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2022年の5月に立ち上がったDEIコンサルユニット「ふつう研究室」。#ThinkYourNormal を掲げ、社会のジェンダー/世代をはじめとする多様性社会における組織・企業・サービスのあり方をデザインの視点から追求しているユニット(東江麻祐 / 白鳥真衣子)です。
Make New Magazineでは、「ふつう研究室」の二人と、社会課題にアプローチする広告コミュニケーションなど、クリエイティブ・アクティビズムを掲げて活動されているarca代表の辻愛沙子さんをゲストに迎え、「ふつうってなんだろう、会議」を開催しました。この社会に点在し、個人に押し付けられる「ふつう」という言葉について語りつくしてもらいました。今回は、そのトークレポートという形でお届けします。
「ふつう」という言葉のモヤモヤから生まれた「ふつう研究室」。
白鳥こんにちは。パナソニック株式会社「ふつう研究室」の白鳥真衣子と
東江東江麻祐です。よろしくお願いします!
白鳥「ふつう研究室」は、2022年の5月に立ち上げたジェンダーや世代などを中心とした「多様性社会」における、課題解決をしたり、「一緒に学び考えようよ」と、パナソニック社内に向けて行っているDEIコンサルのユニットです。
東江今回、初のトークイベントの開催で、クリエイティブディレクターでありアクティビストの辻愛沙子さんにお越しいただきました...!
辻辻愛沙子です、よろしくお願いします!
(※それぞれの詳細プロフィールは記事下に)
東江今日は辻さんとともに、社会から押し付けられてしまう「ふつうってなんだろう」っていうことについて話していけたらなと思ってます。
辻日常の中でもよく耳にする、たまにモヤモヤすることがあるキーワードですよね。
私も喧嘩した時とか、つい「ふつうこうでしょ」とか、「こういうのふつうみんな怒るからさ」って言っちゃうこともあるんですけど、やっぱり言われるとすごくモヤっとするし「あ、出た、ふつう!」って言いたくもなっちゃう言葉ですよね。
東江そう、自分で言ってもハッとするし、誰かに言われて「ふつうってなんだっけ...」みたいな。
辻圧倒的正義!、みたいに使われがちですけど、 そもそも「それって本当にふつうだっけ」と思うことも多いし、よくよく考えてみたら「そんなふつうなんてなかった」ってこともあります。
白鳥「ふつうの人」って言いがちですけど、そもそもひとりひとりの「いろんなふつう」の日常があるじゃんっていうのが、私たちの活動の根本の思想でもあります。そんなメッセージを届けたい思いで、昨年「#ThinkYourNormal」という映像を制作しました。
辻当時この映像をみて、いい意味ですごい衝撃を受けました。「よくぞ言ってくれたパナソニック〜」って(笑)
辻出演されている方々も素晴らしくて本当に大好きな映像です。よく仕事の参考として紹介させてもらっていました。クライアントに説明するときに、「こういうことです!」みたいな(笑)
白鳥手前味噌なんですけど、パナソニックって素晴らしい会社だと思っていて、食事のことや睡眠のこと、みんなの生活に便利なものをたくさん届けてるんですけど、だけどもっとジェンダーロールやセクシャリティに関してはアップデートできるんじゃないかって思いがあります。
東江ふたりでよく話してたのは「何カレーが好きか」みたいなノリで「性の話」とかもできるようになりたいよねって。
白鳥キーマカレーもよし、ビーフカレーもよし、ドライカレーもよし、チキンもおいしいみたいな(笑)
辻確かに、性の話を過度にタブー視したり、神格化しているみたいなところもある気がします。本当はあたり前に身近にあるものなのに。少しずつ変わってきましたけどね。それこそカレーの話みたく「いや〜生理がきつくてさ」みたいに話していけたらなって思う。
白鳥社内でも、男性が「生理の話とかをどう受け止めたらいいか分からない」と言われることがあって。男性に限らず「異性の体の話に触れずにきたから、大人になって知らなくて困ることがあった。子どものころに知りたかった」っていう話も聞きました。そういう意味でも、もっとフラットに話せれば、お互いにいいんじゃないかなって。
東江初めはみんなが何に悩んでいるかアンケートをとって。どういうことにみんな興味があるんだろうね、会社で何ができるんだろうって話すところから始まりました。
白鳥その中で、やっぱり「ふつう」って言葉にモヤモヤするなとか、違和感があるなってことで、#ThinkYourNormal という言葉で社会に問いかけたり、新たに立ち上げたユニット名も「ふつう研究室」にしました。
