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新パナソニックの「創業メンバー」は未来をどう変えていく?
入社式に潜入レポ

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    グループの新体制移行に伴い、暮らし領域の事業が結集した新しい事業会社に生まれ変わったパナソニック株式会社。4月1日、新パナソニックとしては初めての入社式が行なわれ、全301名の新入社員が参加した。この日から社長として舵を取る品田正弘社長のメッセージに真剣に耳を傾け、その後のトークセッションでは堂々と意見を述べるなど、頼もしい姿を見せた若者たち。パナソニックの未来を担う新入社員の、門出の一日を追った。

    「一つひとつの出会いが財産に」。品田社長が新入社員に贈るメッセージ

    4月1日、2022年度パナソニック株式会社の入社式『Welcoming Ceremony』が開催された。東京・汐留をメイン会場に、大阪・門真や全国各拠点を中継でつなぎ、全301名の新入社員が参加した。

    東京・汐留の会場にて、緊張の面持ちで入社式に臨む新入社員たち
    大阪・門真の会場では、300人ほどの新入社員が入社式に臨んだ(撮影:Panasonic)

    折しも、この日から新たな事業会社としてスタートしたパナソニック株式会社の新社長に就任した品田正弘は冒頭のスピーチで、その一期生となる新入社員たちを「創業メンバー」と表現。これからパナソニックの歴史をつくっていく頼もしい若者たちに対し、力強くメッセージを発信した。

    品田正弘氏

    品田:入社おめでとう。今日は、新しいパナソニック株式会社が創業した初日。つまり、みなさんは第一期生。私と同じ創業メンバーです。この新しい会社に、ともに歴史を刻んでほしいと願っています。パナソニックは「人々のくらしをよくすること」を目指す会社です。まずは、目の前にいるお客さまのお困りごとを解決していくこと。そんな一つひとつのアクションから未来の定番と呼ばれる商品やサービスが生まれるかもしれません。そして、それが社会や地球によりよい未来をもたらすかもしれません。みなさんと一緒に、未来をつくっていけることを楽しみにしています。

    続けて、品田は自身の経験をふまえ、新入社員にアドバイスとエールを贈る。

    品田:私が仕事をするうえで大事にしているのは「現場」です。工場や部品の調達先、家電量販店の店頭、ビジネスパートナーや投資家の方々、さまざまな現場に自ら足を運び、それぞれの立場で仕事をする人たちと顔を合わせて目指す方向性を共有することを心がけてきました。

    まは多くのことがリモートでできる時代です。しかし、ここぞ! というときにはやはり現場。ぜひ、自分が現場で見たこと、聞いたこと、感じたことを、会社員として、そして人生の財産として積み重ねていって下さい。

    仕事をしていると、さまざまな困難に直面します。その度に、仕事というのは多くの人に助けてもらうことで、ようやく成り立つのだと気づくでしょう。私自身、現在の社長という立場でさえ、毎日のようにそうした場面に遭遇します。そこでまわりに感謝をすればするほど、それは自分に返ってくるのだと感じます。みなさんもぜひ、感謝の気持ちを忘れないでください。

    話に真剣に耳を傾ける

    うまくいかなければ、まわりに頼る。「失敗した人が何度でもチャレンジできる会社に」

    続いて行なわれたのは、品田、人事責任者(CHRO)の加藤直浩、そして、新入社員によるトークセッション。「共感・体感・実感」をコンセプトに、汐留、大阪の新入社員10名が、緊張しつつも自らの言葉でそれぞれの思いを口にした。

    最初のテーマは「新入社員(時代)の思い」。まず、新入社員から語られたのは、新しいスタートや環境が変わることへの不安と期待だ。

    「これから新しい生活、新しい仕事が始まると思うと不安です。ただ、それ以上に楽しみという思いがあります」

    「もうすぐ地元の長崎を離れ、大阪で勤務することになります。環境が変わることへの不安はありますが、頑張っていきたいです」

    「いよいよ社会人生活が始まるという期待が大きいです。自分に対しては『努力』と『挑戦』を、お客さまに対しては『真摯な心』を忘れずに、仕事と向き合っていきたいと思います」

