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パナソニックがつくるクラブハウス。
さくらオーバルフォートには「地域×スポーツ」の可能性が詰まっていた。

Sports Community | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

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    ジャパンリーグワンに所属する強豪ラグビーチーム「埼玉パナソニックワイルドナイツ」の本拠地「さくらオーバルフォート」。ただの練習場ではなく、クラブハウス・屋内運動場・宿泊棟が併設された、次世代のスポーツ拠点として注目を集めます。パナソニック、埼玉県、商工会議所、ラグビー協会らいくつものステークホルダーを巻き込んだ誘致・開発の物語と、この施設だからこそ実現できる地域にとってのユニークな価値に迫るため、現地に伺い取材しました。

    記事では、ワイルドナイツの飯島GM、熊谷商工会議所の後藤副会頭、埼玉県ラグビーフットボール協会の新井理事長、そしてパナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 スポーツビジネス推進部の小谷野さんの4名の対談形式を本線に、熊谷市総合政策部 ラグビータウン推進課 吉野課長、埼玉県 県民生活部 スポーツ振興課 浪江課長、ワイルドナイツクリニック 茂木事務長、3名からのコメントも途中に交えながら、ご紹介していきます。

    プロ選手と一般客がゆるくつながる「さくらオーバルフォート」。

    小谷野埼玉の「さ」熊谷の「く」ラグビーの「ら」に、ラグビーボールの楕円を意味するオーバルと、城砦を表すフォートで「さくらオーバルフォート」です。クラブバウスとホテルと練習場があり、設計と施工をパナソニックホームズが担当、当社製品も多く納入されています。設計はいろいろ工夫しました。例えば、クラブハウスは全ての空間がグラウンドに向いています。選手は食堂でもロッカールームの風呂場でも、どこからでもグラウンドに行けて、すぐ出陣できる。そんな間取りを作ろうという話をずっとしてきました。参考にしたのはクルセイダーズ。本場ニュージーランドのチームです。4年前に現地に視察に行って得た着想です。

    練習場との「距離の近さ」もポイントです。ホームゲームの公式戦が8試合と少ないので、日頃からファン・サポーターさんに見てもらえる練習場にしてあります。平日で大体100人から200人、土日になると600人くらいが練習を見に来ます。全国47都道府県の行政からの視察依頼も多く、スポーツビジネスによるパナソニックの提案含めご説明出来る施設です。

    EW社スポーツビジネス推進部 小谷野氏 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    「さくらオーバルフォートは、パナソニックグループが結集した施設」と語るエレクトリックワークス社 スポーツビジネス推進部の小谷野さん。
    クラブハウスの目の前の練習場  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    クラブハウス:目の前には練習場があり、すぐ出て行ける立地。
    クラブのスケジュール | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    練習場ではクラブのスケジュールが公開されており、一般の方にも「いつ、どんな練習をしているか」がオープンになっている。

    電動アシスト自転車が熊谷の街をつないでいく。

    取材の様子 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    場所を変えて、ワイルドナイツ サイクルステーションにて取材を実施。

    飯島パナソニックは街の電気屋さんのイメージがありますが、ここはなんだか先鋭的でかっこいいですよね。後藤さんが作られたサイクルステーションです。

    後藤サイクルステーションなので、シャワールームもあります。

    飯島熊谷ラグビー場は熊谷駅から約3.5kmもあり、輸送交通の問題があったのですが、駅にも自転車のステーション(※)があり解決手段に繋がっています。

    ※ステーションは電動アシスト自転車のレンタル集積場のこと。ワイルドナイツサイクルステーションではアプリを通じてパナソニックの電動アシスト自転車をレンタル&返却、決済が可能。

    パナソニックの電動アシスト自転車  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    貸出しをしているパナソニックの電動アシスト自転車

    小谷野当初、パナソニックの責任者は「熊谷でシェアサイクルを経営して商売になるのか」と心配されていましたね。

    飯島結果的には、長期的な商売とかではなくて「街や世の中をこうしたいんだ」という想いを伝えて、助けていただいていますね。やっぱり地方では「動く」というのは絶対必要になってきます。例えば、ここは駅から距離もありますが平地で自転車にはちょうどいい。電動なので、ご高齢の方や力のない方も利用できます。ある種、一つの社会実験のような取り組みです。

