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サッカーだけが、ガンバ大阪ではない。もっと愛されるクラブになるためには。

ガンバ大阪×Panasonic記事の第一弾の後編。ガンバ大阪OBでもあり、現在はガンバ大阪特命広報大使を務める、加地亮さんと、ガンバ大阪スタジアムMCの仙石谷幸一さんのお二人に、今の時代に選手やクラブの魅力を伝える工夫や難しさと、そこへの想いや使命感を伺いました。

Index

    前編「サポーターなくしてクラブはない。特命広報大使とスタジアムMCの立場だからこそ感じたガンバ大阪の原点。」では加地さんと仙石さんお二人のガンバ大阪でのユニークな役割や、今までの経験から感じたサポーターの大切さなどについてお伝えしました。後編では、今の時代に選手やクラブの魅力を伝える工夫や難しさと、そこへの想いや使命感を伺いました。

    ガンバ大阪の一番の売りもんは「選手」やと思う。

    加地サッカー選手やるんやったら、コミュニケーションもとれた方がいい。ファンも知ってくれてるから、向こうから近寄ってきてくれるじゃないですか。そういう時にもっといろいろ話したり、仲良くなったりしたらいいのになと思うんですよ。僕も若い時あんまり得意じゃなかった。でも、歳をとるにつれて、その壁を取っ払って、自分から喋りかけたりできるようになってきた。後々、社会に出た時にも活きるし、サッカー以外の人間性として、すごい大事なところだと思いますね。

    仙石もしかしたら「プロ」っていう言葉の中に含まれてるのかもしれないね。サッカーに対してのお給料じゃなくって、サッカーやクラブとファンを繋ぐ。そういう存在としての選手にも価値があるから、そこ含めてプロなんだと思う。もし、そういう感覚がないと、情報発信とか表現も含めて、現状維持でいいかってなっちゃう。

    スタジアム観客席に座る仙石さん

    加地 試合の集客は会社にお任せという感覚になってしまうよね。

    仙石クラブにとっても、選手という資源をどう活用するかは腕の見せ所。もちろん過密日程の時に無茶させて、疲れがたまって怪我するのは怖いから、遠慮がちになるというのもわかる。ただその一方で、オフザピッチの選手をうまく活用しないと、クラブの広がりはつくれないとも思ってます。難しいけれど、それで選手に注目が集まれば、セカンドキャリア含めてプラスにしかならないとも思うし。もちろんサッカー第一だとは思うけど、うまく折り合いをつけながら、ガンバというブランドを発信していくために、どんどんどんどん前に出ていってほしい。間違いなくクラブの看板だと思うので、クラブ側ももっと活用してあげてほしいなとは思います。

    スタジアム観客席で談笑する加地さんと仙石さん

    加地選手には、サッカー以外の人間的なところももっと伸ばしていってほしいなと期待してしまいますね。僕が現役のときも、もっといろんな場所に出向いて、いろんなことに興味を持てばよかったなとちょっと後悔してます。セカンドキャリアのこともほとんど考えられなかった。

    仙石5年なのか、10年なのか、もっと頑張れば15年先なのか、いずれにしろ、サッカー選手という肩書きを下ろして、社会に出なきゃいけなくなる。実はそっから先の人生の方が長かったりするもんね。

    加地これからしたい仕事、セカンドキャリアこんなことしたいなって思い描くだけでもいい。あとは、サッカーだけじゃなくて、人に会っていろいろ刺激を受けるのも大事。たまたま僕は運が良くて今、仕事もらえてるので、CAZI CAFEも奥さんで、僕がやってるわけじゃないんで。本当に周りに感謝しかないですね。

    選手ロッカールームに座る加地さんと仙石さん

    サッカーからの越境。どうしたらSNSでガンバファンを増やしていけるのか。

    ――話が変わるのですが、選手を押し出していく時、SNSでの情報発信などに力は入れていないのですか?

    加地そこはまさに難しいところです。例えば選手がYouTube始めましたってなっても期待以上に再生数は上がらないです。逆に、一般の方がYouTubeあげたら結構いったりするんですよ。これは何の問題?コンテンツの内容の問題なの?

