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IVS主要メンバーが集結した「XDEAL」の熱量
2026年7月3日、日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2026」ではメインイベントである「Launchpad」が開催され、若き起業家たちがピッチコンテストの壇上で競い合う中、IVSの主要運営メンバーや日本のスタートアップエコシステムを牽引してきた中心人物たちの姿は、京都のAce Hotel Kyotoにありました。
開催されていたのは、経営者のためのM&A特化型カンファレンス「XDEAL(エックスディール)」。会場に駆け付けた布陣からも、IVSが「M&A」というテーマに対して非常に強い意気込みと問題意識を持っていることが伺えます。
オープニングセッションの壇上に立ったLINEヤフー前会長の川邊健太郎氏は、現在が生成AIの急速な普及によってプロダクトの「品質の均一化」が進むスタートアップ業界自体の巨大な変革点であることを指摘。この問題提起は、単なる個別ディールの交渉術を超えて、これからの経営や大企業とスタートアップの共創のあり方を再定義する本質的な対話の幕開けとなりました。記事では、シークレットカンファレンスとして開催された某イベントの一旦をご紹介します。
イベントの概要とIVSが仕掛ける狙い
「XDEAL」は、4S株式会社が主催・運営を務める、IVS2026の公式サイドイベントとして初開催されました。一桁億円から二桁億円規模のディールサイズを主な対象領域に設定し、経営者、バイヤー、そしてアドバイザリーの三者が、当事者として対等かつ直接的に対話できるプラットフォームとして設計されています。


日本のスタートアップシーンにおいて、M&Aは長らく「IPOの断念に伴う次善の策」としてネガティブに捉えられがちでした。このような構造に対し、IVSが公式サイドイベントとしてXDEALを強力にサポートした背景には、水面下に隠れがちだったM&Aに関する生々しい本音の議論を表舞台へと引き出し、市場の流動性を高めるトリガーにしたいという明確な狙いがあります。
大企業とスタートアップの共創を志向する当社をはじめとするCVCにとっても、このスタートアップの流動化と大企業への統合プロセスの活性化は、中長期的な事業シナジー創出を加速させる極めて重要な経営アジェンダです。
従来の成長プロセスの変化と、その背景にある「3つの要因」
オープニングセッションにおいて、インターネットビジネスの創世記を歩んできた川邊健太郎氏から示されたのは、従来の起業プロセスの前提そのものが変わり始めているという指摘でした。
これまでは「シード期に資金を調達してプロダクトを開発し、さらに大型のエクイティ調達を重ねて優秀な人を集め、IPOを目指す」というビジネスの成長プロセスそのものが王道とされてきました。しかし川邊氏は、このプロセス自体が変革期を迎えており、全く新しいスタートアップ成長の「型」が産まれるのではないか語りっています。
このパラダイムシフトを裏付けるように、今回の参加経営者に対して事前に行われたアンケートでは、「自社を売りたい」と回答した割合が実に27%に達していたことが報告されました。この高い売却意向の背景には、経営環境における「2つの決定的な構造変化」が存在すると考えられます。
一つ目が、東証上場基準の厳格化。東京証券取引所による上場基準および維持基準の変更・厳格化は、いわゆる「スモールIPO」に対する資本市場の選別眼を厳しくしました。上場後に時価総額や流動性が低迷し、多大な上場維持コストや監査対応に追われるリスクを考慮すると、早い段階で豊富なリソースを持つ大企業へとM&Aでグループインし、その事業基盤を背景に非連続な成長を目指す方が、経営の合理性にかなうという判断が一般化しつつあります。
二つ目が、生成AIによるプロダクト開発工数の短縮です。生成AIの劇的な進化は、スタートアップが抱えていた開発力の優位性を相対的に低下させています。AIエージェントの活用やローコードツールの普及により、従来は多大な資金と期間を必要としていた高度なソフトウェアやサービスが、現在では極めて少人数のリソース、極端には「一人経営」の規模であっても、短期間かつ高品質に再現可能となりました。技術の差別化が難しくなった「品質の均一化」の時代においては、先行してプロダクトを開発することの価値が以前よりも短命化せざるを得ません。
AIの台頭により、システムを定額で提供するSaaSビジネスモデルも、厳しい転換期に直面しています。顧客自身がAIツールを用いてシステムを内製化する動きが進む一方で、多大な広告宣伝費や人的カスタマーサクセスといった「変動費」に過度を依存するビジネス構造は、利益率を大きく圧迫するリスク(変動費地獄)を招きます。インターネットビジネスに近接する領域ほどAIの影響を直接的に受けやすく、自社を迅速に「AI駆動型」のスリムな体制へと再設計するか、あるいは価値が残存している段階での「売却」を選択するかという、決断が迫られているのかもしれません。