    飯島氏 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    後藤熊谷市もゼロカーボンシティの宣言をしているので、自転車を推奨するだけでも意味があります。シェアサイクルの運営は、全国的にはほぼ行政、観光業界がやるのですが、民間企業で運営しているのは、うちだけなんです。ワイルドナイツの看板を使った1つのチャレンジです。稲垣選手からも今度の試合には、ぜひシェアサイクルに乗ってグラウンドに来てくださいと発信してもらったり。交通の便が悪いのは選手も分かっているので、お手伝いもしてくれています。

    後藤氏 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    後藤また、試合が終わった後は熱狂的なファンがここでたこ焼きパーティーをするなど、ファンが集う場所にもなっています。逆に、午前中からビールを飲んで「じゃあ、ワイルドナイツ応援行くか!」と試合前の景気付けに立ち寄ってくれる人たちも。たまに選手や監督も寄ってくれたりしています。

    ファンとクラブが一緒になって盛り上がれる。そんな場所なかなか日本にないです。ましてや、東京から新幹線で37分で来れちゃいますから、環境的にも恵まれている。

    実際に、熊谷市での賑わいはどうなのか。埼玉パナソニックワイルドナイツと日々連携をしながらホストゲームでインフォメーションブースやシェアサイクルなどの案内を通して支援・お手伝いをされている熊谷市総合政策部 ラグビータウン推進課の吉野課長にお伺いしました。

    吉野
    吉野

    こんにちは、吉野です。ワイルドナイツさんが、さくらオーバルフォートに本拠地を移してこられて、熊谷でのホストゲームの時に市内外から多くの観客、ファンの方が訪れるようになることで街にどんどん賑わいが生まれているように感じます。「ラグビー関係者のみのラグビータウン」から、「市民の方にとってのラグビータウン」に進化していっている実感があります。

    全部見せちゃえ。

    ――サイクルステーションもそうですが、さくらオーバルフォートの「距離感の近さ」にはとても驚きました。そのあたりは意識されていたんですか?

    飯島20世紀までアマチュアスポーツだったラグビーには「地域のコミュニティの軸」としての役割がありました。クラブハウスがあり、試合が終わるとみんな集まってアフターファンクション(※)があり、お酒を飲みながらラグビーについて語り合い、ときには地域の課題についても話し合ったりするカルチャーがあったのです。昔の日本でいうところの自治会ですね。ラグビーが持っていた昔ながらのそんな役割を考えると「練習も近くで全部見せちゃえ」という発想に至りました。練習も見られるし、怪我をした時のリハビリも見られるし、何を食べているかも見られる。そんなコンセプトでさくらオーバルフォートは出来上がりました。

    ※試合後に行われる交流会のこと

    ラグビーボール | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    飯島休みになると、練習を見に来る方はすごい多いですよ。

    後藤横浜ナンバーや柏ナンバーの車がきてますね。遠方から練習を見に来るんです。

    飯島多分皆さんそうでしょうけど、情報化時代で「全部知りたい」ですよね。どんな練習をやっているかも当たり前のように知りたいのです。ふだんの練習すらコンテンツになる時代になってきています。

    ラグビーが生む、古き良きコミュニケーション。

    ――選手の反応はどうなんですか?距離が近すぎて嫌がる方もいらっしゃりそうだなと。

    飯島例えば、メンバーを発表した時に、なんで俺が外されるんだって、ポケットに手入れてふてくされる選手もいるんですよ。でも、面白いのが、練習場がオープンだと人の目が気になるから、みんな「ワイルドナイツのプレイヤーとしてこうあるべきだ」みたいな感じで自分を律した振る舞いになるんですよね。

    あとは、特にラグビーのようなスポーツの1番の価値は「地域のコミュニティの軸」になることです。

    24歳でニュージーランドに初めて行った時に、オールブラックスのアフターファンクションに参加したんです。驚いたのは、No.8のキャプテンのウェイン・シェルフォードという超一流の選手が、地域のおじいさんにその日のプレイを説教されているんです。すぐ側には小さな子供がサインをもらおうと並んでいるんだけど、当のウェイン・シェルフォードはおじいさんにずっと説教されていて...。そのおかしな光景にやたら感動してしまった原体験があります。そうやって地域の人々がプロアマ問わず、自由に混ざり合っていく、その中心にクラブがある。ラグビーはこうあるべきだなと思いました。

    当時からしたら、おじいさんにとっては地域のコミュニケーションとして当たり前の感覚。ただ、残念ながら今は、そういう場面は少なくなってきていますよね。1番問題なのは、コミュニケーションがないことです。意見の食い違いや、元から馬が合わない人もいるんだから、ラグビーや練習をきっかけに、おはようございますでも、こんにちはでもいいし、それこそ説教でもいいし、とにかくコミュニケーションをとることが大切。さくらオーバルフォートはそれが実現できる施設になっていると思っています。

