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こんにちは。聴覚障がい者が外出時に感じる不安を解消するソリューション「コデカケ」のリーダーの松田です。私たちは、パナソニックの新規事業創出活動Game Changer Catapult(以下、GCカタパルト)のビジネスコンテストに参加し、現在4名でプロジェクト実現に向け取り組んでいます。今回は、「コデカケ」の概要や考案のきっかけ、このプロジェクトに込めた想いなどを紹介します。
聴覚障がい者が「気軽におでかけ」できる未来に
「コデカケ」は、聴覚障がい者に向けた外出支援デバイス/サービスです。聴覚障がいのある方は、日常生活において、さまざまな課題を抱えています。聴覚障がい者は補聴器や人工内耳を用いても、健聴者と同様に聞こえるようになるわけではありません。中でも外出時は「後方からの音が聞こえない」「周囲の雑音も含めて音が拡大される」「不得意な音(周波数)がある」といった問題があり、困っている方が多くいます。特に後方から迫る車や自転車は、身に危険を及ぼす可能性があります。
また、行ったことのない場所に出かける際は事前に安全なルートを調べる手間もかかり、その結果、外出が面倒になることも多いようです。
さらに子どもがいる聴覚障がい者は、自分の安全だけでなく子どもにも注意を向けなければならないため、気疲れしやすかったり 、コミュニケーションが取りづらいという問題も抱えていることがわかりました。
そこで私たちは「外出時に後方からの接近を察知するデバイス」と「好みのルートを提案・案内するサービス」という2つのソリューションでこれらの課題を解決できないかと考えました。
移動中に聴覚障がい者が安全に対処できる時間を確保、そして複数のルート提案と案内。
外出意欲の低下を防ぎ、今まで行ったことのない場所でも気軽に行ける、「ココロおどるおでかけ」ができる未来を目指しており、「コデカケ」という名前の由来にもなっています。
現在は、プロジェクトの核となるデバイスに重点を置き、小さな子どもを持つ聴覚障がい者にターゲットを設定して開発を進めています。
聴覚障がい者にヒアリングを繰り返し潜在的なニーズを引き出す
アイデアが生まれたのは、職場にいた聴覚障がいのある方が、よく浮かない顔をしているのを見かけていたのがきっかけでした。声をかけると、日常生活において困っていることが次々と出てきます。幼少期から我慢や努力で対処を続けていたことを知り、解決法があるのではないかと考え始めました。
当初私たちは、聴覚障がい者が家の中で抱える問題に着目していました。インターホンが鳴っているのに気付けなかったり、体の調子が悪くて泣いている赤ん坊の発見が遅れるといった出来事があると知ったからです。
しかし、ヒアリングを重ねていくと実は家の中での音の問題は発生頻度が決して多くはなく、また一部課題に対しては既存のサービスもあり、積極的に金銭負担をして解決したいと思っていないことがわかりました。そこでより解決価値がある外出時の課題に方向転換しました。
ヒアリングは、口話ができる聴覚障がい者を中心に行いました。日常の困りごとを吸い上げ、共通する項目を見つけながら課題を抽出しました。
私たちは、手話ができるわけではないので、ヒアリングが健聴者が相手である場合よりも難しく、細かなニュアンスまで伝わるのか不安がありましたが、極力伝わりやすいよう努め、結果、潜在的なニーズにも気付けたのだと思います。また、オンラインでのヒアリングだったため、字幕やチャットを活用することができたのもプラスに働きました。
デバイスに価値があることを実感した実証実験
現在、「コデカケ」はプロジェクトの核となるデバイスの開発を進めるにあたり、実証実験を行っています。
デバイスは2つあり、1つは移動中に首から掛けてレーダーで後方からの接近物を検知するデバイス。もう1つは振動で接近してきたことを通知する、手首につけるデバイスです。検知する距離に関して、近過ぎると安全に対処できる時間を確保できず、逆に遠過ぎても歩行に集中できないため、調整に苦労しました。現状は車なら20メートル、自転車なら10メートルの距離で検知するよう設定していますが、ヒアリングや実験を重ね、改良していく余地があると思っています。
実証実験では、ターゲットである子どもを持つ聴覚障がいがある方に、デバイスを装着してもらい、一時間ほど散策をしていただきました。
その方は実験を楽しみにしており「急に自転車が来たときに役立った」「後ろを気にしないだけでこんなにも楽なんだと知った」など、喜びの声をいただきました。余計な不安や緊張が取れることで、自然と親子の会話が増えることもわかりました。
一方で新しい課題も出てきました。検知デバイスを首から掛けることで周りの視線が気になるといった声もあり、UXの観点からデザインをブラッシュアップする予定です。通知デバイスも交通量が多い道で頻繁に振動すると、ストレスになるため、検討が必要とわかりました。
しかし、お金を払ってでもデバイスを使いたいという声もいただけ、改めて「コデカケ」の価値や意義を再認識できました。
世間が聴覚障がい者に関心を持ち、健聴者と同等の生活を送れるようになるまで
実験を繰り返しながら得られた成果をデバイス開発に反映させ、今後はルート提案・案内サービスとの連動も進めていく予定です。
デバイスに関しては、買い切り型だけではなく、常時必要ではない方に向け、シェアリングサービスでの展開も視野に入れています。
「コデカケ」は、聴覚障がいのある方が気軽に外出できるようサポートする社会的意義のあるサービスですが、これはあくまで第一歩に過ぎません。
リサーチの過程で、専門家の方とも話をしましたが、聴覚障がい者はさまざまな課題を抱えています。聞こえないことが日常のため、慣れでストレスを感じていない部分もあるようですが、今回のように潜在的なニーズがまだあるはずです。
ヒアリングをする中で、私たち自身も聴覚障がい者に対する理解が浅いことを思い知らされました。
「コデカケ」は現在、4人で活動をしています。メンバーの中には聴覚障がい者もおり、自身の体験を踏まえながら意見・評価をくれています。それ以外にも技術面の検証やUXデザインなど、それぞれに役割があります。
もちろん、専門知識があるに越したことはないですが、私自身もUXを踏まえた開発や、聴覚障がい者への理解は、プロジェクトを進めながら深めていきました。
もしパナソニックでリーディングカンパニーとして「コデカケ」が実現できれば、聴覚障がい者に対する世間の関心度も高まるでしょう。
聴覚障がい者と健聴者が同等の暮らしを送れるような社<会の実現に向けて、これからも取り組みを続けます。