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整った自分でいるために、なにができる?料理家・もあいかすみの「自炊のスタンダード」

新しい自炊のスタンダード | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

パナソニックのさまざまな「Make New」を発掘しているMake New Magazine(以下、MNM)編集部が、もっと知りたい、話したいトピックをその道のプロにうかがう企画「Make New Studies」。今回は「新しい自炊のスタンダード」がテーマです。

仕事に家事、育児……忙しい毎日の中で、家族や健康のためになるべく自炊をしたいけれど、手抜きせざるをえなくて罪悪感を覚える。そんな悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。

これまでパナソニックは、キッチン家電を通じて「おいしさ」や「手軽さ」、そして「つくる喜び」を届け、生活者の「自炊をする」という選択に応えてきました。けれど生活や調理の選択肢が多様になった今、そのスタイルも価値観も大きく変わろうとしています。

だからこそ、私たちは「何をもって自炊とするのか」「自炊は誰のために、何のためにあるのか」をあらためて問い直すことで、自炊の今とこれからを支えていきたい。そして「食べること」を支える家電メーカーとして、自炊にまつわるあらゆる悩みや選択肢に寄り添いながら、一人ひとりが自分らしい選択をできるようにサポートしたい。そんな想いから、この企画が生まれました。

今回は、多忙な会社員時代にInstagramに投稿しはじめた「忙しい人のための簡単・時短レシピ」が人気を博し、現在はフォロワー100万人以上からの支持を得ている、料理研究家・管理栄養士のもあいかすみさんにインタビュー。便利なアイテムの活用法から、自炊との向き合い方まで、今の「自炊のスタンダード」について一緒に考えます。

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    編集部がお話を聞かせていただいた、料理研究家・管理栄養士のもあいかすみさん | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    編集部がお話を聞かせていただいた、料理研究家・管理栄養士のもあいかすみさん

    「ちゃんとしなきゃ」がプレッシャーになる、自炊という日常

    健康のため、節約のため、家族のため。自炊をする理由はいくつもあるけれど、毎日の生活のなかで「ちゃんとつくらなきゃ」と思えば思うほど、気が重くなる。

    手間をかけることが愛情だと思われがちな中で、「市販の惣菜に頼るのは罪悪感がある」「冷凍食品だとよくない気がする」といった小さな迷いが、私たちを縛っているのかもしれません。

    忙しい毎日でも、自分や家族が気持ちよく過ごせる「ちょうどいい」バランスのとり方とは?
    編集部では、日々の自炊に向き合いながらも、「無理をしない」という姿勢で多くの人から共感を集めている料理研究家・もあいかすみさんにお話を伺いました。

    料理が「好き」から「義務」に変わった瞬間

    ――もあいさんは、いつから料理が好きだったのですか?

    もあい小学生くらいの頃から好きでしたね。自由研究でオムライスの研究をしたこともあり、いろいろ配合を変えて、どうしたらふわふわの卵ができるのかなって考えていた思い出があります。

    ――その頃からすでに、料理に対する好奇心が強かったんですね。

    もあいとにかく食いしん坊だったんです(笑)。美味しいものを食べたいって気持ちが大きかったですし、「素材から料理になっていく」過程を見るのも楽しかったんだと思います。それこそ卵だって、最初は液体なのに、火の入れ方次第でいろんな固さや食感に変わる。おもしろいですよね。

    2025年4月21日にもあいさんのInstagramにてアップされた投稿 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    ――「料理は科学」ともよく言いますよね。では、今も日々の自炊は楽しんでいるのでしょうか?