    飯島氏  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    飯島今日もおばあさんが「GM1つ質問してよろしいですか?」と「あの1人だけ大きい人は誰ですか?」と無邪気にグラウンドで訊いてくださって。「東洋大学の留学生なんですよ〜」なんて当たり前のように話したりして。そういう光景を増やしていけるといいなと思います。

    まさに"さくらオーバルフォートだからこその価値"ですね。ここまでクラブや熊谷市など、近い人からの視点でお話を伺いました。続いて、少し俯瞰して見えている埼玉県として、この施設の価値をどこに見出しているのか。埼玉県 県民生活部 スポーツ振興課の浪江課長にもオンラインでお話させて頂きました。

    浪江
    浪江

    スポーツ振興課の浪江です。子供も大人も様々な世代の人がラグビーを見たり、プロの選手を身近に感じたりするとスポーツに関心を持ってもらえます。そういうチャンスをさくらオーバルフォートが作ってくれているなと、県としても感じています。今期のリーグワンの試合の時に素敵なできごとがありました。ワイルドナイツの選手が試合前にVIP ROOMに来てくれるという慣習があるのですが、そのときに、色々と質問が出て、とあるお子さんが「どうしたらそんなにパスが速く出せるんですか?」とリッキーに聞いてたんですよ。そしたらリッキーが「そうか。だったら、今度僕が練習やってる時に声かけてくれよ。そしたら、その場で教えてあげるよ。」と答えていたんです。「練習の時に声かけてくれたらレクチャーしてあげる」なんて、普通ありえないことです。子供たちにとっては選手を近くに感じてラグビーを大好きになる素敵なきっかけです。こんな受け答えが自然と生まれるさくらオーバルフォートって、県の宝だなと思いました。コロナというものを経た後に、スポーツには、とてつもない力があるなというのを改めて感じています。

    肌感覚で自然を感じる気持ちのいい場所「熊谷」。

    ――写真を見ながら、なんとなく現地のイメージは持っていたんですけど、今日実際にこの目で見てみたら想像以上に気持ちのいい空間でした。この違いはなんでしょうか?

    飯島さくらオーバルフォートを語るときに、スキームだったり、いろいろビジネス的な話はあるんだけど、実際この場所に来て、この光景を見ると多分その時の「肌感覚」で「これはいいな」と感じるものがあるんだと思います。

    小谷野リアル感が違いますよね。試合のたびに色々な市町村の市長とか組長さんとか副知事が地方から学びに来て、そうおっしゃいます。

    後藤熊谷市民にとっても、お散歩の名スポットなんですよ。朝、暗いうちから、ラジオ下げて歩いている人がたくさんいるんです。 床がクッション性のある素材なので、足も膝も痛めないですし、いいウォーキングコースになっています。

    飯島公園の周りは電柱とか電線もないから、空がすごく広く感じます。日本じゃないような施設です。

    クラブハウス  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    飯島商業的にやっていくためには、屋根をかけましょうという議論がありました。ただ、最終的に屋根がなくて正解だったなと思います。雨が降った日はお客さんが寒くて困るかもしれないけど、熊谷にとっては、この空とこの緑は大きな価値だなと思っています。

    誘致で感じた「壁なんてなかった」という事実。

    ――ワイルドナイツの誘致は、どのような想いで進めてこられたのですか?

    新井2019年のワールドカップの開催都市が決まった後に「ラグビーワールドカップ大会課」というのが県庁の中にできました。突然そこに呼ばれまして、ラグビーワールドカップをしっかり成功させるために引っ張られたのかと思ったのですが、当時の課長から「ラグビーワールドカップは、普通にやればうまくいく。そうではなくて、終わった後、熊谷ラグビー場をどう活用するかが我々の仕事だよ」と。そのためにも、パナソニックさんみたいな大きな企業をぜひ県としても呼びたかったのです。

    新井氏 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    飯島2015年ぐらいから4、5年話しているんです。ただ、法律があるし、なかなかうまくいかない。

    新井民間企業のパナソニックを県の公園に呼ぶというのに想像以上のハードルがありました。いろんな法律があって簡単にはいかなかったです。だから、我々「一般社団法人」が間に入って、そこを可能にしていきました。設置許可と管理許可を県からもらってるのが、ラグビー協会です。私たちが管理して、ホテルやクラブハウスや練習場を皆さんに使ってもらってるという仕組みですね。

    飯島話が進む中で「うわ、こんなルールあったら、そりゃ無理だよね」と感じました。相当の熱意と、ある程度覚悟を持って進めていかないといけない。そういう意味ではワールドカップみたいなイベントは追い風になったかもしれないですね。

    ――そもそもチームを誘致すること自体は、とても珍しいことじゃないですか?

