Index
前回「地元の生活を盛り上げたい。ビッグクラブ「ガンバ大阪」の継続と挑戦を、東口選手とホームタウン推進課の河合さんに訊いた」では、株式会社ガンバ大阪の河合 直輝さんも交えながら、クラブ×地域でどんな取り組みをされているかのお話をいただきました。今回の記事では、東口選手にご自身のキャリアやプロサッカー選手という仕事の特殊な世界について深掘りしていきたいと思います。「結果」にこだわることの意味を熱く語る東口選手の気迫に圧倒されながら、インタビューするこちら側も「もっとがんばろう」と奮い立つような新鮮な取材体験でした。
ジェットコースターのような10年間
――あらためて、東口選手にとってこの10年間はどんな10年間でしたか?
東口そうですね。ガンバ大阪に来てからは、ジェットコースターのような10年間やったなと思います。とてもガンバっぽいっちゃガンバっぽいんですけど(笑)。J2からJ1に上がったタイミングで入団。そのシーズンの夏までは、残留争いをしていたチームが、そこからV字回復して一気に3冠を取りました。僕自身は日本代表やACLを初めて経験しました。かと思えば、また残留争いをしないといけないシーズンが続いたり...すごい浮き沈みの激しい10年間でしたね。
――それは東口選手的には辛い経験なのか、楽しい経験なのか、どういう感覚なのでしょうか?
東口やっぱり、リーグで下の順位にいる時は辛いです。ただ、今思えば、すごいたくましく自分自身も成長させてもらえた日々でした。
――どんな成長を感じてこられたのですか?
東口やっぱり人って、いい時は周りの人にも自分自身にも優しくできるし、何しても楽しいもんやと思います。ただ、うまくいかへん時って、本物の自分が出てしまう。その中で、どれだけ周囲や自分に対して厳しくあれるか。うまくいかないイライラに耐えることができるか。そういう「人間としてのたくましさ」をすごい鍛えられたと思っています。しかも、ゴールキーパーって相手の動きを見て自分の動きを決める「リアクション」が多いじゃないですか。なので「我慢できるかどうか」というのはプレイにおいてもとても大事な要素。そういう面でもプレイに直接つながる成長を積んでこれた実感があります。
――在籍中に大怪我を何回か経験されてると思うのですが、怪我はどうやって乗り越えてきましたか?
東口そうですね...最終的にはやっぱりサッカーが好きというのが原動力になったと思います。チームメイトが本気で戦っている試合を改めて見て、これだけのサポーターの人たちの前で試合をする喜びや憧れを思い出し「ここにもう一度立ちたい」というモチベーションに変わっていきました。そうやって、きついリハビリも乗り越えてこられたように思います。
プロサッカー選手にしか見せられない景色
――話が変わるのですが、最近だとサッカーYouTuberも出てきたりとか、サッカーの入り口が広まっている気がしています。こんなことをお伺いするのも失礼かなと思いつつ、そういった人たちとプロのサッカー選手の違いはどこにあるのでしょうか?
東口うーん...難しいですね(笑)。サッカーの面白さや楽しさを伝えることはYoutubeの人たちでもやろうと思えばできるんやと思います。 ただ、それはある種「エンターテインメントとしての面白さ」かなと思います。人が何万人も入る巨大なスタジアムで、トップレベルの試合をやって、しかもそこで勝つ瞬間の興奮。僕らの仕事はそれを届けるためのもんやと思います。もちろんサッカーするのは楽しいですし、それを仕事にできているのは感謝でしかないです。たまには練習したくないなぁ、走りたくないなぁなんて瞬間もたくさんありますけどね(笑)。
――サッカーで一番楽しいのはどの瞬間なんですか?
東口やっぱり試合で勝った時。何十年もやってきて、その瞬間が何回やっても飽きひんし、興奮するし、やみつきになる。 またあの感覚を味わいたいからキツい練習も体調管理もチーム内のコミュニケーションもできることを全部やっています。
――どうやってそのエネルギーを保ち続けているんですか?