辻動画の中でも、同性愛のカップル、独り身の人、そうじゃない人もいて、どんな人もあたり前に登場している。逆に何かを特別視したりしない、あくまで日常として描いている安心感がある。
それをみた前提で「ふつう研究室」って言葉を聞いたので、ふわっと使っちゃってる「ふつう」という言葉や概念を因数分解していって、それで分解してみたらみんな当然違って、「ふつうなんてものはなかった」みたいな結論にいく研究なのかなって思ってました。
白鳥そうですね。それも一つの答えとしてあると思います。
ふつう研究室はどちらかというと、その過程というか。先ほど見ていただいたムービーの、『普通の反対は、異常じゃない。また別の普通』というコピーみたいに、多様なふつうのあり方や多様な視点のあり方を掘る活動をしています。コンサルユニットと名乗っていますが、一方的な提案というより、いろんな人に参加してもらって、一緒に考えてもらうことで、それぞれの中のふつうに対するバイアスや認識のアップデートができればと思っています。
その結果会社としての指針だったり、コミュニケーションの取り方だったり、商品の在り方っていうところとか。お客様とのタッチポイントを、スタンスをもってアップデートしていく企業になることを目標にしています。
ジェンダーや、世代、暮らしている地域、心身の特徴とかいろんな視点を掘って、多様性を考えています。といっても、多様性は人の数だけあるので、まず今年はジェンダーと若者を中心とした世代差にフォーカスをして。トレンドリサーチや、ブランディング、コミュニケーションを中心にまずは社内コンサルのようなことをしています。
辻よく「会員登録してください」と言われた時に、性別欄が「男女」しかなくて、この「2つの選択肢がない状態」で選ぶのも嫌だなって思ったり。別に誰かを排除しようと思ってやってるわけじゃないけど、計らずしてそうなってしまっていることって、社会にたくさんある。だから大企業として取り組む事はものすごく意味があることですね。
東江そうですよね。これは男性向けのプロダクト、これは女性向けのプロダクトというように「ステレオタイプ」があったり。プロダクト自体やタッチポイントごとにバイアスを感じる機会がありますね。
白鳥(パナソニックが)ちょっとずつ考え方をアップデートしていけたら、選択肢が増える人が現れたりして、もうちょっと暮らしやすい社会ができるんじゃないかなと思って「ふつう研究室」をしています。
東江副題がPerspective Researchだもんね。
白鳥「ふつう研究室」の横にPerspective Research & Design って書かせてもらって、「視点をもっといろいろ作ろう」というようなことを掲げています。例えば、幼少期から日常的な出来事として、性について考えたり話をしたりするようなスタイルにした方がいいんじゃないかって思いから絵本を作ったりも。
「YOUR NORMAL ゆあ のーまる きみを かんがえる ほん」
東江小さい頃に「性について話す機会」がなかったから、自分もあまり知らないし、自分が大人になった今、子ども世代にもお話しできないんじゃないかと思って。
辻確かに、性の話って親子の間でも触れない方がいいのかな、興味持ち始めちゃったらどうしようってなりがちだから。話すこし変わりますけど、この Your Normal, Your Beauty. もいいコピーですよね。
東江例えば、ドライヤーの広告だと、髪の長い女の人がさーってやってるようなものが多いと思うんです。でも本当は男性が使っているビジュアルでもいいんじゃないかとか。その人にはその人のふつうがあると思うので、「その人の美」みたいなのを体現できたらなと。
「みんな違って、みんな......以上!」
辻映像や絵本以外にも、ワークショップとかもされてたりするんですね。
東江そうです。例えば、昨年はある高校から依頼を受けて、「未来の家族に向けたプロダクトの広告を作ってみよう」というお題で、ワークショップを実施したりしました。
白鳥いろんな年代とか、セクシャリティとか、地域とか、さまざまな背景を持つ人たちの「ふつう」をヒアリングしたりしながら、どうすればより届けたいメッセージを、より届けたい人に届けられるかってことを、考えながらつくっていくものです。
辻これまでって、いわゆる四人家族で、あたり前のように男性と女性が結婚して、子どもが二人で...みたいなステレオタイプが存在して。でも今は、昔みんなが思い描いていたような「ふつうの家族」って少数派なんじゃないかって思うんです。
一人で過ごす人、結婚を選択しない人、同性愛の人とか、当然存在しているけど、なかったことのようにされていたり。お二人は社内でコミュニケーション取っていく中で、旧来的な価値観のアップデートが難しいなと思ったりすることってあります?
