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2023年4月29日、30日の2日間に渡り、朝日新聞社(sippo編集部)協力のもと開催された『パナソニック保護犬猫譲渡会2023』。開催2年目を迎え、イベント会場面積を昨年の約2倍に拡大して実施された本イベントでは、新たな試みとして「チャリティマーケット」や動物保護団体代表者による「トークセッション」を開催。また昨年に引き続き、「写真展」や「家電体験コーナー」も用意された。
本記事では、当日の様子をレポートするとともに、動物保護活動にかけるパナソニック担当者の思いを紹介する。
2日間でのべ5,320名が来場。日本最大規模の譲渡会
昨年に続き2回目の開催となる『パナソニック保護犬猫譲渡会2023』。会場のパナソニックセンター東京(東京・有明)には15の動物保護団体が集まり、2日間でのべ5,320名が来場するなど、保護犬猫譲渡会としては日本最大級の規模で行なわれた。
いますぐに犬や猫を迎えたい人だけでなく、譲渡会の雰囲気を体験しに訪れる人も多かった。なお、来場者の7割以上は「譲渡会に初めて参加した」と回答。参加者の間口を広げるという意味でも有意義な機会となったようだ。
不幸な犬猫が生まれる背景とは。動物保護の第一歩は「知ること」から
会場内のホールでは、動物保護団体の代表者3名によるトークセッションが行なわれた。
以前に比べ保護犬や保護猫という言葉は浸透してきたものの、動物保護活動に携わる人たちがどんな思いで、どのような活動をしているのかを知る機会は多くない。用意された約100席は満席。パブリックビューイングも開かれ、動物保護活動の実情に多くの人が耳を傾けた。
登壇者は、埼玉県の保護猫カフェ「ねこかつ」オーナーの梅田達也さん、行き場をなくした犬猫たちのためのシェルター「おーあみ避難所」を運営する大網直子さん、そして、昨年4月に千葉県で動物保護ハウス「さかがみ家」を設立した坂上忍さん。
そもそも、どうして保護を必要とする犬猫が絶えないのか。実際にさまざまな状況で身寄りをなくした動物たちを保護してきた3人から、リアルな実態が語られた。
大網最近増えていると感じるのは、独居世帯の高齢者が自宅で倒れてしまい、家のなかにわんちゃん、ねこちゃんが取り残されてしまうケースです。また、ニュースなどでも報道される機会が増えましたが、ねこちゃんの避妊・去勢を行なわなかったために無数に繁殖し、多頭飼育崩壊状態に陥ってしまうケースも多い。なかには増えすぎた猫たちとその糞尿で、人間が住める状態ではなくなり、家の主人が車のなかで寝泊まりしていたということもありました。
坂上本当に劣悪な環境と言っていいと思います。特に、避妊・去勢を行なわないケースでは近親交配でどんどん増えていくわけですから、これは完全に人間のせい。大網さんはそんな不幸な犬や猫を救うために、何十年も私生活を投げ打ってまで日本全国に足を運んでくださっている。その負担たるや、いかばかりかと思います。
また、飼えなくなった犬や猫が保健所に持ち込まれるケースもあとを絶たない。保健所で保護され、一定期間経っても引き取り手が見つからない場合、殺処分されてしまう。そうならないため、動物保護団体が保健所からの引き取りを続けているが、それでも救えない命が数多くあるという。
梅田10年前に比べて格段に少なくなってはいますが、それでも2021年度の犬・猫の殺処分数は全国で1万4,000匹以上。いわゆる「保健所」は基本的に動物を保護して里親さんを見つけるような場所ではありませんし、行政としてもそこでずっと犬や猫を飼い続けることは難しい。保健所に収容されると、通常は1週間が「命の期限」となり、それを過ぎると殺処分されることになります。それも安楽死ではなく、ほとんどの場合はガス室で苦しみながら息を引き取ることになる。残念ながら、これが日本の現状です。
坂上殺処分を減らすために頑張っている行政がゼロとは言いません。ただ、殺処分が減っているのは大網さんや梅田さんのような方々が無理をして、保健所から引き取ってくださっているから。それなのに、どこかの県のお偉いさんが「殺処分がゼロになりました」とアピールするのは違うんじゃないかと思います。ただ、動物保護団体としてはそうした行政ともうまく付き合いながらやっていかなきゃいけない部分もあって、なかなか難しいですよね。
梅田もちろん、行政のなかで現状を変えようと懸命に頑張っている職員さんたちもいるんです。でも現実は厳しく、助けられないことに心を痛め、辞めてしまう人も多い。気持ちのある人たちにとっては、本当につらい職場だと思います。
こうした悲劇の背景には、悪質なペットビジネスの構造や独居世帯の増加など、一筋縄では解決できないさまざまな問題があり、短期間で劇的に状況を変えることは難しい。それでも、まずはこうした実態を多くの人が知り、一人ひとりができることを考える。それが、不幸な犬や猫を減らすための第一歩になるという。
大網自分には何もできないとおっしゃる方も多いのですが、今日知ったことをご家族やご友人に話していただき、多くの人に現状が伝わるだけでも大きな一歩です。そういう意味では、今回ここにお集まりいただいたみなさんも、動物保護活動の一員と言えるんじゃないでしょうか。
悲惨な状況を変えるために。企業が保護活動を支援する意義
動物保護団体が各地で行なう譲渡会は有志の支えによって運営され、その費用もカンパや各団体の持ち出しで賄われているのが実情だ。そうしたなか開かれた『パナソニック保護犬猫譲渡会2023』に、「おーあみ避難所」の大網さんは、強い期待を抱く。
