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こんにちは。Make New Magazineの外部編集員の牧野です。
パナソニックの創業記念日でもある5月5日に"こどもの日は、未来を考える日。"というコンセプトのもとでスタートした「未来空想新聞」が、2022年度朝日広告賞の朝日新聞特別賞を受賞しました(関係者の方々、おめでとうございます)。
今年は第二回目として、2040年の未来を空想する「未来空想新聞2040」が制作・発行されています。「未来空想新聞2040」は、多様なジャンルの方々の「よりよい未来に向けた空想」を記事やインタビューといった形式で表現した新聞です。12ページの内容は読み応えがあり、示唆や刺激に溢れたものですが、全てを読み切るのはなかなか大変...、ということで、この記事では「未来空想新聞2040」のエッセンスを抽出してお伝えしていこうと思います。
一見すると普通の新聞。しかし、これは5月5日に発行される「未来を空想するための新聞」
「未来空想新聞2040」の特徴の一つは、実際に12ページの新聞として印刷されることにあります。今年は大阪エリアを中心に、朝日新聞朝刊の折込広告として40万部ほどのご家庭に配布されました。パッと見た感じではリアルな新聞に近く、手元に届いた方は「新聞が二つ入っていた」と認識してしまうこともあるかもしれません。
多様で多彩な「未来を想う40人」の描く未来
今年のテーマは、「未来を想う40人」。「この人に未来の空想を聞いてみたい!」「この人の想う未来をもっとみんなに知ってもらいたい」人々を、「未来空想新聞2040製作委員会」からお声がけしています。それぞれの方が描く「よりよい未来」を、インタビュー記事、コラム、作品、広告といったさまざまな形式で表現しています。きっと気になる方がいると思うので、参加してくださった40人の詳細はこちらからチェックしてみてください。
一面は2040年5月5日(土)、あったらいいな「空想記事」
1面は他の紙面とは違い「空想記事」になっています。2040年5月5日(17年後)の新聞を飾っている(飾ってほしい)記事が並び、パッと見は普通の新聞と間違えてしまうかもしれません。「さよならGDP」「シニアントレプレナー」「AIネイティブ高校生」といったユニークな見出しが躍ります。
これらの空想記事は、それぞれ斎藤幸平さん、ヤマザキマリさん、安宅和人さんのインタビュー&議論から作成されたものです。
GDP2は、Gross Domestic Pleasure(喜びの総量)という新しい指標であり、本当にこのまま採用されたらいいなと勝手に期待で胸を膨らませてしまいます。(インタビュー記事はWEB版のみ掲載)
未来空想新聞を新聞たらしめている「題字」(タイトル文字)は、水野学さんの good design company による制作。
新聞一面でお馴染みの「天気予報コーナー」には細かな仕掛けがあり、宇宙の天気が出ていたり、メタバース内の混雑が予報されたりと未来の新聞ならではの遊び心があります。
さらに朝日新聞ならではのコンテンツ「天声人語」の空想企画として、「天空人語」という名前となった空想コラムとなっています。
今年は藤崎彩織さんから未来の家族やジェンダーというテーマで執筆いただきました。とても独創的で刺激的なものになっています。5分ほどで読めますのでぜひ。
中面紙面は「インタビュー記事」+「こどもたちへのメッセージ」
中面コンテンツのベースは、よりよい未来とはどのようなものかを問いかけた「取材記事」。それぞれの視点から語ってもらい、製作委員会が内容をまとめています。見出しには「未来にこんな見出しが踊ったら」というキャッチーなタイトルが並びます。
さらに注目は「子どもたちへのメッセージ」のコーナー。子どもたちだけでなく、おとなの方でも未来に希望を抱けるような素敵な言葉が掲載されています。ぜひお子さんと一緒に読んでみてはいかがでしょう。
2040年はこんな広告が出てるかも?2つの「空想広告」
新聞といえば、記事だけでなく「広告」枠があるのも特徴の一つ。未来空想新聞2040では、2つの「空想広告」を掲載しています。
一つはデジタルファブリケーション技術を使い建築の民主化をめざすVUILD代表の秋吉浩気さんのインタビューから作られた広告。「家は誰でも簡単に"自作できる"時代」の到来を予測しています。
もう一つは、政策共創プラットフォーム「PoliPoli」が描く未来の広告。2023年現在と比較して、若者が政治への実感を取り戻し、社会に希望を持てるようになった未来の結果を解説するという「架空の書籍」の広告になっています。
他にもユニークなコンテンツが盛りだくさん
その他にも、未来空想新聞らしいユニークなコンテンツが散りばめられています。
GEZANのヴォーカル/ギターで作詞作曲を手がけるマヒトゥ・ザ・ピーポーさんには未来空想新聞のコンセプトに合わせて選んでいただいた歌詞を掲載(インタビューはWEB版に)。歌人の木下龍也さんには、一編の短歌を。佐久間洋司さんと白上フブキさんのバーチャル対談。5月5日が誕生日のルフィへのおめでとうメッセージ。日本を代表する建築家である伊東豊雄さんと妹島和世さんによる記事は、(ご本人たち曰く)史上初めての対談記事だったとか...。こういった貴重な記事が潜んでいるところも未来空想新聞の凄さを物語っています。
今年は「WEB版」の制作も。全ての記事が無料で読めます
今年は新たに未来空想新聞2040WEB版が新設され、より多くの方に「未来空想新聞2040」を楽しんでいただけるようになりました。ウェブサイトは一見すると紙の新聞のようですが、ところどころ見出しや画像がアニメーションで動きだすデジタルならではの表現を追求したユニークなウェブになっています。全記事がウェブサイトに掲載されており、今でも全文を読むことができます。
未来空想新聞は、企業の想いをこめたブランドアクション
さいごに。企画・制作に外部から参加したライター(牧野)からみた「未来空想新聞」とは何か、という感想のような総括を。
今の現実社会を眺めていると、未来に楽観的にはなれません。地球環境の悪化、ウィルスによる社会の機能不全、変わらないジェンダーロールの押し付けや、マイノリティに非寛容な社会構造。課題は山積みであり、不安が募ります。
しかし、この未来空想新聞を読むと「よりよい未来は、よりよい空想から始まる」のだということを再認識し、少なからず希望を抱くことができます。それは、100年以上にわたり家電やデザインを通じ、社会の課題を解決し、くらしを豊かにしてきたパナソニックならではの思想なのだと想像します。この12ページの新聞は、「Make New」というパナソニックが掲げるアクションワードを体現している画期的で野心的なブランドコミュニケーションだと言えます。
パナソニックのような日本を代表する大企業が、ただの広告としてではなく、「よりよい未来のために」とメッセージを発信しつづけることには大きな意義がある。この未来空想新聞が、来年も、10年後も続いていき、よりよい未来で見出しの答え合わせができたらいいなと、とても個人的に、楽しみでなりません。
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Profile
牧野 圭太(まきの・けいた)
2009年博報堂に入社。2015年に退社後、文鳥社 / カラスなどのデザインカンパニーを設立。2020年1月からDEを創業。「社会的意義のあるコミュケーション/ブランドアクション」を追求する。2021年3月に『広告がなくなる日』を出版。Make New Magazineでは、立ち上げ時から外部編集員を務める。