東江ありますよね。そういう旧来的な価値観も、会社の中にもまだたくさんあるんだろうなとも感じていて。勉強熱心な人が多いので、頭では多様な価値観があるとわかっていても、自分に関わりがあることとしての実感は薄いんだなと。なので、どう自分の仕事と結びつくのかは見当もつかないというか。こういうプロジェクトを進める中で難しいなと思う瞬間もありました。
白鳥私たちの親世代ぐらいまでは、それがスタンダードだったわけで「いきなり変わります」って言われても、「え、どういうこと!?」ってなっちゃうのも当然。だからお互いが「あ、そういうのもありますよね」みたいな感じがいい。「そうならなきゃいけない」とかじゃなくて「まあそれぞれの幸せに基づいてやれたらいいよね」っていうスタンスで対話をすることが大切だなと思ってます。
辻確かに。古い形のふつうを新しいふつうに変えようっていうよりも、これはこれで今も昔も変わらずあって、また別の「ふつうを増やしていこうぜ」みたいな感じですよね。バリエーションを豊かに。
東江どれが間違ってるとか、古いからダメ、新しいからいい、とかそういうんじゃない。
白鳥みんな違って、みんないい。
辻その「みんな違って、みんないい」って言葉すごくいいなと思いつつ、アップデートもしたいなと思うとこもあって。いいとか悪いとかでもない。もはや「みんな違う、以上!」みたいなことでいいなって考えていて。
生きていたら、そりゃ良くない時もあるじゃないですか。だけどちょっとでもいい状態であらなきゃと焦って。結婚も「早くしないと」とか、誰かと比べちゃったり。実態のない幻想みたいなものを追い続けちゃって苦しくなるというのもある気がして。だから、「なんかみんな違うよね。以上」みたいなライトさとか、ゆるさがほしい。
前に誰かが、「みんな違って、みんなどうでもいい」って言ってるのを聞きました。
辻ああ、いい言葉かもしれない。
過干渉すぎるんですよね、今の社会は。この間もパンケーキ食べたくなって「パンケーキ食べたい」ってツイートしたんですよ。そしたら「勝手に食べとけ」みたいな返信がきて(笑)。ちょっとびっくりしちゃって。
冗談みたいに言っちゃいましたけど、でも本当にそういう過干渉ってやっぱりあって、「そろそろオタクの娘さん、そろそろいい年なのに、結婚しなくていいのかしら。」みたいな。
白鳥ステップなのかなって気もしてますね。最初に「こんな人もいるんだね」っていうオプションを知ってもらえば、その人への過干渉は減っていくんだろうな。なので「まずは知ってもらう」っていうフェーズが必要で。
「ふつう研究室」も、「陳腐化してなくなる」っていうのがゴールだと思って活動していて、最終的には私たちの活動が「もうあたり前だからやんなくてよくない?」って消滅したらいいと思う。
大企業らしさ、ベンチャーらしさ。組織を変えていこうとすること。
辻それこそ「大企業らしさ」というようなステレオタイプもある気がします。でも今日はおふたりともすごい髪色がハイトーンで可愛い。
東江・白鳥ありがとうございます!
辻大企業っていうと、みんな黒髪で、スーツで、年功序列なイメージがあったり。でもお二人のような方に会うと、自分のステレオタイプにちょっとハッとさせられることもあって。
東江「ステレオタイプの大企業です」っていうところも、「ちょっと違う」ところもあります。自己紹介で「本業はデザイナーです」と言いましたけど、パナソニックの働き方にもいろんなオプションがあるってことを知って、社内複業として「ふつう研究室」をやっています。
白鳥意外と挑戦できる道が会社の中にもいっぱいあるんです。
辻能動的に動けば。
白鳥やっぱり会社って大きなシステムでできているので、気をつけないと受動的になっていってしまう。いわゆるステレオタイプを守らないといけないのかなっていう考えにだんだんなっていくんです。
辻なるほど。
白鳥でもやってみたら「できんじゃん!」みたいな感じではある。
辻やってみたら、意外と大丈夫だった。
白鳥そうですね。でもここ最近で変わったんです。例えば前は「ジーパンを履いてはいけない」ってルールもありました。
辻そうなんですか...!