大網10年ほど前と比較して動物の保護活動は活発になり、譲渡会自体も増えてきました。それでも、まだ一般に広く周知されているとは言えません。そんななか、パナソニックさんのような大企業がこうした大規模な譲渡会を開催することは、多くの方々に私たちの活動を知っていただくきっかけになると思います。ここまで大きな会場で、これだけ多くの団体が集まれる譲渡会は、なかなかありませんから。動物保護活動の輪を広げていくために、今後もぜひ続けてもらいたいですし、私たちもお手伝いしていきたいですね。
また、神奈川県動物愛護センター登録のボランティア団体として犬猫の保護活動を行なう「WAN'S LIFE湘南里親」代表の岡本さと子さんは、「少しでも多くの命を救うために、パナソニックが果たすべき役割は大きい」と語る。
岡本神奈川県動物愛護センターでは約10年前から保護された犬と猫の殺処分がゼロになり、現在も継続されています。とはいえ、殺処分がなくなっても捨てられてしまう犬がいなくなったわけではありませんし、センターの外に目を向ければ多頭飼育崩壊やネグレクト、悪質な繁殖業者など、さまざまな問題が山積しています。こうした悲惨な状況を社会全体の問題としてとらえ、根本から変えていかなければいけません。
それには私たちのような小さな団体やボランティアがいくら頑張っても限界がありますが、一人でも多くの人に現状を知ってもらい問題意識を持つ人が増えることで、社会を変える大きな力が生まれていくのではないでしょうか。そうした意味でも、パナソニックさんのような会社が大規模な譲渡会を開催してくれて、多くのメディアでその様子が伝えられることには、大きな意味があると思います。
大事なのは続けること。動物保護活動をパナソニックの文化に
大網さん、岡本さんから「続けてほしい」という言葉が聞かれたように、動物保護活動の輪を広げていくためには今回の試みを一過性のもので終わらせず、長く継続していくことが重要だ。
最後に、動物保護活動にかけるパナソニックの思いと今後について、プロジェクト推進メンバーの一人である榎本悦子に聞いた。
榎本パナソニックにおける動物保護活動は、「ジアイーノ」マーケティングチームによる「ジアイーノ保護犬猫応援プロジェクト」からスタートしています。「ジアイーノ」を動物保護団体さまへ寄贈するという同プロジェクトの活動のなかで、パナソニックに今後期待することをヒアリングしていくうちに、「譲渡会の場所が欲しい」とリクエストをいただいたんです。ご要望いただいてすぐに、まずはやってみようということで動き出し、昨年、パナソニックとして初めての譲渡会開催となりました。
1回目は「とにかくやる」ことに必死でしたが、想像以上にたくさんの反響をいただきました。プロジェクトメンバーみんなが、「これは次もやらないと」という思いを持ったと思います。2回目となる今回は、「保護犬猫譲渡会をはじめとする動物保護活動を、パナソニックの文化として定着させるための礎」という意識で開催しました。なんとしても成功させるために、メンバーともあらためてコンセプトから話し合い、少しでも多くの人に保護犬猫や保護活動の実情について知ってもらうための企画を一つひとつ練っていきました。
榎本また、当然ながら動物保護団体の方々のご協力がなければ、パナソニックがこうした支援活動に携わることはできません。そのため今回の譲渡会も、ご参加くださる団体のみなさまの思いや取り組みに反するようなものであってはならないと考えていました。保護犬猫という存在がどうして生まれてしまうのか、ペット業界がどのような構図になっているのか......そうした実情をパナソニックのメンバーがしっかりと認識しておくため、長年動物保護の領域を取材されていて、譲渡会の運営も一緒にやってくださっている朝日新聞さんから知見をご共有いただく勉強会なども開催しました。そうやって私たちの知識レベルをしっかり底上げしたうえで、動物保護に関わる方々の気持ちをどうお伝えできるか思案していったんです。
結果的には、前回を上回る5,320名にご来場いただき、来場者アンケートでも「今後家電を買う際にはまずパナソニック製品を検討します」「来年以降もぜひ開催してください」など、温かいお言葉を数多く頂戴することができました。また、ご参加いただいた動物保護団体の方からも「パナソニックがこうした取り組みをすることは、動物保護の歴史の転換点になると思う」など、ありがたい評価をいただいています。今後の継続的な開催を見据えて、4月29日を「家族と暮らす動物の幸せを考える日(よいにくきゅうの日)」として記念日に制定するということも行ないました。3回目以降につなげる礎として、しっかりと成果を出すことができたと思っています。
榎本パナソニックには、「ジアイーノ」やHDペットカメラ、コードレススティック掃除機など、「動物とくらす家族」の力になれる製品がたくさんあります。それを多くの人に知ってもらい、動物とくらすハードルを下げることも、パナソニックとしてできる社会貢献のひとつだと考えているんです。社内でもこの活動の認知度は高まっていて、「応援したい」という声をたくさんいただいています。次回以降は、さらに多くの事業部やメンバーを巻き込みたいですね。
この会を継続的に開催することで、新しく動物を迎える人とパナソニックの関係が、「つながり続ける」ものになればいいなと思っています。
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Profile
榎本 悦子(えのもと・えつこ)
パナソニック株式会社 デザイン本部 コミュニケーションデザインセンター メディアプランニング部
2018年キャリア入社。入社以来、家電のコミュニケーション領域に従事。2021年から開始した「ジアイーノ」を動物保護団体へ寄贈する「ジアイーノ保護犬猫応援プロジェクト」も宣伝担当として推進、ペット家電の横断コミュニケーションにも注力。
私のMake New|Make New「コミュニケーション」
お客さま一人ひとりの幸せな記憶のなかにパナソニックのイメージが残る、そんなコミュニケーションをつくっていきたいです。