    もあいそれが、やっぱり日々の自炊は「義務」という意識が強くなってしまって。だから、とにかく無理せずにつくることをずっと大切にしています。独身の頃は、いかに効率的にエネルギーと栄養を摂取するかを重視して、洗い物が出ないように保存容器やフライパンのまま食べていたこともありました。

    趣味として料理に向き合えるのは、休日に時間があるとき限定ですね。たまには自分の好きなものだけをつくってみようと思ったり、ちょっと大きなスーパーに行って見かけない食材にワクワクしたり、「義務」や「役割」から離れることができてはじめて、料理の楽しみを思い出します。

    完璧じゃなくていい。自炊は「自分のペース」で

    ――もあいさんがInstagramで発信しているレシピも、無理せずにできるものが並んでいます。

    もあい私自身、最近子どもが生まれたのですが、ますますやらなきゃならないことが増えて、自分のペースで物事を進められなくなって。だから、以前は投稿するレシピも「完璧」を目指していましたが、「そうじゃなくていいんだ」と考え方を変えました。失敗したり、お惣菜に頼ったり......完璧じゃない姿をお見せすることで、フォロワーさんも「これでいいんだ」と気楽になってくれるかなと思うんです。

    2025年4月21日にもあいさんのInstagramにてアップされた投稿 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    2025年4月21日にもあいさんのInstagramにてアップされた投稿(画像はもあいかすみさんのInstagramより)

    ――「無理せずにできる」以外に、大切にしていることはありますか?

    もあい二つあって、一つ目は、栄養バランスをなるべく整えることです。極端な話、毎日おにぎりだけでは、エネルギーは足りても栄養素は足りていません。

    私自身、高校生の頃に重度の貧血になってしまったことがあって。一時期は少し階段を上るだけでもつらい状態だったのですが、栄養に気をつけるようになり体調が改善したら、「生きているのが楽しい!」と思えるほど、気持ちまで明るくなったんです。

    栄養の大切さって困らないとなかなか身に染みてわからないものですが、私はこのときに、日頃から栄養をしっかりとって、体調を整えておくことの大切さを実感しました。それからは日々の自炊でも、レシピ発信でも気をつけています。

    ――栄養を考えなきゃと思いながらも、どこまでできていればOKなのかがわからず、不安になる人も多いと思います。

    もあいたしかに栄養って難しいイメージがあると思うのですが、基本的にはいろんな食材をバランスよく食べていけば整うようになっているので、あまり細かく気にしすぎなくていいと思います。たとえば、忙しくて副菜をつくる余裕がなければ、肉や魚の主菜にちょっと野菜を入れてみるとか、小さな工夫で大丈夫。私が発信しているレシピも、そういう考えでつくっています。

    もあいさん自身が運営するレシピサイト「MOAI's KITCHEN」で紹介された、ほったらかし鶏の照り焼き | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    もあいさん自身が運営するレシピサイト「MOAI's KITCHEN」で紹介された、鮭ほうれん草のクリーム煮 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    もあいさん自身が運営するレシピサイト「MOAI's KITCHEN」で紹介された、ほったらかし鶏の照り焼きと、鮭ほうれん草のクリーム煮(画像提供:もあいかすみ)

    ――もう一つ大切にしていることは、どんなことですか?

    もあいこれは特にレシピを発信するうえで意識していることですが、最近は食材費が高騰しているので、なるべくコストを抑えるように考えています。たとえば、数年前にSNSで流行った「麻薬卵」だったら、一般的には長ネギを使うレシピが多いと思うのですが、私が最近Instagramで投稿した際は食材費を考えて玉ねぎにしてみました。

    もあいさんのInstagramの投稿の中でも、特に人気だという麻薬卵のレシピ | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    もあいさんのInstagramの投稿の中でも、特に人気だという麻薬卵のレシピ(画像はもあいかすみさんのInstagramより)

    ――「無理せず自炊したい」と思う反面、「自炊はこうあるべきだ」という固定観念に悩まされることはありませんでしたか?