東江変わりましたね。ここ数年で。
白鳥5年ぐらいですかね。「働き方改革」もあったせいか、会社の食堂でジーパン売ります、みんなでジーパン履こうっていうキャンペーンがあったり。
東江急にTシャツの人が増えましたよね。
辻いいですね。いい方向に変わっていく。
白鳥どんどん変わってきている。
逆にベンチャー企業で「こうしなきゃ」みたいなことはあるんですか。
辻うちは自由ですね。それこそ髪型も髪色も自由だし、フルフレックスだから起きる時間とかも気にせず、仕事をやっていればOKという感じです。
私自身、ずっと「ふつう」と距離を置いていて、集団行動が苦手だし、就職活動もしてないんです。大学在学中にインターンを始めて、そのまま入社して、独立したので、なんか逆にみんながやってることをやってない、それを知らない寂しさもあったり。
白鳥逆に大企業だからこそ、こうした方がいいよ、こうして欲しいっていう期待とかはありますか?
辻「大企業だからこそ」ってすごくある気がします。関係人口が多かったり、 関係するプロダクトも多かったり、ベンチャーからすると規模がぜんぜん違ったり。だから「明日の儲け」には繋がらないかもしれないけど中長期的に、社会的に意味があって...、会社にとっても意味があって...ということから「ふつう研究室」みたいな取り組みができたりする。
だけど逆に、ひとつのイシューに旗を立てるみたいなこと難しいんだろうなというのも、いろいろな企業と話していても思います。私たちは小さい分、「こういうことを大事にしたい」っていう旗を掲げやすい。自分たちの意志とか、思想とか、スタンスみたいなものをシャープに打ち出せます。だから、うまくそういうところを大企業に使ってもらえたらいいなって思うんです。
白鳥ぜひ!私は、良くも悪くも、大きな企業一社が頑張るチャンスは減ってきたのかな思っています。うまく一緒にやってくれる人を募って、それぞれが得意な分野で協力し合った方が、結果的に得られる効果が大きいんじゃないかな、って。
東江コラボ時代。
白鳥はい、幕開けということで。
辻大企業だと何レイヤーにわたって印鑑で承認をとって...っていうイメージがあります。
例えばプロジェクトが進んでいる中で「この視点から見たら、こういう人たちを置き去りにしてない?」「目の見えない方のユーザービリティ悪くない?」「性自認が違う方ってこれどうやって使うの。」とか、当事者の視点が入ることで途中で気づいたりすることってあるじゃないですか。
関係人口が多ければ多いほど「イチからスタンプラリー始めるのか」みたいなこともあって、だけどそれをひっくり返すぐらいインクルーシブであることが大事って思えるといいよなと思うんです。
それをリスクって思わずに、むしろ1人でも多くの人にプロダクトを届けられる目線を見つけたっていう感覚で捉えられるといいよなって思ったり。難しいし、自戒の念でもあるんですけど。
東江ハード面において「ユニバーサルデザイン」の指標は、パナソニックとしても無視してはいけない重要開発項目になっています。でも先ほど話に出た性自認と生物学的性が一致しない方とか、ソフト面のユニバーサルデザインは盛り込まれていなかったりするのでアップデートしなきゃ、という課題だと思います。
辻脱スタンプラリー。
東江もしくは、スタンプラリーをしつつ、新しい指標を作るのか。
辻いいですね。スタンプラリーの度に新しい視点が増やされる。素敵です。どうしてもそれをめんどくさい指摘と捉えずに、幅を広げていけるチャンスって思えるといいですよね。
「炎上」という言葉で「思考停止」しない。
辻私は、Ladyknowsというプロジェクトを2018年ごろから進めていて、もともとは女性が人生のいろんなところで直面する課題をみんなで知ろうよ、というものでした。この先は、SRHR (Sexual and Reproductive Health and Rights)領域に挑戦したいなと考えています。
妊娠とか、避妊とか、中絶とか、性感染症とか。それこそセクシャリティの話とか。多岐にわたる人々の権利。生きる上で関わってくる人の権利なんですけど、日本もまだ進まない部分も多い。
避妊方法も、ピルとかコンドームとかありますけど、あと、ミレーナですかね。それぐらいしかなくって、まだまだアフターピルも...
東江手軽には買えない。
辻手軽に買えないし、高いし、いろんな課題があって。薬局で処方箋なしで買えたり、病院に行かずに得られるものでいうと、コンドームしかない。海外を見回すと注射があったりとか、シールがあったりとか、いいなって思うじゃないですか。でも私も割と数年前まで知らなかったんですよね、そういうものがあることが。いつ知りました?
