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Ipsumの4つのプロセス
パナソニックの新規事業創出活動Game Changer Catapult(以下、GCカタパルト)のビジネスコンテストに参加し、事業化に向けて取り組んでいる山崎です。私たちは発達に特性があるお子様とその家族によりそう新しい教育サービス「Ipsum(イプソマ)」を考えました。
今回は「Ipsum」のサービス概要や考案のきっかけ、プロジェクトに込めた想いなどについて紹介します。
発達に特性があるお子様たちの可能性を引き出し、活躍できる社会に
「Ipsum」は、発達障がいなどの発達に特性のあるお子様の強みを伸ばす教育システムです。
具体的には
1. 診断テストを用いてお子様たちの強みを見つける。
2. お子様一人ひとりに合ったおもちゃの提供や、ワークショップの提案。
3. お子様たちが遊ぶ様子を撮影し、社内独自技術を用いて感情などを分析。
4. 教育に悩んだ際、専門家に相談できる窓口の設置。
以上4つのプロセスです。それぞれ独立しているようにも見えますが、私たちは全てを体験してサイクルを回すことで、より強い支援ができ、長期間にわたって寄り添えると考えています。
強みを伸ばし、不安を解消できるソリューションに
私たちはまず、障がいなど特性のあるお子様の場合、将来に不安をもつご家族が多いのではと考えました。そして発達に特性があるお子様を持つ親御様を中心にヒアリングを開始。親御様へのヒアリングでは、程度の違いはあれど「授業に集中できず、突然立ち上がる」「友達とうまくコミュニケーションが取れない」といった特徴があり、なかなか周囲に溶け込めず、孤立するケースもあることがわかりました。そのような特性をもつお子様の子育てが初体験の親御様は多く、周りに相談できる人もおらず先が見えない状態で、お子様の将来に対して不安を感じていることもわかってきました。
一方で、お子様には、誰でも性格やスキルの強みがあります。しかし、弱みばかりに注目が集まり、強みを伸ばす機会やサービスは少ないのが現状。お子様たちは、成長期に自身の強みを活かした成功体験を得る機会が少なくなり、それは非常にもったいないことだと思いました。
そこで私たちは、お子様たちの強みを見つけて伸ばすことで将来の自立を支援し、親御様に安心感を与えながらも不安があればすぐに専門家へ相談できるようなソリューションを構築しようと考えました。
実証実験で感じた教育への関心の高さ
現在は、発達に特性がある就学前から小学生までのお子様たちとその親御様を対象に、実証実験を行っています。お子様の年齢層を低く設定したのは早い段階で最適な教育を提供することが重要であると考えたからです。
実証実験では先述した4つのサイクルを、疑似的に体験していただいています。
実験段階からでも有償で参加したいといった要望があるなど、親御様は我が子の教育に強い関心を持っていることがわかりました。
また、おもちゃやワークショップをお子様自身が楽しくないと判断して続けなかった場合、親御様の満足度も上がらないということもわかりました。集中力が続かないお子様も多くいるので、勉強といった難しいものではなく、まずは、いろいろな遊びを体験してもらいながら、分析を重ねて一人ひとりに合った方法を提案したいと思っています。
今も引き続き、親御様や専門家、そしてサービスを体験したお子様たちからも意見をいただきながらブラッシュアップを続けています。
障がいの有無に関わらず、一人ひとりが輝ける社会へ
もともと発達に特性があるお子様たちに着目したのは、私の弟がダウン症で身近な存在だったからです。例えば私の弟がいきなり民間企業に就職し、みなさんと同じように働くことは、今の社会では難しいと思います。でも、もう少し軽度であったり、知的ではなく発達に特性がある場合であれば、より選択肢が多く、社会に出て十分に活躍できると、可能性を感じました。しかし、多くの親御様は、将来の見通しが立たず、不安になられている。そのような方々を支援し、将来は大丈夫ですよ安心してくださいと伝えたい、というシンプルな動機でした。
「Ipsum」を通して、発達に特性があるお子様たちが持つ無限の可能性を引き出し、イキイキと活躍できるような社会づくりに貢献できれば、と考えています。
これまでアプローチ方法などをブラッシュアップしてきましたが「お子様たちの強みを生かしたい」という想いは変わっておらず、メンバーもこのコンセプトに共感してくれています。
最初は、個人的な体験から始まった新規事業創出活動ですが、GCカタパルトのビジネスコンテストを通して同じ志を持つ仲間に出会えました。それぞれ全く違う職場で働いていた仲間ですが、今まで知らなかった熱い想いに共感し、課題解決への想いもより強まりました。また、顧客の生の声を聞きながら自分の想いを形にできるというのも、新規事業でしかできない体験だと思います。
人にはそれぞれ長所と短所がありますが、強みを生かした方が人は輝けることが多いと思います。
例えば、今回の新規事業とは別に、本業の仕事をチームでしていても、個々のポテンシャルを最大限発揮できている状況は意外と少ないと思います。これは、障がいのあるなしに関係なく、多くの企業に共通した課題だと感じます。個々のポテンシャルを発揮できるようにすることで、個人がイキイキと輝きながら、同時にもっと良い社会を実現できるのではないでしょうか。
「Ipsum」が広まれば、個性を活かすということ自体が社会全体にも波及していくのではないかと考えています。そうすることで、障がいの有無に関わらず互いの得手不得手を補い合い、リスペクトできる関係性が構築され、D&I(ダイバーシティインクルージョン)社会の推進にもつながります。多様性により生み出す提供価値を増やすことで、業界に関わらずどんな企業でも企業価値・社会的価値を高めることができる、私たちはそんなビジョンを思い描いています。