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家庭から「不機嫌」が消える⁉フロントオープン食洗機の真価を、暮らしの達人と語り尽くす

フロントオープン食洗機 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

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    洗っても、洗っても、いっこうに小さくならない皿の山......。「食器洗い=地獄」はさすがに言い過ぎかもしれないものの、洗い物の大変さに悩む人は、少なくないのでは?

    そんな状況を救ってくれる"救世主"のような存在が、食洗機。今回は「暮らしかた冒険家」として新しい生活や家事のあり方を探求・提唱する伊藤菜衣子(いとう さいこ)氏と、パナソニックで食洗機の企画に携わる宇佐愛日(うさ まなか)に、食洗機で食器洗いの負担がどう変わるかなどを語ってもらった。

    その食洗機、じつは国内でまだ3割程度しか普及していないという。日常的に食洗機を使う伊藤氏は、ある種の「呪い」が低普及率の一因と分析する。日本の家庭に受け入れられるのはどんな食洗機なのか、伊藤氏がいう呪いとはなんなのか、彼女はどう呪いを解いたのか――。2人の対話から、日本の家庭の「未来形」が見えてくる。

    左から伊藤菜衣子さんと宇佐愛日さんの写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    「暮らしかた冒険家」の伊藤菜衣子(いとう さいこ / 左)氏と、パナソニックで食洗機の企画に携わる宇佐愛日(うさ まなか / 右)

    食洗機を使うのは、家庭内の「不機嫌」をなくすため

    ――伊藤さんは「暮らしかた冒険家」として、家事の工夫や仕組み化を実践しています。家事の分担など、家庭内で決めているルールがあれば教えてください。

    伊藤私たち家族が大切にしているのは「家庭内から不機嫌を撲滅する」ことです。つまり、自分が不機嫌になってまで家事を無理に頑張らないということですね

    ――家事でイライラするくらいなら、楽にできる方法を考えたりしてくらしを改善していくということでしょうか。

    伊藤そうですね。家電に頼れるところは頼ったり、ときには「やらない!」と決めたり。不機嫌を撲滅すること目指して、日々の暮らしを改善しています。

    ――そもそも家事は、家族全員が気持ちよく過ごすためにやるものであって、それが不機嫌や不和の種になってしまうのは本末転倒ですよね。

    伊藤いま住んでいる家を建てるときも夫と話し合いながら、入念に家事の取捨選択をしました。食器洗いもその一つです。最初から食洗機は導入するつもりでしたが、住宅の見積もりとにらめっこするなかで、初期費用のことを考慮すると、そこまでハイスペックなものでなくてもいいかなと思うこともありました。少しくらい手洗いの必要性が残っても、まあいいかなと。

    伊藤さんのインタビュー中の写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    「暮らしかた冒険家」として新しい暮らしや家事のあり方を探求・提唱している、伊藤菜衣子氏

    伊藤でも、そこで夫が「いや、不機嫌になるから手洗いはなくそう」と言ったこともあって、最終的には海外メーカーのビルトイン食洗機を導入することにしました。

    横幅60cmのフロントオープンタイプ(※1)なので、小さな子どもでも自分が食べ終わった食器を入れやすいんですよ。洗い物が劇的にラクになっただけでなく、小学生の息子にお願いできる手伝いの幅も広がった感じがありますね。

    ※1 扉が前方向に倒れるかたちで開き、食器を出し入れできるようになるタイプ。大容量で、食器などがたくさん入る機種が多いことなどが特徴

    ビルトイン食洗機のプルオープンタイプとフロントオープンタイプの写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    ビルトイン食洗機のプルオープンタイプとフロントオープンタイプ

    時間がない共働き世帯は、「まとめ洗い」がしたい

    ――食洗機は、以前の家でも使っていましたか。

    伊藤家を建てる際に仮住まいしていたマンションには、横幅45cmの上から食器を入れるプルオープンタイプの食洗機がついていました。その食洗機では「入れる順番」にコツがあって、家族全員分の皿や調理器具をいったんシンクに並べて、考えながら詰めていました。

    ただ私の場合、料理中に使い終わった調理器具をどんどん食洗機に放り込んで、食器も使った人が自分で入れて、その日の洗い物を1回で完結できるかたちが理想なんです。当時は、それができないのがストレスでした。