東江20代半ばぐらいまではぜんぜん知らなかった。
辻「そういうもの」って思ってましたよね。
東江はい、「そういうもの」だと思ってました。
辻で、いざピル飲んでみると、助かることもたくさんありますけど、毎日同じ時間に飲むのめっちゃ大変だし、体に合わないこともある。もちろん避妊の話は1つのトピックでしかないんですけど、多岐にわたる体にまつわるあれこれをもっと挑戦したい。
白鳥うん、うん。
辻2019年にLadyknows Fesという「健康診断のイベント」をやりました。女性の健康診断受診率が低いという課題へのアプローチなんですけど、それを現代版にアップデートして開催したいなと思っていて、そういうところでも、ご一緒できるところがあったら嬉しいな、なんて思ったりしてます。
東江素敵です。
辻お二人は今後の活動でやっていきたいこととかあったりしますか。
白鳥今やろうと思ってることしては、社外も巻き込んだコミュニティを作って、活動をお互いシェアして、エンパワーし合えるような活動ができないかなって考えています。こういったDEI的な活動は、社内外でいっぱいあるはずなんですけど、いかんせん繋がりが見えにくいせいか、面としてのパワーが足りてないと思うので。
後は、お客様との接点はもちろんですけど、社内に向けた活動のタッチポイントを増やしたいです。
ふつう研究室に関心のある、聴講生みたいな人が増えれば、底上げさえれると思うんです。もちろんお仕事として一緒に考えられると、とてもうれしいですが。(笑)
まずは関心をもって欲しいです。
レポートも含めてふつうに対して考えたこともなかったな、という人への伝え方とか、フックとなる接点をどう作れるかっていうところももっと充実させて、どんどんぶち上げていければと思ってます。
こういう活動してる時に、「ポジティブな炎上」は必要だなって思っているんです。ということで「ポジティブな炎上」するぞ!
あ、ちょっと、これは、会社への宣言になっちゃいましたね。(笑)
というのも辻さんは「ここはちょっと爆発しそうだぞ」みたいなところでも積極的に発信されることも結構あるなと思っていて。
東江Twitterを拝見してます。
辻ありがとうございます。いつも怒っててすいません(笑)
白鳥自分の言いたい主張に対する反論なども、きちんとコミュニケーション取ってらっしゃるなって印象があって。そういうときに気を付けていることなどはありますか?
辻できれば炎上っていう言葉の捉え方を変えたいなと思っています。発火元に原因があって炎上するのは「それはもう反省してください。もし、自分がそうなったらもう反省します。ご指摘ください」っていう感じです。
でもイデオロギーの違う人たちが議論になると、すぐに炎上って言われます。でも建設的な議論が起こることもあると思うんですね。あるいは、 そういうことの繰り返しで、ちょっとずつ前に進んだり、行ったり来たりしながら、ちょっとずつ進んでいくみたいなことが起こると思うんです。それら全てを「炎上」ってタブー視しちゃう空気感は危ういなと。
企業側も賛否起こりうるコミュニケーションだけど、「これを届けるんだ」っていう意志を持ってやることが大切だなと思います。それで議論が起こるってことがすごく大事。そのためにも事前にどこまで考えきるのか。なんとなくD&Iだ、ジェンダーイクオリティだ、っていうことではなく、事前にどれだけ想像し、想定し得るかってことがすごく大事だろうと思います。
私自身も、国際女性デーなどのクリエイティブって、もう本当ビビってるんです。毎回。ちょっとでもバックラッシュに加担するものは作りたくないと思って、 チームみんなで、時に外部の方も交えて、入稿直前まで「大丈夫かな」って。入稿した後でも世に出るまで眠れないです。「怖い〜」ってなりながら過ごすこともあります。怯えを持ち続けること、学び続けることが必要なんだろうと思います。
東江#ThinkYourNormal の動画を出す前日もドキドキして眠れなかったのを覚えてます。社会の人がどんなふうに捉えるのか、ハッシュタグでコメントしてくれたものを見て初めて気づく視点もありました。
白鳥自分のクリエイティブに自信を持ちすぎるっていうよりかは、ちょっと1歩引いて、社会にとってどうなんだろうとか考えるとかっていうのは多様性を発信するうえで必須ですよね。もちろん自信があるに越したことはないですけど、どんなにカバーしても受け手がいる以上、100%伝えきれないっていうか。
辻もっと話したいですね。「ふつう研究室」の意気込みとか、あるいはこんな「ふつう」をぶっ壊していきたいということを最後にぜひ。
東江まずはこうやってポジティブに話せる仲間を増やしていきたいなって思っています。
