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「こどもの日は、未来を考える日」というメッセージを掲げ、昨年の5月5日に発行した未来空想新聞。多くの著名人が登場し、未来について考え、語ったその新聞はSNSを中心に大きな反響を呼んだ。そして今年の5月5日に、「未来空想新聞2040」として再び発行する。「未来空想新聞2040」は、昨年の未来空想新聞の設定が2039年だったことを踏まえ、一年時を進めている。今回は「未来を想う40人」として、次代を切り拓く方々を紹介するなど、内容もさらに充実。本記事では、パナソニックが未来空想新聞を発行する意義、アクションワード「Make New」への思い、子どもたちへのメッセージについて、社長としてパナソニックを率いる品田正弘が語った。
未来空想新聞を発行する意義
――今年も5月5日に未来空想新聞が発行されます。パナソニックの創業記念日にあたるこの日に、未来空想新聞を発行する思いをお聞きしたいと思います。
品田パナソニック株式会社は2022年の4月に新たに発足し、長期的な視点を持って経営を進めている真っただ中ですが、今は不確実性の高い時代といわれます。2030年まではある程度の予測ができても、2040年となるとどんな世界が訪れるか、不確実性が非常に増す。そのために私たちはどのような世界をつくっていくべきか、自ら考える力を持たなければなりません。2040年の未来を空想する新聞をつくろうと思った背景にはそのような思いがあります。
パナソニックの創業者松下幸之助には会社の使命を250年かけて実現していくという壮大な構想がありました。常に未来を見据えていた創業者の意志を受け継ぎ、私たちも未来を思考していく。それが未来空想新聞を創業記念日に発行する意義といえます。
―― 未来空想新聞は昨年に引き続き2回目の発行ですが、昨年とは違う思い入れなどはあるのでしょうか。
品田2回目の発行となる今回はデジタルを活用し、未来空想新聞を意見交換や議論の場にしていきたいと考えています。簡単にいうと、「私はこんな未来にしたいと考えていますが、みなさんはどう思いますか?」、そういった意見交換が、SNSなどで活発に行われることを期待しています。
記事で取り上げているのもカーボンニュートラルやウェルビーイング、デジタルイノベーションといった今後の鍵を握るテーマで、パナソニックとしても注力している領域。世の中の人々やビジネスパートナーの皆さまとどのような意見や議論が交わされるか、大いに期待していますし、パナソニック従業員もぜひ積極的に参加してほしいと思います。
―― 昨年の5月5日は未来空想新聞の発行と共に、新体制となったパナソニック株式会社の意志を示すアクションワード「Make New」が発表されました。そこにも品田さんが今おっしゃった未来への意志があるのでしょうか。
品田もちろんそうです。過去を振り返ると、日本が失われた30年という低成長の時代を過ごしてきた中で、パナソニックも例外ではありませんでした。昨年の4月にパナソニック株式会社を発足させるにあたり、低成長から脱するために、我々のものづくりや新しい取り組みによって、次の時代の豊かさを実現していかなければならないと考えました。そこで生まれたのが「Make New」というアクションワードです。
新しいものを生み出すためには、自らの意志を明確にし、果敢にチャレンジし、失敗を恐れずに前進しなければなりません。「Make New」というアクションワードに込めているのは、常に新しいことに挑戦し、未来へ進んで行くというパナソニックの志です。
「Make New」の後ろをブランクにしているのは、個々の従業員の未来への意志や目標を言語化、可視化するためで、私はさまざまな現場で従業員と交流する際に、言葉を書いてもらうようにしています。今年の入社式でも新入社員全員が言葉を書き、そこに込めた思いと共に発表しました。そのような取り組みを通じて、従業員たちが自分の言葉で意志を語れるようになってきているのを実感しています。
―― パナソニックは、「Make New Magazine」というメディアを立ち上げ、新しい取り組みやチャレンジを発信していますが、「Make New」に込めた意志を伝えるためのメディアになるわけですね。
品田まさにそうですね。「Make New Magazine」はそのタイトルからもわかるように、「Make New」に込めた思い、つまりパナソニックの未来への挑戦を伝えていくオウンドメディアです。パナソニックという会社がどこに向かおうとしているのか、単に製品やサービスをつくっているだけでなく、エネルギー問題などの社会課題に対して、どのように取り組んでいるのかを世の中に伝えていくことが重要な役割です。
加えて、パナソニックが「未来の定番」をつくっていく会社であることも「Make New Magazine」を通じて発信しています。「未来の定番」というのは、我々の製品やサービスがこれからの社会課題の解決や環境適合性を考慮してつくられていることを意味します。「Make New Magazine」を通じてファンを増やし、パナソニックへの理解や共感を高めていきたいと考えています。