    ――その経験もあって、新居には横幅60cmのフロントオープンタイプを導入したと。

    伊藤実際に使ってみると、もうこれがない生活は考えられなくなりましたね。今は朝昼晩の食器と調理器具を全部「えいっ」と入れておいて、最後にボタンを押すだけなので本当に楽です。

    ――じつはパナソニックが2023年12月に発売したビルトイン食洗機「NP-60EF1W」も、横幅60cmのフロントオープンタイプです。

    伊藤私が家を建てたときは、パナソニックの食洗機のラインナップにフロントオープンタイプで横幅60cmのものがなくて。当時これがあったら、間違いなく選択肢に入っていたでしょうね。

    ――確かにパナソニックによるフロントオープンタイプの投入は、22年ぶりと聞いています。商品企画に携わった宇佐さんに、その背景を話していただきたいです。

    宇佐理由として大きいのが、伊藤さんの話にもあった「まとめ洗い」のニーズが高まっていること。共働き世帯にとって、1日に何度も食洗機を回すような時間はなかなかありません。

    実際のところ、2食分以上の食器をまとめ洗いする食洗機ユーザーが、過半数を占めるんです。

    宇佐さんのインタビュー中の写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    パナソニックで食洗機の企画などを担当している、宇佐愛日(うさ まなか)

    宇佐そこで、今回のフロントオープン食洗機は、3段のカゴに家族4人×3食分の食器や調理器具が収まる設計になっています。

    加えて、大容量の庫内を高温・高圧の水流で洗浄し、汚れを落とし切ることができるのも大きな特徴ですね。新構造のフィルター(※2)によって、一度洗い流したゴマなどの細かい食材が再び食器に付着するのを、防ぐこともできるんです。

    ※2 記事末尾に技術解説あり

    食洗機を見ている伊藤さんと宇佐さんの写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    伊藤氏には、パナソニックのショールームで食洗機「NP-60EF1W」を見学してもらった

    ――「食器の入れやすさ」という点はいかがですか。

    宇佐3段のカゴを、別々に引き出すことができます。たとえば使用済みのフライパンは下のカゴに、茶碗やコップは上のカゴに、お箸などのカトラリーは一番上のトレイに入れるなど、大まかな共通認識があれば入れる順番などは意識しなくてもしっかり収まるため、伊藤さんが以前の食洗機で感じていたようなストレスもないはずです。

    また、上のカゴは茶碗やコップといった、使用頻度の高い食器類を入れる想定で、特にスムーズに引き出せるレールを採用しました。お子さんや年配の方を含め、誰もが気軽に使える仕様です。

    食洗機の中身の写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    3段のカゴを別々に引き出すことが可能。上のカゴは茶碗やコップなど高頻度で使う食器類に向く

    ニオイが残りやすい?汚れが落ちにくい? そんな不安を技術で解消

    ――ほかに、この食洗機ならではの特徴があれば教えてください。

    宇佐特にこだわったのは、衛生面と使いやすさです。まず衛生面ですが、1日1回のまとめ洗いだと、朝に入れた使用済みの食器が半日以上、食洗機のなかに残り続けることになります。

    そのため、食洗機のなかで雑菌が繁殖したり、ニオイがこもったりすることを懸念する人が多いかもしれませんが、この製品はパナソニックの独自技術「ナノイーX」を活用することで、庫内のニオイの抑制と除菌が可能になっています。

    宇佐さんの写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    伊藤ニオイが残らないのはいいですね。以前、魚の骨が付着したままの皿を食洗機にかけて、強烈なニオイで「地獄」みたいになったことがあって......。

    宇佐そうした場合でも、魚のニオイは残りづらいと思います。開発時に実際に汚れた食器を洗うテストを何度も行ないましたが、食洗機を開けた瞬間のニオイが、ほとんど感じられませんでした。

    ――伊藤さんは実機を見るのは初めてだと思いますが、いま使っている食洗機と比べてどうでしょうか。

    伊藤カゴが3段に分かれていて、一番上に包丁などの置き場がある基本構造は、わが家の食洗機と同じで使いやすそうです。それから、下カゴに水筒を4本分固定できるボトルホルダーがついているのは便利ですね。

    いま使っている食洗機だと洗浄中にボトルが倒れたりして、中までしっかり洗えているのか不安になるので。利用者のライフスタイルをふまえて、かゆいところに手が届く工夫をしているのはさすがだなと。