    新入社員の言葉を、頼もしそうに聞き入る品田。マイクを渡されると、自身が新人のころのことを振り返り、そこで立てた「誓い」について明かした。

    品田私の入社式には1,200人の同期がいました。当時の会場は大阪でしたが、直前までそれを知らなかったくらい、とぼけた新人だったと思います(笑)。ただ、心は希望に満ちていて、せっかく会社に入ったのだから「日々、楽しもう」と考えました。私たちの仕事は、たくさんの人に喜んでもらってこそです。まわりに喜んでもらうためには、まず自分が楽しまないといけない。そんなふうに思ったことを覚えています。

    続いてのテーマは「新しいパナソニックが目指す姿」。まずは品田の口から、会社のミッションとビジョンが語られた。

    品田パナソニックのミッションは「Life tech & Ideas 人・社会・地球を健やかにする」。また、ビジョン(ありたい姿)は「人を想う技術と創造力で、くらしを支えるベストパートナー」です。私たちの存在意義は、人々の暮らしの質を上げていくこと。一人ひとりのベストパートナーになり、健やかな暮らしに貢献することです。それを実現するためには、個人だけでなく、社会、そして地球も「健やか」でなければならない。環境問題に本気で取り組み、サステナブルな社会に貢献をしたうえで、より多くの人のウェルビーイングを実現していきます。また、ベストパートナーになるためには、その領域で必ず一番手か二番手にはならないといけない。そんな気概を持ち、さまざまな分野で存在感のある会社になりたいと考えています。

    こうした会社のミッションやビジョンに対し、一人ひとりの社員はどうコミットしていくのか。新入社員に、「自身が目指す姿」「パナソニックで叶えたいことは何か?」という質問が向けられると、それぞれが自分の意思を明確な言葉で表明した。

    品田社長がおっしゃった、『ベストパートナー』という言葉に共感しています。私がパナソニックに入ったのも、お客さまの困りごとに寄り添った商品開発をしたかったから。会社のビジョンは私の目指したい姿と一致していると感じました」

    「以前、札幌に住んでいたことがあります。そのときに感じたのは、札幌と北海道の他の地域との生活水準の格差。ぼくはこれをなくしたい。パナソニックの家電や電気設備を使って、都市部も地方も同じように暮らせる街づくり、家づくりを実現したいと思います」

    最後のテーマは「パナソニックの『人』とは?」。世界中からさまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まるパナソニック。ここでは人事トップである加藤の口から、松下幸之助が掲げた「企業は人なり」の精神に根ざした、社員に対する会社の思いが語られた。

    加藤パナソニックには熱意とエネルギーを持ち、それをなんとかお客さまや社会のために活かそうと真面目に頑張る社員が多いと思います。また、会社も『企業は人なり』の精神のもと、そうした人たちの持ち味を生かすことをつねに考えています。悩んだとき、壁にぶつかったとき、会社には助けてくれる人が必ずいる。うまくいかないときは、どうかまわりに頼ってください。そして、いずれは自分が後輩を助けていく人になってほしいと思います。

    加藤直浩氏

    トークセッションの最後には、あらためて品田、加藤から新入社員へのエールが贈られた。

    加藤会社というのは多様な人たちが集まる場所。さまざまな意見や考え方がぶつかり合い、新しい価値観を生み出すことが大切です。新人だからと遠慮することなく、若いみなさんの思いをぶつけてください。そして、どんどんチャレンジしてください。フィールドはこちらが必ず用意します。ぜひそこで、それぞれのベストパフォーマンスを発揮してください。

    品田どうかこの日の気持ちを忘れず、一生の宝物にしてください。会社員生活はとても長いです。日々の仕事に忙殺されると、大切なことを見失います。そんなときにはふと立ち止まり、入社式で緊張していた自分を思い浮かべてみましょう。そして、希望に満ち溢れていたころの初心を思い出してください。

    新入社員が思うパナソニックの課題、そして「Make New」とは?

    入社式終了後、トークセッションに登壇した新入社員に、式の感想や会社に対する印象の変化、パナソニックの社員になった思いなどを聞いた。

    「品田社長から『パナソニックの創業メンバーの一人』と言われたときに、会社の一員になった実感が湧きました。また、トークセッションに参加し、一つのテーマ、同じ質問に対しても本当にいろんな意見、考え方があることを再認識しました。そして、それは大きな可能性でもあるとも。これから働いていくなかで、さまざまなバッググラウンドを持つ同期や先輩に出会うと思います。一人ひとりの声に耳を傾け、みんなで一緒に考えていくことを大事にしよう。そう、あらためて思いました」

    「入社式を経験して、パナソニックの印象が少し変わりました。思ったよりカジュアルな会社だなと。服装も自由ということでスーツではない人も多かったですし、トークセッションもあまり固くない空気感だったと思います。社長との距離がすごく近かったので最初は緊張しましたが、とても穏やかにお話しくださったので、次第にほぐれていきました。それに、当たり前ですが、社長も同じ人間なんだなと思い、安心しました(笑)」

    どんな質問にも、しっかりと自分の言葉で語る新入社員たち。そんな頼もしい彼たち彼女たちだからこそ、あえてこんな質問をぶつけてみた。

    現在の「パナソニックの課題」は何ですか?