白鳥私も会社だと閉じがちなので、なるべく開いて開いていけるようにやっていきたいなと思います。
辻閉じないように。それはとても大事ですね。
昨日ちょうど学生さんから「社会課題をSNSで発信してるんですけど気を付けた方がいいことかとかってありますか」って質問いただいて...「教えるんじゃなくて、共有するっていう感覚が大事かも」という話をしたんです。
「世の中にこんな"ふつう"がたくさんあるよ」っていうことを、「教える」じゃなくて、「共有する」という視点がすごく大事だなと思う。閉じていく、どんどん「教えるマインド」になりがちなので、私も開いて開いて、共有してもらえるように、かつ、自分も共有できるような人になっていきたいなと改めて思いました。
個人のSNSに関して言えば、「ひとりじゃないよ」「間違いじゃないよ」って連帯の表明のために声をあげることも大切だと思っていて。落ち込んでいる当事者が1人でもいるんだったら、その人たちに対して1人じゃないよってことを表明したい。
「これは問題だよね」って思ったものを放置してると、3年後とか5年後とかにすごい大きな違和感になったりすることも多いので、その人と対話をするためということと、それを見ている人たちへの抑止力になったらいいなと思って言ったりするんで、あんまなんかメリデメを考えてないからできるのかもしれないですね、難しいですよね。怖いなって思ったりすることもあります。
みなさんと一緒に「ふつう」について考えて、アップデートしていけたらと思いますので、またいつか第2弾ができることを期待してます!ありがとうございました!
東江いつもTwitterを拝見している辻さんが#ThinkYourNormalの動画を知ってくださっていると噂をきいて、お話ししてみたいなと思っていたのですが、今回機会をいただいて、良いエネルギーをいただけました!
普段から自分の考えや違和感をバシッと言語化して発信されていることもあって、私の中での違和感の解像度が上がったり(特に炎上の考え方)、バックラッシュを放置しない加担しないみたいな姿勢も共感しました。まずはじわじわと自分の周りから、ふつうについて考えて、社会をアップデートできるように一緒に頑張りたいです!
白鳥正直、これまで自分たちの活動について、ソフトすぎると思う一方、刺激的だと思うときもあり、企業の中でどう活動して発信していくべきなのか、ハラハラしている部分がありました(笑)。
実際に表にでて、自ら発信している辻さんの視点でふつう研究室や、ご自身の活動のスタンスについて話を伺えたことで、アプローチの在り方も多様でいいし、ふつう研究室らしい社会との接点を作るヒントをいただけました!
選択肢が必要な人に、そのタイミングで選べる社会を実現するためにも、かゆいところに手が届くと言うか。"ダチ"みたいな相談したり、支えたり、導いたりしあえる一面を持つ企業を目指し、社内外へアタックしていきたいと思います。
ありがとうございました!
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Profile
東江 麻祐(あがりえ・まゆ)
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 デザインセンター デザイン戦略部 兼 デザイン本部 未来創造研究所。2016年パナソニック株式会社に入社。プロダクトデザイナーとして防災・セキュリティ・配線関連の製品デザインに従事。2019年4月よりデザイン本部 FUTURE LIFE FACTORYに在籍。YOUR NORMAL プロジェクトを主宰。2022年4月より現職(UI/UXデザイン)に加え、社内複業で未来創造研究所内にふつう研究室を立ち上げ活動推進中。
私のMake New|Make New「Circle」
新しい形、新しい循環、新しい関係と向き合いたい。
白鳥 真衣子(しらとり・まいこ)
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 デザインセンター ライティングデザイン部 兼 デザイン本部 未来創造研究所。2015年パナソニック株式会社に入社。プロダクトデザイナーとして装飾照明を中心に住宅向照明デザインに従事。2019年4月よりデザイン本部 FUTURE LIFE FACTORYに在籍。YOUR NORMAL プロジェクトを主宰。2022年4月より現職(プロダクトデザイン)に加え、社内複業で未来創造研究所内にふつう研究室を立ち上げ活動推進中。
私のMake New|Make New「Perspective」
視点を変えることで見えた、誰かと自分の価値観を大事にしたい。