DMM亀山氏が突きつける「商売の原点」
こうした技術と資本の急速な変化に対し、登壇したDMM.com会長の亀山敬司氏は、起業家たちに向けて極めて現実的、かつ本質的な経営への立ち返りを促しました。
亀山氏は、昨今の「エグジット第一主義」とも言える起業環境に対し、次のように率直に語りかけます。
「そもそも初めからね、投資を受けるかどうか、出口だとかM&Aだとか考えてるのがそもそもおかしい話で、商売やるって話だから、要は儲けたら何とかなる。今儲けるか未来儲けるかこれしかないんで、それ以外に会社の存続にはない。その時におまけとしてM&Aとか上場とかっていう話があるだけであって、しなくてもいいんだし。」
このメッセージには、数々の事業の立ち上げを経験し、多くの挑戦者たちと向き合ってきた亀山氏ならではの、起業家への深い理解と、商売そのものへの揺るぎない信頼がにじみ出ています。
また、亀山氏の経営アプローチは、資本論理に終始するものではなく、当事者双方に温かく配慮された穏健な仕組み設計に現れています。例えば、M&Aにおける売り手創業者の関与について、強制的な「ロックアップ」で縛り付ける手法には懐疑的です。むしろ、一部の株式を売り手側に残してもらい、買収後の業績(KPI達成度など)に連動して残りの株式をより高いバリュエーションで買い取る「業績連動型のインセンティブ設計」を推奨しています。
これは、買い手と売り手の双方が、同じ方向を向いて持続的に事業価値を高めていくための、非常に現実的かつ合理的なパートナーシップ設計に他なりません。外部資金(エクイティ)が途絶えた瞬間に破綻するようなファイナンス構造に依存するのではなく、デット(負債)調達も活用しながら、社長が不在でも自律的に回る「仕組み化された商売」を構築すること。
この原点への立ち返りこそが、不確実な技術変革期における生存確率を高め、M&Aの場においても強力な交渉力を生み出す最大の基盤になると説きました。

経営アジェンダとしてのM&Aのゆくえ
LINEヤフー前会長の川邊氏は、これまでの20年間を「インターネットビジネスの型ができた時代」と総括しました。その20年間を、起業家たちの登竜門として伴走してきたのが他ならぬIVSです。
そのIVSが今回、あえてクローズドなディスカッションと当事者性が求められる「M&A特化型カンファレンス」を立ち上げたという事実は、日本のスタートアップエコシステム全体が、従来の「一方向の資金調達ゲーム」から脱却し、より多角的で成熟した産業の新陳代謝へとシフトし始めていることを象徴しています。
この変化は、大企業の投資・共創を担うCVCにとっても重要なインサイトを与えています。マイノリティ出資による協業探索にとどまらず、AI駆動による組織再編や「AIロールアップ」のような急進的なアプローチを前にしたとき、M&Aはもはや個別実務ではなく、企業の存続を左右する「経営の中核アジェンダ」として扱われるべきです。
数年後のIVSやXDEALの会場では、これまでのお祭りのような空気感は一変しているかもしれません。そこでは、AIによって超省力化された「極小・超高収益企業」を経営する起業家たち、それをPEファンドや連邦制のグループスキームを活用して買収・統合していくプロフェッショナルたち、そしてM&Aを一つのマイルストーンとして軽やかに再起業を繰り返すシリアルアントレプレナーたちが、主役として真のビジネスを動かしているはずです。京都で交わされた数々のリアルな対話は、そんな新しい経営のあり方と未来のビジネスエコシステムの輪郭を、確かに描き出していました。
XDEAL in IVS2026 -- 第一回アーカイブ | XDEAL
(くらしビジョナリーコラボ広報担当)
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