    あとは、やっぱり洗浄力の高さや食材の再付着の防止など、しっかり汚れを落とせるというのは、あたり前かもしれないけど大事ですよね。おそらく、従来の食洗機に対して「あまり汚れが落ちない」「手洗いのほうがきれい」みたいな印象を抱いている人の不安に、応えているんだろうなと思いました。

    家事を楽にすれば「家庭だけでなく社会も良くなっていく」

    ――内閣府の調査では、日本の食洗機の普及率は29.5%(2023年3月末時点、総世帯が対象)。普及率7割といわれる欧米に比べ、低い数値です。日本の家庭に食洗機があまり普及しない理由について、伊藤さんはどう考えますか。

    伊藤理由はいくつか考えられます。たとえば、ときに予洗いが必要だったり、カゴに効率よく食器を入れないといけなかったりと、面倒なことが多く、あまり工程が減っていない感じがするんですよね。これは、過去の使いづらかった食洗機のイメージが根づいてしまっているためだと思うんです。

    「それなら、スポンジでさっと洗ったほうが早いでしょ」となってしまう。あとはビルトイン食洗機となると、家を買うときやリフォームのときじゃないと、なかなか導入しづらい。そもそも導入を検討する機会が少ないのも、普及が進まない理由の一つなのかなと。

    ただ、そうした細かい理由とは別に、大きな背景として「家事を楽にすること」にうしろめたさを覚えてしまう女性が多いのではないかと思います

    ――そのうしろめたさはどこから来ているのでしょうか。

    伊藤私もそうでしたが、同世代の30〜40代女性の多くは子どもの頃、母親が「家事を頑張ること」に存在意義を感じている姿を見て育っていると思うんです。その姿は自分が大人になってからも脳裏に焼き付いていて、家事をしないこと、適当にこなすことにある種の罪悪感を覚えてしまう。

    「家事はしっかりやらないと」という"自分への呪い"が、便利な道具の活用を妨げている気がします

    ――伊藤さん自身が、そうしたうしろめたさから解放されたきっかけはありますか。

    伊藤はい。第一子の出産ですね。仕事と家事に力を注いでいた日常に、育児という「新たな大仕事」が加わりました。結果として、それまでのやり方では立ち行かなくなったんです。

    最初は「仕事はなるべく減らしたくない」「家事のクオリティも落としたくない」と考えていました。食器洗いについても、「食洗機とかに頼らなくても自分でできる」と。いまなら無理だとわかるけど、当時はそんな自己矛盾にも気づかなくて、半ばパニックになっていましたね......。

    しばらくして、やはりどうにもならなくなりました。そうなって初めて家事の呪いがあることに気づいて、解く努力をしてきた気がします。

    家事は自分次第でいくらでも手放せるし、仕組み化したり、みんなでシェアしたり、家電に頼ったりできると気づけるようになったんです

    ――考え方をあらためたり、道具を活用したりすることで楽になる家事は、たくさんありそうですね。

    宇佐私もそう思います。ただ考え方って、大きなきっかけがないとなかなか変わらない......。だからこそ食洗機は、多くの人にとって家事への向き合い方や生活そのものが変わる「入り口」になり得ると思うんです。いろいろな家事があるなかで、特に食器洗いは、やる必要がなくなればインパクトが大きいですから

    食洗機の国内シェアはパナソニックが首位ですが、まだ開拓の余地があります。海外製品のユーザーも少なくないですが、当社は日本の台所やよく使う食器などの生活環境に合った食洗機を提供できるのが強み。さまざまなライフステージに合わせてラインアップを拡充することで、食洗機があたり前の世の中にしていきたいと思います。

    伊藤食器を自分で洗わずに済むなら、それに越したことはない。便利な道具を活用しつつ、家事を手放すことで生まれた時間を使って暮らしを豊かにしていくほうが、いいですよね。

    家事に対する責任感が強い人ほど、一部でもいいので手放してみて、その責任感を違う何かに使ってほしいと思います。そうやって一人ひとりが前向きに時間を使えるようになれば、その人の家庭だけでなく社会も良くなっていくと思いますから。

    左から伊藤さん、宇佐さんの写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    【技術解説】開発担当が挙げる、NP-60EF1Wの推しどころ「残さいフィルター」