    率直な質問に思わず苦笑い

    「一人のユーザーとしてパナソニックに対して感じることは、他社と比較をすると価格が高いということです。もちろん、高品質なのは間違いないのですが、日本以外のさまざまな国へ製品を届けることを考えると、厳しい価格帯なのかなと思います。これからは日本のみならず、広く世界のお客さまの暮らしを支えることも考えていく必要があるのではないでしょうか」

    「パナソニックはよくも悪くも、『家電の企業』というイメージが強すぎるのではないでしょうか。パナソニックに内定をもらったことを家族や友人に話したときも、『ああ、家電の』という反応をされることがほとんどでした。でも、実際には電池や電気設備などのインフラにも携わっていて、高い技術を持っています。このことをもっと広く周知していくことで、さらに幅広い分野にパナソニックの製品を広げていけるのではないかと思います」

    「パナソニックは、あらゆる家電を幅広くカバーしている会社です。ただ、なんでもできる、なんでもやっているからこそのマイナス面もあるように感じます。たとえば、『この家電はパナソニック一択だよね』といった、絶対的なものが少ない。この分野だけはどこにも負けないという尖りがなく、すべて平均的に手がけているがゆえの印象の薄さみたいなものは否めないのではないでしょうか。『くらしのベストパートナー』を目指すためにも、そこは大きな課題ではないかと思います」

    次々と飛び出す鋭い意見に、同席していた先輩社員も思わず唸る。こうした各々が考える課題をふまえ、これからどんな「Make New」に取り組んでいくのか? 最後に、その決意を語ってもらった。

    新入社員たちがボードに書いた、それぞれの「Make New」

    「私のMake Newは『Shine』です。仕事を通じて、お客さまの人生を輝かせたい。家電には、その力があると思っています。それを強く感じたのはコロナ禍で外出できず、ずっと自宅で過ごしていたとき。有り余る時間のなかで、自宅でおいしいご飯をつくってゆっくり食べる。音楽を聴きながら本を読む。そんな時間がとても豊かであることに気づきました。例えば、家電によって家事を時短することで趣味に没頭する時間をつくるなど、一人ひとりのライフスタイルにゆとりを持たせて、暮らしを輝かせられたらと思います」

    「私は『Make New Standards』です。トークセッションでも話しましたが、私がパナソニックへの入社を希望したのは、地域ごとの生活水準の格差をなくし、多くの人が快適に暮らすための環境を整えたいという思いがあったからです。もちろん、『快適さ』は人により異なりますが、一人ひとりに目指す生活を叶えるための『基準』はあるはず。それを叶えるために、この会社で頑張っていきたいと思います」

    「私が取り組みたいMake Newは『平等』です。学生時代にとある国に長期滞在したのですが、そこではパナソニックの製品を一つも目にすることはありませんでした。パナソニックは日本や欧米をはじめ、経済的に豊かな国では認知されていても、やはり買うことが難しい国はまだまだたくさんあります。もちろん、便利であることが必ずしもいいわけではありませんが、生まれた国や状況に関係なく、望む暮らしを選べる世界になってほしい。そんな思いで、これから仕事に臨んでいきたいと思います」

    すでに高い視座を持ち、それぞれが「叶えたい未来」を描く新入社員たち。それぞれのMake Newが実現するとき、パナソニックもまた大きな飛躍を遂げるに違いない。

    入社式終了後に行われた『志をEGAKU』ワークショップ。「自ら立てた志」をテーマに、それぞれが自己認識・内省しながら自由に絵を描くというもの
    新入社員同士で、自身が描いた絵について説明し合う。自らの志や目標について説明することで、これからの仕事に対してより強い決意を抱いたのだった

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    「品田さん、パナソニックは変われますか?」新社長に聞く、
    「Make New」への思い

    • 取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ)
    • 撮影:豊島望
    • 編集:服部桃子(CINRA)
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