それからもちろん、パナソニック従業員向けのメディアという一面もあります。我々の事業領域は非常に多岐に渡るため、隣の部署が何をしているかわからないということが起こりうる。それでは将来のポテンシャルが把握できないし、会社へのロイヤリティも上がりません。社内でどのようなプロジェクトが進行し、自分たちがどこに進んでいるのかを従業員が共有することも「Make New Magazine」の大切な役割といえます。
「Make New Magazine」は、パナソニックにとって非常に重要な取り組みであり、引き続き注力していきます。
「空想」は未来に踏み出すエネルギー
―― 先ほど不確実性の高い時代というお話がありましたが、そのような時代に私たちはどう未来に進んでいけばよいのでしょうか。品田さんのご意見をお聞かせください。
品田重要なのは、私たちがどのような世界をつくっていくべきか、主体的に考えることでしょう。そして、その時重要となるのが「共創」だと私は考えています。例えば、この先の時代を見据えると、ウェルビーイングとサステナビリティは最重要のキーワードとなりますが、これらは単独の企業だけで実現できるものではありません。目標を共有し、共に取り組んでいけるパートナーがいなければ、ウェルビーイングやサステナビリティの実現はありえず、だからこそ企業と企業、企業とお客様が手を組んで共に未来をつくっていくことが重要なのです。
未来空想新聞という取り組みの意義もそこにあります。よりよい未来をつくるという目標を共有した人たちが、さまざまな知見を結集させてひとつのコンテンツをつくる。それはまさに共創であるわけですが、それだけに留まらず、SNSなどを通じて多くの人に拡散していくことで、広く社会も交えた未来共創の場となる。我々は未来空想新聞を単なる新聞ではなく、未来を共創するためのプラットフォームと捉えています。
創業者松下幸之助は「日に新た」という言葉を残しましたが、これは、これまでのやり方にとらわれることなく、日々新たな観点でものを考え、事を成していくという意味です。不確実性の高い時代にこそ「日に新た」のような思考が必要になると思いますし、未来空想新聞という共創のプラットフォームをつくることもまた「日に新た」といえるでしょう。
―― 未来空想新聞の「空想」に込められた思いをお聞きします。品田さんは空想することにどのような力があると思いますか?また、今回の未来空想新聞が従業員に対してどんな効果があってほしいと思いますか?
品田自分がありたい姿を思い描くことや自分が理想とする姿を考えること。それが空想することの素晴らしさです。ありたい姿が描ければ、そこに向かって進んでいける。しかし、それがなければそもそも踏み出すことができません。つまり、空想というのは一歩を踏み出すエネルギーになるわけです。ですから、子どもたちには未来をどんどん空想してほしいと思っています。
これはパナソニックの従業員に対しても同じです。自分のありたい姿をイメージして、熱狂的に働いている人というのは輝いて見えるし、みんなが応援したくなる。そういう従業員をチャンピオンエンプロイーと呼ぶことがありますが、空想する力はまさに、人をチャンピオンエンプロイーに変える原動力になる。そして、そういった人材のところにはさまざま知が集まり、融合していく。それがイノベーションの種になるわけです。未来空想新聞が起点となって新しいチャレンジが起こることを期待しています。
子どもたちは世界に挑戦してほしい
―― 最後に未来を担う子どもたちへの思いをお聞かせください。今、子どもたちにどのようなメッセージを贈りますか。
品田持続可能な社会をつくることは我々の大きな目的であり、今の子どもたちが大人になる頃にそれがどこまで達成できているか。それが私たちに問われていると思います。パナソニックとしては、今の子どもたちが安心して暮らしていける、豊かな社会をつくることにコミットしていきたいと思っています。
日本が失われた30年といわれる時代を経てきたことは事実ですが、過去に囚われるのではなく、その反省を活かし、これから果敢にチャレンジしていかなければなりません。未来を悲観する意見も聞かれますが、人間の未来への情熱が枯渇することはないし、私たちの志次第で未来は必ず変えられるはず。技術革新を始めとして、私たちにはやれることがまだまだたくさんあります。
今年の春、私が卒業した大学の入学式で祝辞を述べる機会をいただき、学生たちに「もう一度、世界一をめざそう」というメッセージを贈りました。日本の未来は、世界に貢献しようとする人々の心持ちで必ずよくなると思います。子どもたちには、広い視野を持って、日本だけでなく、世界に貢献できる人物になってほしいと思います。
【未来空想新聞2040WEB版】
Profile
品田 正弘(しなだ・まさひろ)
1965年、千葉県生まれ。1988年早稲田大学卒業、松下電器産業株式会社入社。2017年に執行役員、2019年常務執行役員兼アプライアンス社社長。2021年専務執行役員。2022年4月にパナソニック株式会社代表取締役社長執行役員に就任。