    パナソニックが22年ぶりに開発したフロントオープンタイプの食洗機「NP-60EF1W」。高い洗浄力とお手入れのしやすさを実現しているのは、新開発の3層構造「残さいフィルター」。開発者であるパナソニックの冨山佳祐(とみやま けいすけ)に、その仕組みを解説してもらった。

    冨山
    冨山

    食洗機底部に付いている「残さいフィルター」は、洗浄ポンプや排水ポンプとつながっていて、水の通り道として重要な役割を担っています。格子フィルター(図A)で大きな汚れや破損した食器のかけらなどを捕集し、メッシュフィルター(図C)で細かい汚れを補集します。パンチングフィルター(図B)は通常、洗浄水のみが通過するという仕組みです。

    洗浄中にメッシュフィルターで捕集した汚れや付着物は、各工程の排水時に機外へ排出されるので、汚れや食材が食器に再付着することを抑制することができるんです。

    残さいフィルダーの3層構造の図版 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    冨山
    冨山

    また、食器だけでなくフィルターも洗浄できるよう、ポンプで加圧した洗浄水をフィルターへ導水し、フィルター自体に設けた穴を通じて下向きに噴射することで洗浄するフィルター自動洗浄システムを開発しました。

    開発では、理論設計と現物評価を併行して進めることで、開発工数低減とロバスト性(信頼性の高い設計)の両立を図りました。この技術により、1週間お手入れなしで使っても当社基準を満たす洗浄性能を保つことができます

    ほうれん草による洗浄試験で自動洗浄あり・なしの比較画像と、運転回数と洗浄性能指標のグラフ | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア
    冨山
    冨山

    他社製品はメッシュフィルターをできるだけ大きくして目詰まりが起きにくくしているのですが、NP-60EF1Wでは運転のたびにフィルターが自動洗浄されるため、コンパクト化することができました。その分、庫内容量を最大化することにも貢献できています

    NP-60EF1Wの開発では、洗浄性能の大幅な向上と、庫内大容量化を目標に掲げました。これら2つは「片方を追求し過ぎると、もう片方が犠牲になる」という二律背反の関係性にあるんです。

    正直、なかなかの難題でした......。でも、両立することで食洗機の本質的価値向上につながると確信していたため、技術者としてチャレンジしました。最終的に製品化できたときは、大きな達成感を覚えました。

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    幅60cmフロントオープンタイプ NP-60EF1W | ビルトイン食器洗い乾燥機 | Panasonic

    日本の生活環境に合わせ、機能性を追求したパナソニックのフロントオープン食器洗い乾燥機。食器も調理器具も1日分をまとめ洗い。約12人分の食器が収納できる大容量。食器セット前の予洗いも不要です。

    Profile

    伊藤 菜衣子さんのプロフィール写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    伊藤 菜衣子(いとう・さいこ)

    広告制作や編集を生業としつつ、地方移住などを通じ新しい暮らしや家事、家族関係のあり方を探求・提唱する「暮らしかた冒険家」としての活動も展開中。故坂本龍一氏のキュレーションで、『札幌国際芸術祭2014』に札幌に引越して暮らす「hey, sapporo」プロジェクトで参加した経験などを持つ。現在は、愛知県岡崎市在住。


    宇佐 愛日さんのプロフィール写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    宇佐 愛日(うさ・まなか)

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 キッチン空間事業部 冷蔵庫・食洗機BU食洗機事業総括 プロダクトイノベーション企画部
    2010年入社。現在は食洗機などキッチン家電の企画に携わる。

    私のMake New|Make New「スキ」
    お客様の、「スキ」の領域を拡張するきっかけを作っていきたいです!


    冨山 佳祐さんのプロフィール写真 | Make New Magazine「未来の定番」をつくるために、パナソニックのリアルな姿を伝えるメディア

    冨山 佳祐(とみやま・けいすけ)

    パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 キッチン空間事業部 冷蔵庫・食洗機BU 食洗機事業総括 食洗機技術部
    2017年入社。現在は食洗機などの技術研究、製品開発を担う。

    私のMake New|Make New「ドンピシャ」
    これこれ、こういう商品/サービスを待ってた!を連打していきます。

    • 取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ)
    • 撮影:山内拓也
    • 編集:MNM編集部、藤﨑竜介(CINRA)

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