    もあいありましたね。結婚したばかりの頃は、夫に出すパスタをレンジで茹でるのになんとなく抵抗があって避けていたり......。でも、あるとき試しにやってみたら、「今までのパスタでいちばん美味しい」って言われたんですよ(笑)。

    そのときに、「頑張り」と「味の評価」はイコールじゃないんだなと気づいたんです。しかも、鍋で茹でるより電子レンジで加熱したほうが栄養素が壊れない野菜もあったりします。手間をかける「過程」より、美味しくて栄養がとれる「結果」を重視するようになりました。そのためには、「頼れるものはなんでも頼る」精神が大切だと思います。

    取材中のもあいさん | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    「頼れるものは、どんどん使う」

    ――たとえば、どんなものに頼っていますか?

    もあい王道中の王道ですが、やっぱり電子レンジがなかったら生きていけないですね。電子レンジって、さまざまなオート調理メニューがついているものも多いのですが、あまり活用されている印象がなくて。ただ、使ってみると本当に便利なんですよ。以前、グリル機能で塩鮭を焼いたときは、まるで旅館の朝ごはんみたいにカリッとふっくら仕上がって、あまりの美味しさに感動しました。

    使ったことがないと、日々の料理に「使おう」という発想がなかなか出てこないと思うので、ぜひ一度あらためて説明書を見ながら開拓してみてほしいです。意外とハマるメニューがみつかると思いますよ。

    あとは、最近食洗機を導入したのですが、やはり自炊の強い味方だなと実感しています。後片付けが時短できると、そのぶん家族団らんの時間がとれる。それに私は、食器や盛り付けまで含めてかわいい食卓ができあがったときにテンションや自己肯定感が上がるので、洗い物が増えることを気にせずお気に入りの器を使えるのはとてもうれしいです。

    「ちゃんと汚れが落ちるのかな?」という不安もありましたが、手洗いよりも高い水温で洗ってくれるのもあり、しっかりピカピカです。それに、手洗いをしなくなったことで、ずっと悩んでいた手荒れが治ったという副次的な効果もありました。

    ――手間を省くための商品としては、カット野菜や下処理済みの冷凍野菜などもあると思います。もあいさんはどのように付き合っていますか?

    もあいめちゃくちゃ使ってますよ! 野菜を洗ったり切ったりするのって、それだけで大変ですよね。市販のサラダでも、たとえばお気に入りのお皿に盛り付けて、温泉たまごをのせたりして、ドレッシングをかければ立派な一品に仕上がります。

    ほかにも、たとえばスーパーで味付け済みの肉や魚を売っていたりしますよね。フライパンでそれを焼いている横で、冷蔵庫に残っている野菜を一緒に焼いて出すだけで、十分「自炊」と言えると思います。

    取材中のもあいさん | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    ――肉や野菜などと一緒に炒めるだけで一品できあがる「おかずの素」もありますが、「これは自炊と言っていいのだろうか」「自分好みの味にしたくて自炊をしているのに、本末転倒じゃないか」といろいろ考えてしまう方もいると思います。

    もあいおかずの素も、立派な自炊だと思います! もしモヤモヤするなら、基本はレシピどおりにつくりつつ、野菜を一種類足してみたり、最後にちょっと胡椒やラー油をかけてみたりすれば、自分好みの味にできますよ。何か一工夫を入れることで、より胸を張って「私の料理」って言えると思います。

    自炊かどうかより、自分が整っているかどうかを大切に

    ――たしかに、そうすればラクをしつつ自分の好きな味にできるので、より満足できる気がします。「なんでも活用していいんだ」とハードルを下げつつ、最小限の手間で「自分の満足」を追求してみるといいのかもしれないですね。

    もあいそうですね。たとえばさっき私が「お気に入りのお皿」と言ったのは、私自身が食器にこだわるタイプだからです。でも、人によっては、「私の料理」と言えることが大事という人や、品数が多く見えるとうれしい気持ちになる人もいるかもしれない。自分の満足できるポイントがどこにあるのかを見極めて、なるべく手間をかけずにそれを叶えてあげられるといいですね。

    もあいさんの自己肯定感があがる、食卓の写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    もあいさんの自己肯定感があがる、食卓の写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    もあいさんの自己肯定感があがる食事の写真(画像提供:もあいかすみ)

    ――もあいさんが「ここからは自炊」というラインを設けるとしたら、それはどこですか?