    仙石コンテンツの内容やと思うよ。選手がサッカーについて語ることを知りたい人はいるだろうけど、それって元々Jリーグのファンでしょ?でもさ、例えば、サッカーめちゃめちゃうまいけど、はたして歌は上手いのかとか、足で料理できんのかとか(笑)そっちまでいくと、より広い層が入ってくるんだと思う。

    いろんな人に魅力を知ってもらうためには、サッカーという領域から離れないといけない。サッカーを押し出していっても、領域内の人が行ったり来たりするだけ。そういうアッパーのサッカーファンはもうスタジアムに来てくれているし、ガンバの魅力も伝わっている。だから、その領域からどんだけ飛び出せるかがこれから重要かなと思いますね。

    加地うんうん、そこが欲しいんですよ。

    仙石カップルYouTuberみたいなことやったらいいやん(笑)「領域を踏み出す」ってそういうことやから。もしかしたら、契約の段階で、TikTokやYouTubeやってくださいという契約にして、毎月何本か動画あげてもらう仕組みにしたほうがいいかもしれないね。個人個人でもチャンネル持たしたらいいねん。

    ロッカールームで語る加地さん

    加地なるほどね。例えば、鳥栖の岩崎選手。ダンス動画がTikTokにあがってて、けっこう人気あるんですよ。

    仙石それはきっとサッカーという領域を超えてるからやね。もう、リアリティーショーとかやったらええねん(笑)どこかのシェアハウスで、いろんなチームの選手とJリーグの選手同士が住んでたら絶対見るで(笑)セレッソの選手とヴィッセルの選手とかで6、7人でほんまにシーズン中にシェアハウスするの、どう?

    加地シェアハウスもいいね。でも、無人島でお見合いもいいよね(笑)

    一同笑笑

    仙石まあ、いずれにしても、サッカー選手であることを取っ払った領域でやっていくこと。YouTubeにしろTikTokにしろ「サッカー×別領域」で魅力を伝えていけるといいよね。

    強いクラブは地域の誇り。やっぱりガンバには強くあってほしい。

    ――お2人はこれからガンバ大阪にどうなってほしいと思っていますか?

    加地それはもうクラブ単位だったら、世界基準になっていってほしいですね。もう1回アジアのチャンピオンになって世界に出ていってほしい。ガンバブランドが世界に名を馳せていた印象は、日本でもちょっと薄れつつあるじゃないですか。最近は、下位に低迷しているので、もう1回復活してほしいなという想いはやっぱりありますよね。

    仙石加地と一緒です。チームはもうぶっちぎりで強くなってほしい。俺も関わるようになった翌年、2002年から西野さんが監督になって、右肩上がりに調子を上げていって、アジアまで行ってっていう好調な時期を最初に全部見ている。さらに長谷川健太監督になって、スタイルは変わったけど、3冠とったり。常に上位で戦ってるガンバを見ているだけに、もう1回、ぶっちぎりで強くあってほしいとは思います。今だと川崎フロンターレがそういうポジションになってるから、それがやっぱり寂しいという感覚はあります。

    加地絶対になれないことはないからね。今はすごいもどかしい時期です。

    ロッカールームで語る仙石さん

    仙石やっぱり強いチームはファンにとっても「誇れる存在」だと思う。そういう存在になれば、地域のシンボルとして、プライドとして、みんながもっと愛してくれると思う。興味ないおっちゃん、おばちゃんにも「ガンバが強いね」っていう情報がどんどんメディアを通して入ってくる。そうすると「今ガンバ強いらしいな」「自分らの街のチームが強いらしいな」という感覚は、その地域のアイデンティティになり得ると思うんです。「一回スタジアム来てみ」よりも「今ガンバめっちゃ強いから来てみ」とか 「今、スタジアムですごいサッカーやってるから来てみ」って言われた方が、行ってみようかなって気になるじゃないですか。

    地道にコツコツ魅力を伝えていくのも、ブランディング。

    ――そうやってクラブが強くなるために、どういう貢献をしていきたいとかありますか?

    加地僕らって、正直そんな大きな貢献はできないです。ただ、その中でも、選手だけではなくて、このスタジアムも会社全体も含めて「ガンバっていいんだよ」というクラブの魅力を伝えていくのが使命かなとは思いますよね。選手についてはファンのみんなもある程度はわかってるんで、もっと大きく「ガンバ大阪」というクラブの魅力ですね。せっかく30周年でエンブレムも変えたことだし、例えば、ファッションでも、ガンバのアパレルかっこいいし、普段からも着やすいという流れをつくるとか。デザイン的なところは大幅に変わったので、次のアクション、次のアクションとブランディングを続けていきたいですね。

    仙石うんうん。

    加地クラブの成長は選手だけに頼ってても限界がきます。「チームが強くなる→ファン・サポーターが増える」という構造じゃなくて、サッカーの強さ以外で、どう認知してもらって好きになってもらうかも考える必要があると思ってます。

    語りかける加地さん

    ――「ファン・サポーターが増える→チームも強くなる」、そっちの矢印もあるってことですか?