    飯島本拠地移転は、プロスポーツの盛んな北米アメリカやヨーロッパではよくある話です。浦和レッズなんかも本拠地移転ですもんね。私たちも元々、大泉町という利根川を渡った先の群馬県の町の工場横のグラウンドで練習していたんです。 土が凍ってしまうようなカッチカチのグラウンドから、芝のグラウンドでやりたいねと隣の太田市に約25年前に移転しました。そして、今は熊谷です。地域には長くお世話になっていたので、事情がわからない方からすれば、なんとなく「裏切られた」みたいな感覚になるかもしれないですね。

    旧グラウンドとさくらオーバルフォートの地図  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    飯島ただ、これだけ素晴らしいラクビー場があるんだから、何市だとか何県だとかあまり関係ないなとも思います。むしろ、ワイルドナイツがいろいろやることで、群馬県や埼玉県、大泉町、太田市、熊谷市がもっともっと地域で盛り上がっていくということを目指しました。また、意外と住んでる方は、こっからこっち、こっからあっちと境界線をひくような考え方は持っていなかったりします。

    後藤今の試合も群馬ナンバーの車がたくさん来られます。太田市さんには感謝してますし、一緒になって盛り上げていこうという気持ちはお互いの市町村が持ち続けていると思いますね。

    スポーツは行政すら動かし、やがて「街と街の橋渡し」に。

    飯島移転の影響は意外なところにもありました。例えば、救急医療。この辺りには、利根川を挟んで川の向こうなのに熊谷市、川のこっちなのに太田市というあべこべな場所があります。それも私たちの移転がきっかけで、県をまたいだ調整がされていきました。

    行政を変える力がスポーツにはあります。例えば教育だとか医療だとか、人の命に関わるようなことはどんどんスポーツを理由に変えていった方がいい。スポーツのいいところは「話しやすい」ことですよね。どっちが得だ損だみたいな雰囲気にならないです。

    極端な話でいくと、群馬から出てくる時に大泉町長と、埼玉に行ったら橋をかけるよう取り合ってくれと言われて、今、話がだんだん具体的になってきています。

    後藤文字通り「橋渡し」になったんですよね(笑)

    一同うまい(笑)

    資料  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    社会課題とリンクして、クラブを地域のインフラに。

    ――ワイルドナイツクリニックは、他のクラブに比べても地域とのつながりが強いですよね?

    小谷野クリニックなんかも地域の中で、うまく機能しています。

    実際にワイルドナイツクリニックへも訪問!事務長の茂木さんにお話を伺うことが出来ました。

    茂木
    茂木

    ワイルドナイツクリニックの茂木です。ワイルドナイツクリニックでは、選手がちょっと怪我したりした時、診察したり、リハビリしたりと活用してもらっています。 MRIや、脳波とか、いろんなシステムも揃っています。あとは、熊谷市役所と連携をとって、保健センターとも契約を結んで、 70歳以上のおじいちゃん・おばあちゃんを対象に2階のリハビリセンターで一緒にトレーニングをしていただいてます。
    いまだに皆さんに「スポーツ選手のためのクリニック」だと勘違いされていますが、本来はワイルドナイツのスポーツ選手の経験や知識を一般の患者さんたちに提供したいという目的で作らせていただいきました。
    実際には患者様の8割、9割ぐらいは一般の方です。地域の方のためのクリニックというのを提供させていただいています。
    ただ、もちろん選手も来るので、普通に選手と患者さんが会ったりします。一般の人からも、スポーツ選手が処置してもらってるところで診療してもらえるというのは評判がいいです。医療の面でも、クラブが地域とうまくつながっていけているように感じます。

    ワイルドナイツクリニック | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    上段:1階の様子。診察室には、ラグビーのピクトグラム。
    下段:2階にはトレーニング設備と、広大なリハビリスペースも。

    ――これからのさくらオーバルフォートの構想はありますか?