    もあいこれは完全に私の考えですが、「買ってきたお惣菜を皿に盛って出す」だけだと、まだ自炊とは言いにくいのかなと。でも、たとえばそこに野菜をチンしてのせたり、ハムを切って混ぜたり、そういった「自分なりの一工夫」をほんの少しでも差し込ませることができれば、それは自炊だと思います。

    ――そう考えると、温泉たまごやかにかま、クルトン、キムチ、納豆、海苔などなど、スーパーで売っているいろんな食材が「プラスワン」に使えそうですね。

    もあいでも、そもそも「自炊であるかどうか」にこだわる必要はないと思います。疲れている日は、買ってきたお惣菜をそのまま食べるだけで全然いい。自炊はやれるときにやれたらそれでいいんです。

    取材中のもあいさん | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    ――自炊そのものが目的なのではなく、ハッピーに暮らすために自炊があるということですね。

    もあいそれに、何が「手抜き」かは時代によって変わりますよね。たとえば今の時代に、洗濯板の代わりに洗濯機を使ったからって、誰も「手抜き」とは言わないです。それって、時代を経て洗濯機を使うことが「あたりまえ」になったからですよね。

    調理家電ならたとえば、朝に食材を入れてタイマーをセットして出かけると、夕方にできたてが食べられる電気圧力鍋などもありますよね。まだ調理家電が進化している過渡期なので、こういったものに頼ることを「手抜き」と感じて罪悪感を覚えてしまう人もいるかもしれません。

    でも、ちょっと未来に目を向けたら、それがきっとスタンダードになるはず。だから自分が「頼れる」と思うものは、堂々と使っていいんじゃないでしょうか。

    ――あらためて、自炊の固定観念から解放されるコツを聞かせてください。

    もあい自分自身のためにも家族のためにも、「整った自分でいる」ために頑張らない工夫を大切にしてほしいなと思います。時短料理によって生まれた時間は、自分のリフレッシュとか、家族とのリラックスとか、「自分にとってより大切な物事」に使えるようになります。そして、時間の使い方は、そのまま人生の生き方につながる。だから、自分の大切にしたいものを優先するためにも自炊は無理をしない工夫をして、自分らしく生きてほしいと思います。

    編集後記

    私はキッチン家電の宣伝を担当しているのですが、日々働きながら料理と向き合うなかで、料理をすることへの義務感や簡単な自炊に対する後ろめたさを感じていました。今回、もあいさんのお話を聞き「自炊において自分が満足できるポイントってどこだろう?」と考えるきっかけをいただきました。

    「自炊」は、自分で炊事をすること。本来どこに手をかけて、どう工夫するか自分で選べるはずなのに、「せっかく作るなら...」と、仕上がりばかりにとらわれていた気がします。
    でも、その日の気分や状況に合わせて、もっと調理家電や時短レシピに自由に頼ればいいんだ、とハッとしました。私は味つけや栄養さえ守れたら、手段や見栄えにはもっと柔軟でいたいなと思えるようになりました。自炊は0100かではなく、気楽に続けられることが大切。その選択の幅にこそ、自分で作って食べる価値があるのだと思います。


    Make New Magazine編集部 井上和

    Profile

    もあいさんのプロフィール写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    もあいかすみ

    栄養系の大学を卒業後、食品メーカーに就職。全国チェーンのレストランや量販店など、幅広い業態のメニュー開発を手がける。その後、食品領域の広告プランナーとして勤務。忙しく働きながら自炊してきた経験と、管理栄養士の資格を生かして、料理家研究家として独立。Instagramで紹介している、「働く人のための簡単時短レシピ」が大好評。

    • 取材・執筆:原里実
    • 撮影:安島晋作
    • 編集:MNM編集部、玉野井崚太(CINRA)

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