あります。以前おにぎり対決をさせていただいた、おにぎり浅草宿六の三浦さんからは、おにぎり屋として、お客様にどう美味しく楽しく食べていただくかの貴重なアドバイスをいただきました。塩の振り方、のりの巻き方から、ご提供する際の台への置き方まで、「公式ライバルとして、きっちりいい体験を提供できるように」と親身にアドバイスを頂けたことに本当に感謝しています。
また、「3週間の実証店舗では短すぎるな」というのも正直な感想です。店舗を開店しても、お客様に認知していただいて、実際に来ていただくまでには少し時間がかかりますので、最初の数日は、店舗を軌道にのせることに苦心しました。新橋を行きかうお客様に認知していただき、少しずつ2回目、3回目と来ていただくお客様が出てきたところで終了となってしまったのは残念でした。もっともっとお客様の生の声を伺って、OniRobotソリューションを進化させていきたいという想いを強くしました。
その想いを実現するため、2020年にOniRobotは新たな展開を迎えます。次回は実際に自分たちで店を借りて長い期間営業することでOniRobotという次世代店舗運営ソリューションが事業(商売)として成立するか見極めるという次のハードルへチャレンジしていきます。その際は、今回の実証店舗で得た学びを生かし、OniRobotで提供できる価値をさらに磨き上げていきたいとチーム一同決意しています。オープン日が近づきましたら、公式Webサイト、ソーシャルメディアで詳細情報を発信させていただきますので、お楽しみに!今後もぜひ、応援してください。