    加地それは全然ありますね。いい例が阪神タイガース。ずっと根強い阪神ファンがいて、それに対して選手も毎年期待に応えようとしますし、会社としても補強や育成に力を入れていくと思う。広報活動にも、正解があるわけでもないし。ほんとうに地道にコツコツやっていかないといけないことだとは思ってます。僕自身、サッカークリニックやイベントで地方行くことも多いので、そういう時はその土地の人やスタッフと色々喋って、ガンバの良さを知ってもらったりしてますね。

    ――大阪にとどまらず?

    加地大阪以外です。とにかく知ってもらって、地道に魅力を伝えていくんです。実際に、スタジアムを訪れてくれるのは1人か2人かもしれないですけど、その1人か2人から今度は、口コミで広がってくれたらいいなと。簡単に大きく変化するんだったら、もうとっくにできてるんでね。地道にやっていくしかないですよ。

    談話室からスタジアムを臨む

    加地まあ、あとはもう選手に脱いでもらうしかないっす(笑)

    仙石佐川男子みたいな写真集をね(笑)ボディは間違いなく綺麗なのでね。

    加地ね、シックスパックですよ。

    仙石どこかはわからんけど、需要はあるわ(笑)どこかはわからんけど。

    加地ただ、ヤット(遠藤保仁)はダメですね。

    一同笑笑

    スタジアムで一度、サッカー見てみてよ。

    ――全くガンバ大阪のことを知らない人に、お2人はガンバ大阪のことをどうやっておすすめしますか?

    仙石まずこのスタジアムでしょうね。このスタジアムで1度サッカー見て!とは言うと思います。

    Panasonic Stadium SUITA

    ――やっぱり生で見ると違いますか?

    仙石スタジアム来たら全然違いますよね。

    加地無観客の試合をテレビで観るのとは訳が違いますね。有観客の試合をスタジアムで1回見てほしいです。見に来てくれると、またさらに面白さがわかる。

    仙石お客さんがフルで入っているような盛り上がるカードを、見てほしいなとは思いますね。客席が余裕ある試合よりも、大阪ダービーとか、タイトルがかかってくるような終盤の試合とか、そういう環境でここで見るとやっぱり雰囲気が違いますね。

    ピッチを客席から眺める仙石さんと加地さん

    仙石サッカーって0-0で終わることもあるじゃないですか。ゴールが生まれない可能性もある。あんまり興味ない人からすると、寒い時期に0-0の試合は、観戦体験としてプラスなのか、マイナスなのか、どうなんだろ。と思ったりするところがあるんですよ。だからこそ、ある程度人が入って、スタジアムが盛り上がってるっていう体験をしてほしいなと思う。なので、初めてくる人ほどチケット取りにくい試合に来てほしいなって思います。

    選手は大変やけど、夏休みのJリーグ観戦は、ナイトゲームで楽しいと思います。気楽に見れるし。点が入らなくても、水分はずっと取れるし。

    加地サッカーは楽しいんでね。ぜひね、スタジアムに来てもらえると。

    Profile

    加地 亮

    加地 亮(かじ・あきら)

    兵庫県南あわじ市出身。99年U-20日本代表としてFIFAワールドユース・ナイジェリア大会に出場し準優勝に貢献した。06年W杯ドイツ大会出場。06年ガンバ大阪に移籍し、14年メジャーリーグサッカー・チーヴァスUSAへ移籍。15年J2のファジアーノ岡山へ移籍、17年に現役引退を発表した。現在は夫婦でCAZI CAFE(大阪府箕面市)を営みながら、サッカー解説者としても活躍している。。
    わたしのMake New|Make New 「challenge」
    ポジティブに物事を考え常にチャレンジしていくことが未来へと繋がっていく

    仙石 幸一

    仙石 幸一(せんごく・こういち)

    ガンバ大阪スタジアムMC、滋賀レイクスターズ アリーナMC、FM滋賀DJ滋賀No.1プ
    グラム"RadioMax" "style"、イナズマロックレディオ TリーグMC、レイクスマガジン連載"体音高め"
    私のMake New|Make New「リレーションシップ」
    クラブもチームも常に変化し続ける中で、求められるスタンダードも変わっていきま
    す。 そこにしっかり適応し、新しいつながりを関わる皆さんと一緒に作り出してい
    きたいという思いを込めて。

    • 取材・執筆:松木啓
    • 撮影:原祥子
    • 編集:MNM編集部、松木啓

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