    小谷野元々、飯島GMとはクラブハウスやホームスタジアム、それとラグビー振興のために、全国の中学生、高校生が合宿できるような合宿施設。これらは欲しいよねと話していました。ただ、まだ実現できてないのがプール。プール施設が欲しいよねとは常々話しています。

    飯島特にラグビーのような興業としてなかなか成り立たないスポーツが、その地域に持続的に残るためには社会課題とリンクしなければいけないと思います。その時に私が考えてるのが「健康」と「教育」。そこで「プール」という考え方がある。リハビリするのにプールは必要だし、年配の方の日々の運動にも必要。教育の観点でも、プールの維持費が学校負担では大きすぎて、地域一括でまとめてしまおうという流れがあります。そういった社会課題とリンクしてワイルドナイツが解決しながら、生活に溶け込んでいけば、クラブが地域のインフラになっていくんです。

    外観 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    後藤合わせて、部活動の指導ができない先生も増えてきているので、地域スポーツの指導をワイルドナイツさんにもお願いしています。

    飯島実際、新井さんにお願いして中学のユースチームを熊谷、あともう一つ埼玉県の中で作ろうということで、4月から準備しています。

    後藤男子はワイルドナイツが、女子はアルカス熊谷が。学校の授業でタグラグビーを教えたり、地域の体育の授業をひとつ持たせてもらったりもしています。

    ――すごいですね。「地域×スポーツ」のモデルケースになりますね。

    飯島全てがうまくいっているわけではないですが、自分たちが生き残っていかなきゃいけないという課題と、世の中を変えていきたいという欲求とをうまく両方叶えていけたらいいなと思ってやっています。

    左から新井氏、飯島氏、後藤氏、小谷野氏  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    Profile

    エレクトリックワーク社 マーケティング本部 スポーツビジネス推進部 小谷野 勝衛氏  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    小谷野 勝衛(こやの・かつえ)

    エレクトリックワークス社 マーケティング本部 スポーツビジネス推進部
    ナショナル住宅パナホーム(株)1980年入社。2018年より、EW社スポーツビジネス推進部として全国47都道府県の行政とプロアマチームを中心にスタジアム、アリーナ等の弊社商材のご提案含めたコンサル等に従事。
    私のMake New|Make New「一期一会」
    一生涯にただ一度会うかどうかわからぬほどのご縁。出会いを大切にする事で、類が類をご紹介頂き我が人脈が最強の武器になる事。

    パナソニック スポーツ株式会社 埼玉ワイルドナイツ 飯島 均 氏  | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    飯島 均(いいじま・ひとし)

    パナソニック スポーツ株式会社 埼玉ワイルドナイツ
    86年三洋電機株入社。大東文化大学4年の時に大学選手権で優勝を経験。96年から99年まで三洋電機ラクビ―部の監督を歴任。その後、ラクビ―日本代表のコーチも務める。2005年から2007年まで三洋電機ワイルドナイツのコーチを歴任、2008年より再び監督に就任。在籍期間中、日本選手権では3連覇、2010年にはトップリーグ初優勝。2011年よりGMを務め、埼玉パナソニックワイルドナイツとして、2021年のジャパンラクビ―フットボール選手権優勝、2022年ラクビ―リーグワン初代チャンピオンとなる。

    熊谷商工会議所 後藤 素彦 氏 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    後藤 素彦(ごとう・もとひこ)

    熊谷商工会議所
    大学卒業後、ゴトーグループに入社。熊谷青年会議所、日本青年会議所副会頭を歴任。埼玉県、北部振興地域・行政等の指定企業として、地元優良企業として評価され、NPO法人エコネットくまがや代表幹事など熊谷市の要職も務める。現在は、熊谷商工会議所で副会頭、ワイルドナイツサイクルステーション&カフェの経営や全国初のパナソニック電動アシスト自転車専門店第一号店のオーナーでもある。

    一般社団法人埼玉県ラグビーフットボール協会  新井 均 氏 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    新井 均(あらい・ひとし)

    一般社団法人埼玉県ラグビーフットボール協会
    行田工業高校時代、埼玉県代表として全国大会が行われる花園へ。筑波大学でもラグビー部に所属。大学卒業後は公立高校の教員となり、ラグビー部の監督も務め花園を目指す。高校日本代表コーチ、U19日本代表監督などを歴任し、教員生活23年間で、花園出場4回、国民体育大会優勝2回、準優勝1回を生徒と共に果たした。現在、埼玉県ラグビーフットボール協会で理事長 兼 事務局長を務め埼玉県内のラクビ―の普及・強化に努めている。

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