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生活の必需品である家電。新品や、元気に動いている様子は普段から見ているが、その「終わりの瞬間」を見ることはほとんどありません。私たちの家電は、役目を終えたときどこに帰っていくのでしょうか? そして、その先には何があるのか。今回はパナソニックのリサイクル工場・パナソニック エコテクノロジーセンター(以下、PETEC / ピーテック)に潜入し、家電の終わりとその後について探ります。
引き取られた大量の家電たちは、どこへ行く?
こんにちは。「Make New Magazine」編集部です。
まずはこちらをご覧ください。
カラフルな設備に、何かを組み立てているような様子。「家電をつくる工場?」と思われるかもしれませんが、これは役目を終えた家電を解体しているところ。こここそが、私たちの家電が最後に行き着く場所......つまり、リサイクル工場なんです。
ここは、兵庫県加東市にある「PETEC」。パナソニックが運営するリサイクル工場です。近畿2府4県から、使い終わった冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビの家電4品目が運ばれてくるこの工場。役割を終えた家電たちは、どのように最期を迎え、また再生に向かっていくのでしょうか? 早速内部を覗いてみましょう。
大きな家電を、プラスチックや金属などの「再び使える資源に戻す」
PETECには、パナソニック製品だけでなく、メーカー、年式、構造の異なるさまざまな家電が運ばれてきます。再生資源として使えるよう、まずは人の手で解体し、フロンガスや水銀など、有害物質を回収してから、機械で粉砕します。
洗濯機の処理台数は1日1,000台以上。2012年にラインを再編し、縦型、斜めドラム式を同時に対応できるようになったそう。
一言でフロンガスといっても、さまざまな種類があり、冷蔵庫に使用されているフロンガスも種類ごとに回収を行なう必要があります。以前は異なるガスの種類を判別し、選別するのにとても苦労していたそうですが、現在は「品番読み取りシステム」を導入したことで、スムーズに処理できるようになったとのこと。
さて、次はいよいよ機械による破砕に向けて動き出します。
運ばれた先は巨大な破砕機。室内には、破砕機の稼働音が響き渡っています。
「関係者以外昇降禁止」とありますが、今回は特別に破砕の様子を見せてもらえることに。破砕機の上に取りつけられた小窓をそっと覗いてみると......。
バキバキッとものすごい音とともに、冷蔵庫が粉々になっていきます。
冷蔵庫には鉄や銅、アルミなど、全体の重さの約6割に金属、残りはプラスチックが使われているそう。細かくなっていくものもあれば、大物の部品もたまに飛び交い、さらには摩擦による火花も散っていて迫力がすごい......!
廃家電は資源の宝庫-リサイクル工場で「トレジャーハント」
破砕後は、徹底的に素材ごとの選別・取り出しを行ないます。金属やプラスチックが混じり合った破片群から、風力で軽いウレタンを、磁力で鉄を、非鉄選別機で金属とプラスチック等に選別。取り出した金属やプラスチックなどは、素材別にメーカーに送られ、再利用されるそう。
洗濯機も同様に、破砕後は徹底的な選別がなされます。使用されているプラスチックは、種類の違うものが混ざってしまうと、原料として再使用することができないとのこと。プラスチックの高純度な選別が、リサイクルの鍵となります。
では、一体どのように選別しているのでしょう?
答えは、「重さの違い」。
洗濯機は、破砕後、鉄とプラスチックに大まかに選別されます。その後、プラスチックたちを細かく砕き、「浮沈(ふちん)選別機」といわれる水槽にドボン。攪拌しながら水を流すことで、軽量のPPだけが浮き上がってくるとのこと。その純度は、なんと99.5%。高純度のPPは、樹脂として溶かされ、ppm(100万分の1)オーダーの不純物しか含まない超高純度な樹脂になります。洗濯機の台枠や洗濯槽の原料として再利用されるのだそうです。
その再生の一端を担うのが、PETECのすぐ近くに立地している加東樹脂循環工場。PETECにて選別・回収された樹脂(※)から、さらに細かい異物を取り除き、洗浄を行ない、溶かすなどして、強度や寿命を復活させます。
製品に求められる樹脂の特性はそれぞれ。そのため、加東樹脂循環工場では、新たな樹脂材料を加えずに100%リサイクルの樹脂素材で、独自比率の補助剤を加え、製品が求める部品に最も適した処方を行なっているそう。これは、同工場が考える独自のサステナブルな再生処方なんだとか。
※PETECで破砕しフレーク状態までのものは「プラスチック」、加東樹脂循環工場でそれを溶かしペレットにした材料は「樹脂」と呼ばれている
あれだけ大きかった家電たちが、ラインが進むにつれ細かくなり、丁寧に選別され、ついには再利用できる資源に。リサイクル工場は「家電の終着駅」ではなく、新たな製品として生まれ変わるための「再生の地」だったのでした。