東口自分の中では常に日本一のゴールキーパーになるという目標があって、それに向かってやっています。ただ、それだけじゃなくて、周りの人のためにも。もっともっと活躍しないといけないと自分を奮い立たせることもあります。自分自身、行き詰まったら、キーパーコーチやチームメイトに必ず相談するし、逆に自分がサッカーと向き合えていない時、彼らは怒ってくれるし。活躍するためには人を上回らなあかんし、ライバルも上回らなあかん。それにはやっぱりうまくならなきゃいけない。そんな風に目標や課題をどんどん逆算していくことでエネルギーを保っていますね。
タイトルをもう一度
――これからガンバ大阪をどういうクラブにしていきたい。あるいは、なっていけると嬉しいなというイメージはありますか?
東口やっぱりタイトルをとるというのは、常に言っていることです。もう結果を出すことに尽きると思います。
――やっぱり、結果なんですね。
東口結果ですね。良いサッカーをしていても、結果が出なければ意味がない。悪いサッカーをして結果が出るんやったら、それをしたいとすら思います。やっぱり勝つのが誰にとってもハッピーやと思います。いいサッカーをしても結果出てなかったら評価されへんし、いいプレイしても勝てへんかったらそれは評価されへん。逆に毎回毎回勝っていったら代表にも選ばれるし、いろんなチームからも評価されるし。まずは結果やなっていうのを強く感じる10年間でした。
結果の世界にしかないものを
――最近、子どもたちの運動会とかでも順位をつけなくなっていて、プロセスや努力を評価する方向に進んでいるように思います。結果を出す尊さとプロセスや努力を重視する世間の流れ。そのギャップに関してはどう感じていますか?
東口あくまでも僕個人の話、サッカーの話として聞いてくださいね(笑)。僕の目標は日本一のゴールキーパーになることなので、そのためには誰よりもうまくならなあかんし、チームとしてもトップレベルにいかなければいけないし。誰よりも練習しなければいけない。
プロセスがいいから1番になれるわけで、逆に、1番を目指さないとプロセスもよくならへんかなと自分は思います。1番を目指すから、ダメだった経験も次への栄養になるし、次のレベルに進んだら「また次を目指そう」っていういい連鎖が生まれるし。「プロセスが良くて、結果が出えへん」っていうのは、いやそのプロセス間違ってるんじゃない?って思ってしまいますね。
東口もちろん、現実は1番になれへんことが多いです。それでも結果に向かって努力するのが大事なんちゃうかな。自分の子どもの話ですけど、誰よりも朝早く起きて、一緒に練習したりもするし、走らせたりもします。最初はやっぱり嫌な顔をするけど、上手くなったら自分でもそれをわかって「これできるようになった!!!」って、すごいいい顔をしてくれる。結果的にまだ1番にはなってないですけど、でもそうやって1番に向かって努力するっていうのが見ていて気持ちいいですよね。これからのガンバ大阪で目指していくことも変わらず「結果」です。見ていてくださいね。
――もちろんです。
東口選手がこの10年間ガンバ大阪で経験してきたこと。そして、プロサッカー選手としての矜持や、どこまでも結果にこだわりつづける意義を伺いました。取材をしているこちらが奮い立つようなとても痺れるインタビュー体験でした。なにより、東口選手が結果の偉大さを語る裏には、もちろん生半可ではない努力の裏付けがあるのだろうなということが雰囲気からビシバシ伝わってきました。サッカーを観る目が変わる。現地に足を運んで試合を観たくなる。そんな記事になっていたらうれしいです。
東口選手、これからも活躍を期待しています!ありがとうございました!
Profile
東口 順昭(ひがしぐち・まさあき)
大阪府高槻市出身。ガンバ大阪Jrユース出身、2009年~2013年アルビレックス新潟、2014年~ガンバ大阪、2010年Jリーグ初出場。国際Aマッチ8試合出場、2007年ユニバーシアードバンコク大会5位、2015年AFCアジアカップ(オーストラリア)4位、2017年EAFE選手権準優勝、2018年FIFAワールドカップ(ロシア)ベスト16、2019年AFCアジアカップ(UEA)準優勝。
わたしのMake New|Make New「GAMBA」